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今週の小ネタ:ホットヨガは、通う回数が多いほど抑うつ症状に効く?たった20分の運動でも、脳の処理スピードは上がる?

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

ホットヨガは、通う回数が多いほど抑うつ症状に効く?

ホットヨガはメンタルに良い!って研究(R)が出ておりました。

 

これはMITやマサチューセッツ総合病院などの実験でして、中等度から重度のうつ病と診断された成人80人が対象。実験では参加者を半分にわけまして、

 

  1. 最初の半分は、すぐに8週間のホットヨガを開始してもらう
  2. 残りの半分は、8週間待ってから同じホットヨガのプログラムを受けてもらう

 

みたいにしたんだそうな。ここでいうホットヨガの内容は、

 

  • 室温は約40.5℃
  • 1回90分
  • 26種類のハタヨガのポーズをやる
  • 最初と最後に呼吸法
  • 週2回以上の参加を推奨

 

といったものだったそうで、かなり本格的なホットヨガですな。

 

その上で、参加者たちに心理評価を行い、参加回数と抑うつ症状の変化を比べてみたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • ホットヨガの回数が1回増えるごとに、メンタルの症状スコアが約1ポイント改善した
  • 8週間で参加した回数は0〜30回だったが、その範囲では「これ以上ホットヨガをしても効果は増えない」という限界も見られなかった。

 

そんなわけで、ホットヨガに何度も通った人ほど、メンタルが大きく改善したわけっすね。これはいいっすねー。

 

では、なぜホットヨガがメンタルに効くのかと申しますと、研究チームは、以下のような可能性を挙げております。

 

  1. 熱による自律神経への作用:強い抑うつ状態では、自律神経の柔軟性が低下し、環境の変化に応じて興奮と休息を切り替えるのが難しくなることがある。その点で、高温の環境では血管が広がり、副交感神経が刺激される確率が高い。さらに、運動と熱によってコルチゾールなどのストレスホルモンが一時的に変化し、反すう思考やネガティブな思考のループが中断されるのかもしれない。

  2. マインドフルネストレーニングになる:高温の部屋でポーズや呼吸に注意を向け続ける行為そのものが、一種のマインドフルネス練習になっている可能性もある。暑くてしんどい状況の中で、呼吸や身体感覚を観察しながら動き続けることは、ストレスへの耐性を練習しているとも考えられる。

 

ってことで、熱と運動とマインドフルネスが組み合わさって、抑うつ症状をやわらげた可能性があるわけですね。まぁ、ここらへんはまだよくわからんのですが、参加回数と症状の改善度がここまで直線的に結びついたのは興味深いところじゃないでしょうか。個人的には、あんまヨガに興味がないのでアレですが、お好きな方はホットヨガをメンタル改善の手段のひとつとして使ってみるといいかもですな。

 

 

 

たった20分の運動でも、脳の処理スピードは上がる?

「集中力が落ちてきたら、ちょっと体を動かしましょう!」みたいな話が昔からあるわけです。仕事中に頭がぼんやりしてきたら散歩をするとか、勉強の合間に軽くスクワットをするとか、そういうアドバイスですね。

 

この考え方については、それなりに効果を支持する研究があるんですけども、まだよくわかっていなかったのが、

 

  1. 本当に短時間の運動で頭の働きは良くなるのか?
  2. それとも、単に気分がスッキリして、「集中できるようになった気がする」だけなのか?

 

って問題であります。運動によって、脳内の情報処理が具体的にどう変わるのかってところは、いまいち謎が多いんですよね。

 

ってことで参考になるのが、新しく出た研究(R)であります。

 

これは台湾大学などの研究で、健康な男性51人を対象にしたもの。実験では、全員に別々の日に以下の2パターンを行ってもらっております。

 

  1. トレッドミルで20分の中強度運動をする
  2. 座ったまま動画を見る

 

ここで使われた運動の強度は、心拍予備能の60〜70%ほど。ざっくり言えば、「ラクではないけど、全力でもない」ぐらいのペースだったそうな。

 

でもって、運動または動画視聴が終わった後、すべての参加者に「ストループ課題」をやるように指示。ストループ課題ってのは、たとえば「赤」という文字が青いインクで書かれていた場合に、文字を読むのではなく「青」と答えるテストのことです。注意力や自制心を測るために使われるテストで、車を運転しながら余計なノイズを無視したり、仕事中にスマホを触りたい衝動を抑えたりする能力に近いものです。

 

ついでに、この実験では課題中の脳波も測定して、運動によって脳内の情報処理がどう変わるかまで調べてみたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 動画を見た後に比べて、20分の運動をした後のほうがストループ課題への反応が速くなっていた。
  • しかも、運動をした後も、正答率も大きな低下がなかった。

 

ということで、運動した参加者は、正確さを保ったまま素早くテストを解けるようになったわけっすね。

 

では、なぜ運動後に反応が速くなったのか?と言いますと、

 

  • 脳波のデータを見ると、運動後には、視覚情報を受け取った直後に起きる脳の反応や、情報の矛盾をチェックする初期段階の反応が小さくなっていた。
  • 一方で、その後の段階では、注意を向けたり、回答の準備をしたりする脳活動が強くなっていた。

 

みたいな違いが見られております。要するに、運動をした後の脳は、

 

  • 情報を受け取った直後の処理に必要な負担が減る

  • その後の注意や反応準備には、より適切にリソースを使える

 

といった変化が起きていたのではないか、と考えられるわけですね。

 

なので、今回の結果を見る限り、集中力や素早い判断が必要な作業の前には、20分ほど体を動かしてみるのはアリ。運動の強度は中程度ぐらいでOKなので、限界まで走ったり、息が切れるほど追い込んだりしなくても無問題であります。早歩き、軽めのジョギング、エアロバイクなどを20分ほど行う感じっすね。お試しをー。

 

 

 

AIにハマりやすい人は「ナルシスト」なのか?

AI依存になる人ってどんな人?」って問題を調べた研究(R)が出ておりました。ここでいう依存ってのは、たんにChatGPTを毎日使うとか、仕事の大半をAIで効率化するといった話ではなく、

 

  • 使用時間を減らしたいのに止められない!
  • 睡眠や仕事、人間関係に悪影響が出ても使い続けてしまう!
  • 何かを考えるたびにAIへ頼らないと不安!

 

みたいになったりする状態を指しております。「AIの利用を自分でコントロールできているか?」がポイントなわけですな。

 

で、これはトルコのデュズジェ大学の研究で、生成AIを日常的に使っている677人を対象にしたオンライン調査になっております。調査では、まず参加者が生成AIをどれぐらい問題のある形で使っているかを測定。さらに、以下のような性格特性もチェックしております。

 

  • マキャベリズム:目的のためなら他人を操ってもよいと考える傾向
  • ナルシシズム:自分を特別だと思い、称賛を強く求める傾向
  • サイコパシー:共感や罪悪感が乏しく、衝動的に行動する傾向
  • サディズム:他者を傷つけたり支配したりすることに満足を覚える傾向

 

ご存じの方も多いでしょうが、この4つはまとめて「ダーク・テトラッド」と呼ばれてまして、心理学の世界では、対人関係のトラブルや反社会的な行動に結びつきやすい性格特性だと言われております。

 

でもって、分析の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 生成AIをヤバい形で使う人ほど、ナルシシズムの得点が高く、マキャベリズムやサディズムも少し高い傾向が確認された

 

だったそうです。生成AIを自分で制御できないほど使ってしまう人は、他人との競争や優劣を気にしやすい性格であることが多く、なかでもナルシシスト傾向があったわけっすね。

 

なんでナルシシズムとAI利用が結びつくのかと言いますと、研究チームは「垂直的個人主義が関係しているのでは?」と考えておられます。垂直的個人主義とは、

 

  • 自分の力で独立したい
  • 他人より優れた結果を出したい
  • 競争に勝ちたい
  • 高い地位や評価を得たい
  • 人には能力や地位の差があって当然だ

 

といった価値観のこと。単に「人に迷惑をかけず、自分らしく生きたい」という個人主義ではなく、他者との競争や上下関係を重視するタイプですね。

 

なんでも、データを分析してみたところ、この垂直的個人主義がAIへの依存と強く関わってることがわかったんだそうな。どういうことかと言いますと、

 

  1. ナルシシズムが強い
  2. → 競争や地位を重視する
  3. → AIを過剰に使いやすくなる

 

みたいな流れになってるんじゃないか、と。ナルシシストな人ってのは、他人より良い成果を出したい、失敗したくない、正しい答えを早く知りたい、曖昧な状態をすぐに解消したい、といったメンタリティが強く、これがAIの過剰な使用と相性がいいってことですな。なるほどねぇ。

 

もちろん、こいつは一時点のアンケート調査なので、ナルシシズムがAIの問題利用を引き起こしたとは言えないんでご注意あれ。反対に、AIを使い続けた結果として、競争的な価値観が強まった可能性もありますからね。

 

とはいえ、こういう調査は、自分のAI利用をチェックするきっかけにはなりますからね。AIを使わないと不安になる、自分で考えるのが面倒になる、答えが出るまで何度も質問してしまう、といった変化があるなら注意したほうがよいでしょうねぇ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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