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低収入よりも不幸になっちゃう働き方がわかったぞー!という研究の話

 
 

「労働時間が長いと幸福度が下がるぞ!」みたいな話は定番で、拙著「科学的な適職」でも、仕事の幸福度を下げる大きな要因のひとつとして扱っております。

 

で、最近の研究(R)では、ここからさらに、

 

  • 「何時間働くか」よりも、「いつ働くのかわからない」ほうがメンタルに悪いかも!

 

って話が出てて興味深かったです。

 

「いつ働くのかわからない」ってのは、たとえば、来週のシフトが前日までわからなかったり、週によって労働時間が15時間から40時間まで変動したりするケースのこと。これだと給料が安定しないのはもちろん、それ以前に、

 

  • 病院の予約ができない
  • 子どもの預け先を決められない
  • 友人との約束を入れられない
  • 来週の予定がまったく立たない

 

みたいな問題が起きますからね。いくら自由時間があっても、「いつ自由になるかわからない」状態では、その時間を使えないので、これは大きなストレスになるでしょう。

 

ってことで、今回の研究では、「勤務時間の不安定さや予測不能さは、どれぐらい幸福度と関係するのか?」って問題を調べたものになります。

 

調査を行ったのはペンシルベニア州立大学などで、2016年の「アメリカ総合社会調査」のデータを使用。研究チームは、このなかから会社員として働いている数百人分のデータを抜き出して、勤務スケジュールについて以下のようなポイントをチェックしたんですよ。

 

  • この1カ月で、もっとも短く働いた週は何時間だったか
  • もっとも長く働いた週は何時間だったか
  • 普段の労働時間から、どれぐらい上下したか
  • シフトを何日前に知らされたか
  • 勤務時間が固定されているか
  • 直前になって勤務時間が決まるか

 

そのうえで、参加者に「自分はとても幸せ、まあまあ幸せ、あまり幸せではない、のどれに当てはまるか?」と尋ねたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 勤務時間の変動が大きい人ほど、幸福度が低い!
  • 特に、もっとも忙しい週と、もっとも暇な週の差が大きい人ほど、幸福度が低い!
  • シフトを知らされる時期も重要で、勤務時間が変わらない人は幸福度が高く、数日前から1週間前にならないと予定がわからない人ほど、幸福度が低い傾向があった。
  • もっとも幸福度への影響が大きかったのは毎日の勤務時間が直前に決められるか?」で、分析によっては世帯収入と幸福度の関連の約2倍だった

 

ということで、「勤務時間の不安定さ」は「収入の多さ」よりも私たちの幸福度に影響するんじゃないか、と。もちろん、これは「シフトが不安定になると、収入の2倍不幸になる」という意味じゃないんだけど、それでも「収入さえ良ければシフトが乱れても問題ない!」とは言えなそうですな。

 

もうひとつおもしろいのが、「不規則な勤務」と「予測不能な勤務」は別物だったってとこです。たとえば、夜勤や交代制勤務みたいな働き方だったとしても、それが前もって決まっていれば、幸福度との関係は比較的小さかったというんですな。

 

その一方で、「明日出勤してください」とか「今日は暇だから早く帰ってください」とか「来週の予定はまだわかりません」みたいに、会社の都合で直前に時間を変えられる働き方は、幸福度との関係が大きかったとのこと。

 

つまり、問題は単に朝や夜に働くことじゃなくて、「自分の時間を自分で計画できないことが最も幸福度に良くない!」って可能性が高いわけですな。まぁ人間ってのは、悪い出来事そのものだけでなく、「いつ何が起きるかわからない状態」にも強いストレスを感じる生き物なので、ここらへんの結果は納得できるところっすね。

 

まぁ、これは一時点のデータを分析した観察研究なので、因果関係までは謎であります。勤務時間が不安定だから幸福度が下がった可能性もあれば、もともと幸福度が低い人ほど不安定な仕事に就きやすい可能性もあるんで、そこは注意しといてください。サンプル数も数百人ほどだし。

 

なので、現時点では、「予測不能な勤務スケジュールは人を不幸にする!」とまでは言えません。が、個人的には、労働時間や収入、健康状態などを考慮しても、一貫して不安定なシフトと幸福度の低さが関連していたのは気になるところではありますね。

 

ということで、これを個人の仕事選びに活かすのであれば、求人を見る際には、給料や総労働時間だけでなく、

 

  • シフトは何日前に決まるのか
  • 毎週の労働時間はどれぐらい変動するか
  • 急な呼び出しはあるか
  • 突然シフトを削られることはあるか
  • 勤務時間の変更を断れるか
  • 自分でスケジュールを調整できるか

 

あたりも確認したほうがよいかもですね。給料が少し高くても、予定がまったく立たない仕事だと、心理的なコストが大きくなりすぎる可能性がありますんで。

 

逆に、給料がそこまで高くなくても、「来週の火曜日に何をしているか」がわかる仕事は、思った以上に暮らしやすいかもしれないんで、そこらへんは自分の価値観とも照らし合わせて自問自答してみるのが吉でしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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