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人生において重要なのは、IQより「能力の偏り」なんだぞ!という研究の話


 

IQが高い人は人生が有利!」みたいな話が昔からあるわけです。実際、一般知能が高い人ほど、学歴や収入、職業上の地位も高くなりやすい傾向は確認されてまして、わりと再現性が高い知見だったりします。

 

一般知能ってのは、ざっくり言えば、

 

  • 新しい問題を理解する

  • 筋道を立てて考える

  • 学習した内容を応用する

  • 複雑な情報を処理する

 

といったあたりを総合したもの。一般的なIQテストが測ろうとしているのも、だいたいこの能力であります。

 

でもって、新しい研究(R)では、ここから一歩進んで「『頭の良さ』も大事だけど、『何が得意か』も将来の進路や収入に重要じゃない?」って話になっておりました。

 

これがどういうことかと言いますと、たとえばこの世の中には、総合的な知能は平均でも、言語能力だけが高い人もいれば、計算は苦手だけど機械の構造を理解するのは得意な人もいるじゃないですか。こんな感じで、誰にでも「全体的な頭の良さ」とは別の「個別の強み」をもってるもんでして、これを研究チームは「特定能力」と呼んでおられます。

 

具体的には、研究チームは「特定能力」を大きく3つに分類してまして、

 

  • 機械や電子機器などの実用知識を示す「技術能力」
  • 単純な情報処理をすばやく行う「処理速度」
  • 数学と言語の相対的な得意さを示す「数学・言語能力」

 

みたいに定義したんですね。いずれも、人によって得意・不得意が分かれやすそうな能力じゃないでしょうか。

 

では、一般知能と特定能力の、どちらが人生に影響するのか? この問題を調べるために、研究チームは、アメリカの大規模な追跡調査データを分析。1979年と1997年に始まった2つの全国調査を使い、合計約1万9000人のデータをまとめて大きな結論を出したんですな。

 

この調査データには、すべての参加者が10代のころに受けた認知テストの結果がふくまれてまして、

 

  • 算数の推論
  • 文章理解
  • 一般科学
  • 情報処理の速さ
  • 自動車や機械の知識
  • 電気・電子の知識

 

みたいな要素が入ってたそうな。これを使って、研究チームは、これらのテストの結果と、その後の学歴、収入、職業などを長年にわたって追跡したわけです。

 

で、分析の結果が、どんなものだったかと言いますと、

 

  • 特定能力は、学歴、収入、職業的地位を予測するうえで、一般知能の約30〜57%の重要性を持っていた

 

って話だったんだそうな。これは一般知能を超えるレベルとは言えないものの、十分に「重要だ!」と言えるレベルであります。

 

このデータによれば、能力のタイプによって、人が就きやすい仕事もかなり違っていたそうでして、たとえば、

 

  • 自動車整備士、建設作業員、金属加工職などは、技術能力が高い傾向があった。
  • エンジニア、医師、コンピューター関連職は、数学・言語能力が高め。
  • 秘書、タイピスト、事務職は、処理速度が高かった。

 

って感じっすね。まぁ、「そりゃそうだろ」って結果なんですけども、ここで重要なのは、これらの能力を若いころに測定したところ、その後の仕事や収入までちゃんと予測できた点ですね。つまり、特定の仕事に就いたから、その仕事に必要な能力が伸びたってだけでなく、もともとの能力の偏りが、進路選択に関係している可能性があるわけですね。

 

こいつはあくまで観察研究なので、

 

  • 特定能力が高いから、その仕事を選んだのか?
  • もともと自動車や機械が好きだったから知識が増え、テストの点数も上がったのか。
  • あるいは、家庭環境や教育機会が、能力と進路の両方に影響したのか。

 

みたいなとこはハッキリしないんで注意していただきたいところですが、それでも、この研究からは割と実用的なメッセージを得られるはずであります。それがどのようなものかと言いますと、

 

  • 自分のキャリアを考えるときに、「自分は頭が良いのか?」「IQは高いのか?」「勉強ができるのか?」という大きな問いだけを考えても、あまり役に立たないかも!

 

ってとこでしょう。なので、自分の頭の良さに悩むよりは、

 

  • 言葉で考えるのが得意なのか?

  • 数字やパターンを扱うのが得意なのか?

  • 情報をすばやく処理できるのか?

  • 機械や道具の仕組みを理解しやすいのか?

 

といった、より細かい能力の違いを見るほうが、向いている仕事を探すうえでは有効なんでしょうな。現実の学校や採用の場では、わりとバラバラな能力をひとつにまとめて「全体として優秀かどうか」で判断されがちなんだけど、現実の仕事では、あらゆる能力を平均的に使う場面は意外と少ないもの。特定の知識、特定の処理能力、特定の考え方のほうが、ピンポイントで高く評価される仕事のほうが多かったりするでしょう。

 

となると、大事なのは「能力が高いか低いか」ではなく、

 

  1. 自分の能力は、どこに偏っているのか?
  2. その偏りが価値になる環境はどこか?

 

を考えることなのかもしれません。意図せずして拙著「才能の地図」に近い結論になりましたけども、やっぱり才能は「どこで使うか」が大事ってことっすね。才能というと、つい誰にでもわかる圧倒的な能力をイメージするものの、実際には「特定の場所でだけ役に立つ小さな偏り」のほうが、人生に影響するケースが多いんで。とにかく、まずは自分の偏りを考えるところからはじめていただくといいんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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