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なぜポジティブシンキングには効果がないのか?「ポジティブシンキングを考えなおす その2」

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ポジティブシンキングを考えなおす その1」では、ポジティブシンキングを使っても、ダイエットには失敗するし、モテないし、頭も良くならないって話をしました。とにかく、日常生活のいろんな面でポジティブシンキングには効果が出ないわけですね。



 

ポジティブシンキングは「やる気」を奪う

じゃあ、「なんでそこまでポジティブシンキングは逆効果なの?」ってあたりを調べたのが、ガブリエル・エッティンゲン博士が2011年に行った研究(1)。


これは学生を対象にした実験でして、彼らを2つのグループにわけて、一方のグループには「最高の週末」を想像してもらい、もう一方には「普通の週末」を想像してもらったんですな。すると、1週間後に学生たちを再調査したら、「最高の週末」を想像した学生ほど設定した目標をこなせなかったらしい。


論文によれば、どうやらポジティブシンキングには一時的に精神を落ち着かせる効果があるようで、実際に「最高の週末」を想像した学生たちは収縮期血圧が半減してまして、「やる気」の素になるエネルギーが減っちゃってたらしい。


エッティンゲン博士いわく、

ポジティブシンキングは、あたかもすでに目標が達成されたかのような幻想を与える。その結果、目標に向かうための意欲が削がれてしまうのだ。


とのこと。よく「脳は現実と空想を区別できない」なんて言いますが、ポジティブなイメージを持つことで、脳がすでに目標をやり遂げたように思い込んじゃうわけですね。

ポジティブシンキングに多くを望んではいけない

とはいえ、「ポジティブシンキングは完全に無意味!」ってわけでもありません。ポジティブシンキングは一時的なやすらぎを与えてくれるので、あまりにも過酷な環境などでは、厳しい現実をやり過ごすツールになってくれるんですね。

ポジティブシンキングには、差し迫った不安や悩みを取り去る効果がある。苦しい状況にあって、ポジティブな夢を持つことは、コントロールがきかない困難な環境を耐え忍び、自然と事態が改善するまで待つ忍耐力を与えてくれるのだ。


とのことで、自分の力ではどうにもならない場面では、ポジティブシンキングを使ってみるのも吉。

ポジティブシンキングには、状況によっては大いに役に立つ。体重を減らしたり、タバコを止めたり、新しい仕事を得るためには使えないが、圧政的な政治体制に耐えたり、砂漠のような環境で生き延びたり、冤罪で捕まったあとに希望を持ち続けたりといった場面では多いに使うべき。重要なのは、ポジティブシンキングの限界を理解し多くを望まないことだ。


要するに、ポジティブシンキングは一時しのぎのバンドエイドみたいなものなので、自分の力でどうにかできる状況では頼らないほうがいいわけですね。


ただし、エッティンゲン博士によれば、「ひたすら現実を見る」ってアプローチも、ポジティブシンキングと同じぐらい効果がないってデータがあるそうな。「じゃあどうすればいいの?」って話ですが、「ポジティブシンキングを考えなおす」には、ちゃんと解決策も示されております。そのあたりは、また次回!


credit: Wavy1 via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。