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パレオダイエットはどこまで健康に良いのか?【2022年10月版】#2「糖尿&副作用編」

 

パレオダイエットはどこまで健康に良いのか?」の続きです。長くおつきあいいただいている方ならおわかりのとおり、このブログはパレオダイエットをテーマにしたブログだったんですが、ここ数年、パレオダイエットの最新データは特に取り上げてこなかったんですよね。

 

 

というのも、重要なことは「パレオダイエットまとめ」に書ききったので、それ以上のことをお伝えする必要を感じなかったんですよ。が、そのあいだもパレオダイエットの有効性は検証が進んでまして、ここらへんでまとめ直すのも良いかと思った次第です。

 

 

で、前回は「体重減少」と「心臓と血管の健康」の有効性について見てみたので、今回は、最近のパレオダイエット研究から「2型糖尿病」や「癌」などについてチェックしてみましょう。

 

 

 

パレオダイエットは2型糖尿病の改善にどこまで有効なのか?

いまのところ、パレオダイエットは、少なくとも短期的に糖尿病を改善するのに有効だと思われます。この問題については、2022年と2020年にメタ分析(R,R)が行われていて、それぞれ10件と4件の論文をまとめて分析したうえで、以下の結論を出してくれております。

 

  • 糖尿病の患者さんに対する研究をまとめると、他の健康的な食事と比較して、パレオダイエットはインスリン抵抗性(HOMA-IR)および血中インスリンの低減に大きな効果が見られた。

 

  • 糖尿病のリスクの高い人々の間では、パレオダイエットは他の健康的な食事と同じように、HbA1c(3ヶ月間の平均血糖測定)、血糖、HOMA-IR上昇を下げる効果を持っている。ただし、他の健康食と比べて、とりたてて優れた効果があるわけでもないっぽい。

 

ということで、パレオダイエットは糖尿病の管理に役立つものの、その効果は、おそらく他の健康食と同じぐらいかなーと考えております。まぁ前回も書いたとおり、パレオダイエットの長期的な減量効果は他と変わらないので、このような結論が出るのも納得ですが(なんだかんだで、糖尿病の管理にはカロリー制限が大事なので)。

 

 

ちなみに、上記の2022年メタ分析では、パレオダイエットは、糖尿病が原因で起きる体内の炎症にも役立つとされてまして、こちらもうれしいメリットだと思う次第です。

 

 

 

パレオダイエットはがんの改善にどこまで有効なのか?

いまのところ、パレオダイエットとがんの発生、進行、再発の関係を調べた介入試験はありません。ある観察研究(R)だと、「内視鏡検査で大腸がんが確認されなかった人は、パレオダイエットに近い食事をしていたよー」って報告が出てますが、これだけだとなんとも言えないですね。

 

もうひとつ、2017年に出たもう少し厳格な観察研究(R)では、「パレオダイエットに近い食事をする人ほど癌の死亡率が低い」と報告されてたりしますが、こちらも証拠としては弱めですね。まぁいまのところ「パレオダイエットががん予防になる!」と言えるだけの証拠はないとお考えください。

 

 

 

パレオダイエットに大きな副作用はあるのか?

最後に、パレオダイエットの安全性についても触れておきましょう。まず、パレオダイエットの副作用を調べた、2014年のパイロットスタディ(R)では、メタボに悩む34名の男女のうち半分を2週間のパレオダイエットに割り当てたものの、悪影響の証拠はほとんど見つからなかったとのことです。もちろん、これだけで結論を下すのは難しいんですが、「カロリーの質ってなに?」で書いたガイドラインに沿う限りは、問題は起きにくいのではないかと。

 

 

ただし、これはあくまで典型的なパレオダイエットを行った場合の話でして、間違ったバージョンのパレオダイエットを行った場合は、話が変わってきますのでご注意ください。間違ったバージョンというのは

 

  • パレオダイエットを糖質制限と同じものと誤解して、限界まで炭水化物を減らした食事
  • パレオダイエットを肉食ダイエットと同じものと誤解して、肉ばかり食べてる食事

 

みたいなやつです。これは海外でありがちな間違いで、パレオダイエットでは「加工食品を減らす」のが一番重要なポイントで、それ以外のパラメータを極端に動かしてもろくなことになりませんので。

 

 

なかでも有害事象の報告が多いのは「糖質をガンガンに減らした食事」でして、たとえばケトーシス状態まで炭水化物を減らしたパレオダイエットを行った女性に、赤い発疹が出たケース(R)などの事例が出ております。また、十分な魚介類などを食べない場合も、パレオダイエットにより、ヨウ素の摂取量が低下し甲状腺機能に問題が出る可能性も指摘されてたりします(R)。まぁ極端な食事が悪いのはパレオダイエットに限ったことじゃないんですが。

 

 

ちなみに、パレオダイエットの長期的な研究としては、現時点で最も長いRCTは24か月(R)で、これによると2年ほどパレオダイエットを続けても目立った副作用は報告されなかったとのこと。全体的には、パレオダイエットを糖質制限と同じものと誤解さえしなければ、リスクは考えにくいと言えましょう。

 

 

 

まとめ

というわけで、2回にわたっていろいろ見てみました。ざっくりまとめてみると、

 

  • パレオダイエットでめちゃ痩せるわけではないが、食欲に悩まされにくいのがポイント

 

  • その他の健康についても、ちゃんとやれば明確な効果を得られる。ただし、地中海食のような、他の健康食と比べて目立った優位性があるわけでもない

 

  • 極端なことさえしなければ、副作用はまずないと思われる(これはどんな食事法でも同じですが)

 

みたいになります。「なんだよ!パレオダイエットって他の健康食よりすごいわけじゃないのかよ!」と思った方もいるかもですが、そんな夢のような食事法なんて存在しないし、たいていの健康食は効果が似てくるものだとお考えください。逆に言えば、「パレオダイエットや地中海食を上回るすごい食べ方がある!」みたいな主張が出てきたら、それはヤバいサインだと思っていただければ幸いです。ではまたー。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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