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メンタルが限界なら、とりあえず森へ行け!森林浴が想像以上に効くぞ!というメタ分析の話

 

拙著「最高の体調」では、「メンタルを改善したいなら、とりあえず森に行け!」みたいな話をしております。これまでの研究を見てると、森林浴、自然療法、自然の中で深呼吸といったトレーニングは、いずれも「メンタルが回復するかも」って事実を示してますんで。

 

では、その効果は実際にいかほどのものか?ってことで、森林療法に関する最新のメタ分析(R)が出ておりました。この研究は、2024年12月までに出た森林療法の研究を集め、25件の研究・合計1,876人分のデータをまとめたもの。対象になったのは、心理的ストレス、不安症状、抑うつ症状などで、「森がどれぐらいメンタルに効くのか?」をチェックしてるんですな。データ数はそこそこ多いので、割と信頼できる結論を出してくれてるんじゃないでしょうか。

 

それでは、結論から言ってみましょう。これによると森林療法の効果ってのは、

 

  • 心理的ストレス:SMD = −0.71

  • 抑うつ症状:SMD = −0.68

  • 不安症状:SMD = −0.77

 

という感じになっております。SMDは効果量の一種で、ざっくり「どれぐらい効果の差が出たか」を見る数字であります。一般的には0.5前後なら中くらい、0.8前後なら大きめの効果と見なされることが多いので、今回の結果は「森の中にいると、まあまあデカいメンタルの改善効果を得られそうだぞ」と言ってよさそうであります。つまり、森林療法は単なる気分転換ではなく、短期的にはストレス、不安、抑うつを減らす可能性が高いってことですな。

 

では、なぜ森に行くと気分が回復するのか?ってとこが気になりますけど、研究チームはいくつかのメカニズムを提案しておられます。

 

  1. 注意回復理論:これは、「都会の生活は注意力を使いすぎるので、自然の中にいると脳のリソースが回復するよ」という考え方ですね。都市では、車、信号、広告、人混み、通知、騒音など、こちらの注意を奪うものが多すぎまして、そのせいで脳がずっと「次は何に気をつければいいんだ?」と緊張しっぱなしになるんですよ。

    一方で、森の中には、木の揺れ、鳥の声、葉っぱの模様、風の音のように、ぼんやり注意を向けられる刺激が多いじゃないですか。これが脳を無理に集中させるのではなく、自然に休ませてくれるわけです。


  2. ストレス回復理論:こちらは、「人間は進化の過程で自然環境に安心感を覚えるようになっているのでは?」という考え方。人間の脳は、コンクリートと通知音の世界で進化したわけではなく、長い進化の大部分を、緑、水、土、風、動植物に囲まれて生きてきたので、森のような環境に入ると、自律神経が落ち着きやすくなるのではないか、という理屈です。


  3. その他もろもろ:あと、さらには木から出るフィトンチッド、鳥の声や葉擦れの音、緑の視覚刺激などが、自律神経やコルチゾールに影響する可能性も指摘されております。

 

まぁ、このへんはまだ「完全にメカニズムが解明された!」という段階じゃないんですが、森がメンタルに効く理由は、単に「気分がいいから」だけではなく、注意、感情、自律神経、身体感覚がまとめて動くからではないか、ってのは知っておくといいっすね。

 

あと、ここで大事なのが、今回の研究は森林療法にかなり前向きな結果を出している一方で、限界もかなりハッキリと示してるとこっすね。具体的に言いますと、

 

  1. 研究間のバラつきが大きい:心理的ストレス、不安、抑うつのすべてで、I²が74%を超えてまして、これは研究ごとの結果にかなり差があるって意味になります。つまり、「森に行けば誰でも同じように効く」という話ではなくて、参加者が健康な人なのか、もともとストレスが高い人なのか、森に15分いるだけなのか、数週間プログラムに参加するのかなどの条件によって、効果の出方がかなり変わるわけです。

  2. 長めの介入ほど効果が大きかった:心理的ストレスを見た研究では、1日以内の短い森林体験よりも、2〜7日、さらに1週間以上のプログラムのほうが効果が大きい傾向があったとのこと。また、健康な人よりも、ストレスや不調を抱えた臨床群のほうが効果が大きめだったそうでして、これはかなり納得できる話っすね。すでにメンタルが安定している人は、森に行っても「まあ気持ちいいね」ぐらいで終わるかもしれないんで。一方で、ストレスが溜まっている人や不安が強い人は、回復する余地が大きいぶん、効果も見えやすいのだと思われるわけっすね。

 

といったあたりは注意しておきたいところです。なので、森林浴をメンタル対策として日常的に使うのであれば、以下のように使うのがいいんでしょうな。

 

  1. まずは短期のストレスリセットとして使う:現時点で言えるのは、森林療法は短期的なストレス回復には役立つだろうってことでして、今回のメタ分析レビューでも、ほとんどの研究は介入直後の効果を見てるだけなんで、数週間後、数カ月後まで効果が続くかはまだよくわかってないんですよ。なので、「森林浴がうつ病に効く!」と言うわけにはいかないんですが、ただし、

    ・仕事で脳が煮詰まっている
    ・不安で思考がぐるぐるしている
    ・スマホとPCで注意力が散っている
    ・なんとなく気分が沈んでいる

    ぐらいの状態なら、森や大きめの公園に行く価値は十分あるんじゃないでしょうか。



  2. できれば複数回にする:今回のデータでは、長めの介入ほど効果が大きい傾向が出ております。そのため、「年に1回ぐらいの森林浴」よりは、「週1回、近所の緑地を30〜60分歩く」ぐらいのほうが現実的には効果があるでしょう。まぁ、近くに森がない人も多いでしょうが、その場合は、大きめの公園、川沿い、神社の木陰、植物が多い散歩道などで代用してください。



  3. 運動とセットにしすぎない:森林浴というと、「森の中を歩く」のが基本ですが、ここで注意したいのは、運動効果と森林効果が混ざりやすいところです。もし森を歩いて気分が良くなったとしても、それが森のおかげなのか、歩いたおかげなのか、日常から離れたおかげなのか、仲間と一緒だったおかげなのかは、まだ完全には分けきれてないんですよ。そこで、森に入るときは、

    ・気分を上げたいなら森歩き
    ・注意力を回復したいなら静かな自然観察
    ・不安を下げたいならスマホなし散歩
    ・疲労感が強いなら座って木を見るだけ

    ぐらいに分けて使うとよさげです。

 

というわけで、今回の研究を一言でまとめると、

 

森林療法は、ストレス・不安・抑うつを短期的に減らす可能性がある。ただし、研究のバラつきは大きく、長期効果はまだ不明。

 

という感じになります。個人的にはかなり良さげな結果が出てると思いますんで、「メンタルヘルスのサポート法」としては十分に使えるんじゃないでしょうか。特に森林浴ってのは低コストで、重大な副作用もないですからね。数あるメンタル対策の中でも、かなり始めやすい部類だよなぁ、と。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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