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「朝食抜きは心臓病リスクを17%上げる」って内容のメタ分析を冷静に読んでみよう!


「朝食を抜くと病気になる!」みたいな考え方があるわけです。朝食を抜くと血糖コントロールが乱れてインスリン分泌が悪化し、炎症や血圧の上昇、脂質異常などを通じて心血管疾患が進む!みたいな説で、過去にも朝食抜きの危険性を指摘するニュースが流れたことが何度もありました。

 

ただし、この考え方については、まだ観察研究が中心で「因果関係まではよくわからん」って段階だったんですけども、近ごろ出た最新のメタ分析(R)では、

 

朝食を抜く人は、心血管疾患のリスクが上がる!

 

と結論づけておりました。私のようにここ15年ほど朝食抜きで生きてきた人間としては、思わず不安になってしまう話ですな。

 

では、今回の新たなデータを、私たちはどう考えればいいのか。エビデンスの階層を意識しつつ、ゆるっとチェックしてみましょう。

 

 

200万人超をまとめたメタ分析で何がわかったか

ここで取り上げる論文は「朝食抜きと心血管疾患の関連:メタ分析」ってタイトルでして、以下のような研究デザインになってます。

 

  • 観察研究(コホート研究など)を対象に9本の研究をピックアップ

  • 合計2,383,813人のデータをメタ分析

  • 「週5回未満の朝食」を朝食抜きと定義して、みんなの健康にどのような違いがあるかを分析

 

ってことで、ご覧のとおり、なかなか大規模な内容になってまして、いかにも良さげな感じがするわけです。

 

では、分析の結果どんなことがわかったのかを、ざっくりまとめてみると、

 

  • 朝食を抜く人は、朝食を食べる人に比べて:
    • 心血管疾患リスク:17%増
    • 冠動脈疾患:14%増
    • 脳卒中:15%増
    • 心血管死亡:49%増

 

みたいになってます。なかなかインパクトのある数字でして、「やっぱ、朝食を抜いたら寿命が縮むのか……」と思いたくなるわけです。

 

 

 

「観察研究」のメタ分析は判断が難しいよねー問題

が、実はここから「朝食抜き=悪い」と考えるのはちょっと短絡的だと思ってまして、それというのも、この研究で扱ったデータは「すべて観察研究」だからです。つまり、「朝食を抜いたグループ」と「朝食を食べたグループ」を厳密にわけて行った研究ではないんですな。

 

ここはめちゃくちゃ大事なポイントで、実際のところ、この観察研究が答えているのは、「朝食を抜く人」は心血管疾患が多いか?って問題なんですよね。一方で、私たちが本当に知りたいのは、「朝食を抜く行為」が心血管疾患を増やすのか?ってところでして、この2つは、似ているようでかなり違うものなんですよ。

 

そこで、少し想像してみましょう。現実の世界で「朝食を抜く人」とはどんな人が多いでしょう? ちょっと考えてみただけでも、

 

  • 早朝からダブルワーク
  • 睡眠不足
  • ストレス過多
  • 加工食品中心の食事
  • 喫煙や飲酒習慣あり
  • 医療アクセスが不十分
  • 運動習慣なし

 

みたいな不健康なライフスタイルの人ほど、朝食を抜きやすいと想像できるんじゃないでしょうか。つまり、朝食を抜くから病気になるんじゃなくて、病気になりやすい人ほど朝食を抜いてるんじゃないかってことです。いわゆる交絡の問題ですな。

 

 

 

では、ランダム化比較試験(RCT)の結果はどうなのか?

じゃあ、上記の問題に対する答えはないのかってことですが、幸いなことに朝食抜きや時間制限食(16時間断食とか)の効果を検証したRCTはすでにいくつか出ております(R,R)。詳細は省きますけども、これらの結果をざっと見てみると、朝食を抜いたグループってのは、

 

  • 体重減少
  • 血糖コントロール改善
  • 血圧低下
  • 血中脂質の改善
  • 炎症マーカー低下

 

みたいな感じで、むしろ改善傾向が報告されることが多いんですよ(「改善がなかった」って報告もあるが、少なくとも「悪化した」ってのは少ない)。まさに観察研究とは真逆の結果が出てまして、おもしろいもんですなぁ。

 

まぁ個人的に「観察研究のメタ分析」にケチをつけるつもりはないものの、観察研究をいくら束ねても、出てくる結論は「観察レベル」のままであるのも事実。方向性が矛盾した場合には、RCTを優先したほうが良いんじゃないかなーと思う次第です。

 

ちなみに、観察研究で「朝食抜き=悪い」って感じになりがちなのは、「もともと健康志向の人が朝食を食べる傾向がある」ってのもあるでしょう。とくに90年代には「朝食=健康」という主張が世界で流行りましたんで、健康意識の高い人ほど朝食を習慣化している可能性は高いんですよね。つまり、「健康な人が朝食を食べている」可能性も十分あるわけです。

 

 

で、朝食についてどうします?

ってことで、実際のところ「朝食はどうすればいいのか?」ってことですけども、いろいろデータを見てみたところ、私の中では以下のようにまとまりました。

 

朝食を抜いても問題ないケース

  • 時間制限食を戦略的に行っている
  • 体脂肪を減らしたい
  • 血糖コントロールを改善したい

こういった場合は、朝食抜きはまったく問題なさそうであります。

 

ただし筋肥大が最優先なら

ただし、筋肉の成長を最大化したいなら、

 

  • 1日のうち最低でも8時間以上は食事を自由に摂取する時間を作る
  • 1日3回以上は、十分にタンパク質を摂取するように心がける

 

ほうが望ましいでしょうね。筋タンパク質合成(MPS)は「回数」にも依存するため、摂取回数が少なすぎると最適化は難しくなりますんで。

 

というわけで話をまとめると、

  • 朝食抜きは観察研究ではリスク増と報告されている

  • しかし、RCTではむしろ朝食抜きは健康の改善が報告されることが多く、交絡の可能性が極めて高い

  • 個人的には朝食は「必須」ではないと思うので、目的次第で戦略的に選べばOK

 

って感じです。まぁ朝食を「最も重要な食事」と考えるのは難しいと思いますんで、あんま深刻に考えなくてもいいんじゃないでしょうかー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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