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運動がキツいときは「仲間」を頼れ!写真を見るだけで持久力が24%伸びた研究の話

   

 

ひとりで走ると妙にキツいのに、誰かと一緒なら意外と楽に走れた!みたいな経験は、誰にでもよくありましょう。まぁ、仲間がいれば退屈しにくいし、「あいつに追いつかねば!」ってプレッシャーも働くんで、運動のモチベーションが上がるのは当たり前ですもんね。

 

が、おもしろいもんで、近ごろは、それだけじゃ説明できない現象があるんじゃないの?と考える研究者も増えてるんですよ。実際、近ごろ発表された研究(R)によると、仲間がその場にいなくても、信頼できる人の写真を見るだけで運動の持続時間が延びる可能性があるというから面白いもんです。

 

これはオックスフォード大学のアラン・デイヴィスらのチームによるもので、この先生方は、

 

「自分を支えてくれる人」の存在を感じると、運動中の疲労感やエネルギーの使い方が変わるのではないか?

 

というテーマでリサーチを行ったんですよ。仲間が実際にそばにいなくても、社会的なつながりを感じるだけで、体の出力が変わるんじゃないかってことですな。

 

これを確かめるために、研究チームはイギリスの競技ボート選手を対象に、2つの実験を実施。最初の実験に参加したのは、26人の若いボート選手で、参加者にはローイングマシンを漕いでもらい、決められたペースを維持できなくなるまで運動を続けてもらったんだそうな。

 

その際、参加者には、次のどちらかの写真を表示したとのこと。

 

  1. 自分を支えてくれる友人や家族の写真
  2. 知らない人物の写真

 

当然、友人や家族は実験室におらず、声援を送ってくれるわけでもなし。ただモニターに写真が映っているだけであります。

 

ところが結果は不思議なもんで、

 

  • 自分を支えてくれる人の写真を見た場合、知らない人の写真を見た場合よりも、運動を続けられる時間が約24%長くなった!

 

って結果が出たらしい。しかも、運動中に感じたキツさには明確な差がなかったということで、つまり友人の写真を見た参加者は、「いつもより必死に頑張った!」と感じていたわけじゃないのに、実際にはより長く運動できてたわけですね。

 

でもって、続く第2の実験には、25人の成人ボート選手が参加。こちらでは、参加者に20分間の一定ペースの運動と、2キロのタイムトライアルを行ってもらい、以下の3つの条件を比べております。

 

  1. 知らない人物の写真を見る
  2. 自分を支えてくれる人物の写真を見る
  3. 支援者の写真を見たうえで、その本人にも近くにいてもらう

 

すると、こちらも結果は似ていて、写真だけだろうが本人が近くにいようが、どちらの条件でも一定ペースで運動している最中の疲労感が小さくなり、2キロのタイムも速くなる傾向が確認されたんだそうな。やっぱり、写真だけでも運動の感覚や成績が変わるものなんですなぁ。

 

では、なぜ写真を見るだけで運動が続くのか?ってことですが、ここで研究チームが提案しているのが、「ソーシャル・エナジェティクス(社会的エネルギー論)」という考え方であります。

 

これは、私たちの体が使えるエネルギーの量は、筋肉の状態や体内の栄養だけでなく、周囲に信頼できる人がいるかどうかにも左右されるのではないか?って仮説のこと。そもそも、私たちの肉体ってのは、必ずしも体内のエネルギーが切れたから動かなくなるってわけではなく、たとえ体内にまだエネルギーが残っていたとしても、脳が「このまま動き続けると危ない!」と判断すれば、その時点で私たちは疲れや苦しさを感じるものなんですよ。このような脳の仕組みがないと、体内のエネルギーを使い果たすまで動き続けることになっちゃいますからね。

 

ところが、ここで「自分を助けてくれる人」の存在を感じられると、脳の危機管理が少し変わる可能性があるんですよ。たとえば、

 

  • トラブルが起きても助けてもらえる
  • 周囲をひとりで警戒しなくていい
  • 必要な資源を仲間と分け合える
  • 自分だけで問題に対処しなくていい

 

みたいに思うことができると、私たちの脳は「予備エネルギーを大量に残しておく必要はない!」と判断し、目の前の運動に、より多くのエネルギーを回せるようになるってことですな。

 

もちろん、この結果は慎重に見ておく必要がありまして、

 

  • この研究はまだ査読前のプレプリントであり、専門家による正式なチェックを経ていない。なので、これから分析や解釈が修正される可能性がある。
  • 実験の参加者は合計51人と少なく、いずれも競技ボートの経験者。一般の運動初心者や、ランニング、筋トレ、ウォーキングでも同じ効果が出るかはわからない。
  • 「24%」という数字も、第1実験の特定の条件で得られた平均値にすぎない。誰でも好きな人の写真を見れば、運動能力が24%上がるという意味ではない。
  • 研究チームは社会的な支えによって疲労感が変わったと考えているが、詳しい心理的・生理的メカニズムはまだ確定していない。

 

ってあたりは解釈が難しいんで、現時点では「好きな人の写真を見れば持久力が24%アップする!」とまでは言えませんな。

 

とはいえ、この研究は、運動についての考え方をちょっと変えてくれるのが、良いところではないでしょうか。私たちは、運動が続かないと、つい「根性がない!」「体力が足りない!」とか考えがちなんだけど、実際の運動能力や疲労感は、「自分がどれだけ安全だと感じているか?」でも変わるってのは、個人的にも十分あり得るんじゃないでしょうか。

 

なので、「写真を見ながら運動しよう!」とまで言わないものの、次のような使い方なら試してみる価値はあるかなぁ、と。

 

  • 友人と一緒にランニングや筋トレをする
  • 運動の予定を仲間と共有する
  • オンラインで同じ時間に運動する
  • 家族や友人から応援のメッセージをもらう
  • 大会やハードな練習の前に、大切な人の写真を見る

 

特に、ひとりで運動するとすぐにキツくなる人は、トレーニングの内容を変える前に環境を変えてみるのもいいでしょうな。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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