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「寿命を延ばすには、運動・睡眠・食事をどれだけ改善すればいいのか?」を調べた研究の話

 

「健康のためには、よく寝て、よく動いて、ちゃんと食べましょう!」ってのは当たり前すぎる話なんですが、ここで気になるのが、

 

  • 睡眠、運動、食事のうち、もっとも重要なのはどれなのか?

  • 寿命を延ばすには、どのくらい生活を変えればいいのか?

  • ひとつに集中するのと、全部を少しずつ改善するのでは、どちらが効率的なのか?

 

といったところでしょう。要するに、「健康にいいのはわかったけど、結局、何をどこまでやればコスパがいいの?」って話ですな。

 

で、そんな疑問について、なかなか興味深い研究(R)が出ておりました。これはUKバイオバンクに登録された59,078人を対象にした調査で、参加者の年齢中央値は64歳。研究チームは、参加者の、

 

  • 睡眠時間
  • 中高強度の運動時間
  • 食事の質

 

を調べ、その後およそ8年間にわたって、死亡や心血管疾患、がんなどの発症を追跡したんだそうな。睡眠時間と運動量は、手首につけた加速度計で測定。食事の質については、野菜、果物、魚、全粒穀物、砂糖入り飲料などの摂取量から、0〜100点のスコアを算出しております。

 

ここで研究チームが何を調べたのかと言いますと、

 

「睡眠・運動・食事をどのくらい改善すれば、寿命や健康寿命がどれだけ延びるのか?」

 

という問題であります。「健康寿命」ってのは、単に生きている年数じゃなくて、心血管疾患、がん、糖尿病、認知症などに困らず暮らせる年数を意味しております。

 

では、分析の結果を見てみましょう。まず注目すべきポイントは、

 

  • 寿命と健康寿命にもっとも強く関係していたのは運動だった!

 

ってところでしょう。もうちょい具体的に申し上げますと、

 

  • 運動のメリットは、1日約22分の中高強度の運動を超えたあたりから明確になり、寿命へのメリットは1日50分前後で頭打ちになる傾向が見られた

  • 健康寿命については1日75分前後がピークで、このレベルの活動をしてる人は、健康寿命が最大で約10年長かった

 

みたいになります。やはり運動は、健康対策の王様なんですかねぇ。

 

もちろん、これは「毎日75分運動すれば健康寿命が必ず10年延びる」という意味じゃなくて、あくまで観察データをもとにした理論上の推定値ではあります。が、そこを差し引いても、「健康のためにひとつだけ変えるなら、運動の優先順位はかなり高そうだ」とは言えるでしょうな。

 

続きまして、個人的に大事だと思ったのが、ひとつの習慣だけを大きく変えるよりも、睡眠・運動・食事を少しずつ改善したほうが効率がよかったところです。研究チームの推定では、生活習慣のスコアが低い人の場合、

 

  • 睡眠を1日5分増やす

  • 中高強度の運動を1日1.9分増やす

  • 食事スコアを5点改善する(食事スコア5点は、ざっくり言えば、野菜を1日0.5サービングほど増やす程度に相当)

 

という小さな変化の組み合わせによって、寿命が約1年長くなる傾向が見られたそうな。それぞれの変化だけを見ると、「そんなもんでいいの?」と思うほど小さいっすね。

 

これに対して、同じ1年分の寿命メリットを睡眠だけで達成しようとすると、1日あたり約25分も睡眠を延ばす必要があったそうな。これに加えて、食事だけの改善では、統計的に明確な1年分の寿命延長を確認できなかったそうで、これはちょっと意外でしたねぇ。

 

さらに、もうちょい上級者向けのデータとしては、

 

  • 睡眠を1日60分増やす

  • 中高強度の運動を1日8.8分増やす

  • 食事スコアを20点改善する

 

という組み合わせでは、推定寿命が約5年長くなってそうで、これはなかなか凄いもんですね。

 

ちなみに、「運動量が多い・睡眠が適切・食事の質が高い」というベストな組み合わせを続けると、もっとも条件が悪いグループと比べて、

 

  • 寿命が約9.35年長い

  • 健康寿命が約9.46年長い

 

という結果が得られたそうな。ここまで来ると、かなり人生を左右するレベルっすね。

 

もちろん、この研究で使われた食事アンケートは、食生活をかなり大まかにしか測定できないんで、このデータだけ見て「食事はたいした影響がない!」と思うのは早計であります。この研究デザインだと、加糖飲料を少量飲む人と大量に飲む人の違いや、加工肉を月に数回食べる人と毎日食べる人の違いを、十分に反映できない場合がありますからね。食事の効果が小さく出たのは、測定方法の粗さが一因かもしれないんで。

 

これは睡眠についても同じで、睡眠不足になると食欲が増したり、座っている時間が長くなったりすることが、過去の研究で報告されてますからね。つまり、睡眠不足は死亡リスクを直に高めるだけでなく、

 

  • 睡眠不足になる→食欲が増える→活動量が落ちる→体重や代謝に悪影響が出る

 

という間接的なルートもあるわけです。このような影響は、それぞれの生活習慣を切り離して分析すると見えにくくなっちゃうんですよね。

 

ってことで、今回の知見をまとめますと、

 

  • 寿命と健康寿命への影響がもっとも大きかったのは運動

  • ただし、運動だけに集中するより、睡眠と食事も一緒に改善したほうが効率がよい。ごく小さな改善でも、3つを組み合わせれば意味のある差につながる可能性がある

  • 睡眠不足を過度に恐れる必要はないが、食欲や活動量への間接的な影響は無視できない

 

という感じになります。あらためて運動の重要性が浮き彫りになった形ですが、だからといって運動だけやっておけば睡眠と食事はどうでもいいわけではなし。これに加えて、「睡眠を少し増やす」「数分だけ多く動く」「野菜を少し足す」といった小さな改善を束ねたほうが、無理なく大きなメリットを得られそうだってとこは押さえておきたいっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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