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カップルの仲を破壊する原因のビッグスリーはこれだ!みたいな観察研究のお話

 
 

カップルの仲を破壊する3大要因はこれだ!」みたいな話(R)がおもしろかったのでメモ。まずはどんな研究デザインだったかを申し上げますと、

 

  1. ギリシャ語を話す604人と中国語を話す799人に協力をお願いする(すべての回答者が現在交際中で、ギリシャ人サンプルの32%、中国人サンプルの34%が既婚者)

  2. 参加者に「人間関係でありがちな問題」を78パターンにまとめたリストを見せ、それぞれの問題のなかで「いまの人間関係を保つうえで、どれが一番ややこしいと思いますか?」と尋ねる

  3. 続いて主成分分析を使って、最初は78パターンあった問題を、「情熱の衰え」「不倫」「性生活の不満」「一夫一婦制でない」「暴力」「自分の時間と空間の不足」「長時間労働」「粘着性」「性格の問題」「子供」「社会的なネットワークの問題」「妥協の欠如」「努力の欠如」という13のジャンルに分類

  4. 最後に、参加者がどれぐらいそれぞれの問題で人間関係が壊れやすかったかを尋ねる

 

みたいになってます。暴力やら性格の問題といったありがちな問題のなかから、特にカップルの関係への悪影響がデカいものを選んだわけですね。欧米圏とアジア圏の2グループがふくまれてるのが、なかなか良い感じじゃないでしょうか。

 

で、いろいろ調べてどんな傾向が見られたかといいますと、

 

  • 参加者の30%は「自分自身の粘着性」を人間関係の崩壊の原因に挙げた(いわゆる「束縛が激しい人」ってやつですな)

  • 23%の参加者が、「プライベートな時間と空間」の不足を挙げた
  • 22%程度の参加者が「長時間労働」を挙げた

 

だったそうです。横断研究なので精度が高いわけでもないんですけど、とりあえず「粘着性」「プライベートな時間と空間」「長時間労働」がカップルの関係を壊すビッグスリーかもしれないわけですね。わりと納得度が高い答えじゃないでしょうか。

 

 

また、この研究では、著者チームが「進化論的な解釈」も行っていて、これがちょっと他にはないナイスなポイントかと思います。ここでどのような推測がなされているのかをまとめると、こんな感じになります。

 

  • 進化論の視点から見れば、カップルは長く付きあったほうが子育てに使うリソースが増え、遺伝子を後世に残す確率も高くなるはずである

 

  • そのため、「嫉妬」や「執着」といった粘着性をもたらす感情は、パートナーの監視メカニズムとして働き、お互いの浮気率を下げ、上記のメリットを増幅してくれるのは間違いない。その点で、めちゃくちゃ重要な勘定として進化している

 

  • しかし、パートナーの監視システムは、あまりにも強すぎると人間関係のゆがみを引き起こす可能性がある。たとえば、ただの飲み会で不倫を疑われてしまったり、パートナーの監視に息苦しさを感じてしまったりといったことである。

 

  • また、このような粘着性の問題は、お互いに「プライベートな時間と空間」の減少を引き起こす可能性もある

 

ってことで、進化のプロセスで長期的な関係の維持に役立った感情が、ふたりの関係性を壊すメインの原因になってるのではないか、と。確かに原始時代は現代よりも他のパートナー候補と出会う確率は低かったでしょうから、そこらへんが嫉妬や執着の過剰を引き起こす原因になってそうではありますな。

 

 

ちなみに、この調査では、男女やサンプル別にこんな傾向も出ておりました。

 

  • 男性は「パートナーが自分に興味を持ってくれない」などの「情熱の衰え」を原因にあげるケースが多かった

  • 女性は「パートナーに簡単に依存してしまう」などの「自分の粘着性」に関する問題を訴える人が多かった

  • ギリシャ人は「私はわがままだ」といった「性格的な問題」を報告する傾向があり、中国人は「関係をうまくいかせるために十分な努力をしていない」といった「努力不足」に関する問題を報告する傾向があった

 

ということで、これが日本にも当てはまるのかどうかは不明ながら、努力不足を原因にあげやすい傾向なんかは日本にも確認されそうな気はしますね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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