一流心理学者「後悔しない決断をしたいなら『未来の自分』と仲良くするしかないでしょう!」#1
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「あなたの未来の自分(Your Future Self)」って本を読みました。著者のハル・ハーシュフィールドさんは、UCLAアンダーソン経営大学院の心理学教授で、20年にわたって「未来の自分と現在の自分の違い」について調べてくれている先生です。
本書もハーシュフィールド先生の得意技を活かして、「私たちは未来の自分を現在の自分と別人として扱っており、それが意思決定における複数の問題を引き起こしている」みたいな話を展開してまして、その知見は「YOUR TIME ユア・タイム」でも参照してまして、非常にお世話になっております。
では、本書から、個人的に参考になったポイントを見てみましょう。
ポイント1. 私たちは未来の自分をまったく別人として扱い、それが選択ミスの原因になっている
- プリンストン大学などの研究では、学生の参加者に、じぶんの食事シーンについて説明してもらうという研究を行った。すると、ほとんどの人は一人称視点を使って自分の姿を説明した。
続いて、同じ学生たちに、「40歳を過ぎた頃に、自分がどんな食事をしているかを想像してくださいねー」と指示したところ、今度は三人称視点を使う傾向が約4倍も高くなり、ほとんどの人は、未来の自分を別の人物であるかのように説明した。要するに、私たちの脳は、未来の自分を別の人のように見ている。
- ハーシュフィールド先生が2009年に発表した研究でも、似たような結果が得られている。この研究では、fMRIを使って脳スキャンを行ったところ、「数年先の自分について考えてください」と指示された参加者の脳は、見知らぬ他人について考えた時の状態と非常によく似ていた。こちらからも、私たちが未来の自分を別人としてとらえていることがわかる。
- つまり、私たちは「核となる中心的な自己」を持っているわけではなく、一人ひとりが「別個の異なる自己の集合体」だと言える。ところが、私たちの多くは「現在の自己に過度に固執する傾向」があり、「未来の自分も現在とまったく同じように感じるだろうなー」と想像してしまう。これが、人間の意思決定に大きなエラーをもたらしている。それゆえに、過去、現在、未来の自分のつながりを強化することで、私たちは自分について新たな視点を得ることができる。
ポイント2.長期的な決断をするとは、未来の自分と仲良くしてやらねばならない
- 私たちは、見ず知らずの人と接するときには、どこか利己的になったり、自己中心的になったりする傾向がある。これは、私たちが悪党だという話ではなく、ただ見知らぬ相手には共感力が発動しないだけである。そのため、私たちは、状況によってはいくらでも利己的な行動をとる可能性がある。
- 以上の問題は、未来の自分についても発動する。未来の自分は私たちにとって他人のように思えてしまうため、多くの人は、彼ら(未来の自分)のためになることをしない可能性が高まる。そのせいで、食べ過ぎ、使い過ぎ、貯蓄不足といった問題が起きてしまう。
- この問題に立ち向かうには、私たちが、子供や両親、親しい友人、本当に親しい同僚に接する時と同じように接することである。長期的な決断を迫られたとき、未来の自分を身近な人のように考えることができれば、その人(未来の自分)のためになる行動を増やすことができる。
- ハーシュフィールド先生の研究でも、「未来の自分と仲良くしよう」理論の妥当性は確認されている。具体的なデータでは、未来の自分との類似性やつながりをより強く感じている人ほど、資産を築き、倫理的に行動し、主観的な健康状態や人生の満足度、生きる意味をより高く報告する傾向がある。これらの発見は、他の要因を考慮しても変わらない。
ポイント3.未来の自分をより身近に感じられるようにする。
- 未来の自分と仲良くするには、未来の自分と文通するという方法がある。これは、10〜20年後の自分に手紙を書くトレーニングで、まずは「いま自分はこのような目標を持っているんだけど、10年後の自分さんは達成できてます? もし達成できていたら、どんな気分です?」といった感じで、未来の自分に向けて近況を尋ねる文章を作成。
続いて、今度は未来の自分の立場を想像し、今の自分への返信を書き出していく。「今の自分の人生は、こんな感じで発展してきて、今はこんな気分だよー」といった感じで、将来の自分が何をなしとげて、それによって人生の満足度がどう変わったかを返信する。
- この作業により、自分が後悔しそうなこと、あるいは最も大切にしていることをじっくり考えることができ、それによって将来の自分が満足できるような行動にフォーカスが当たりやすくなる。「貯蓄を増やしたい!「無駄づかいを減らしたい!」「減量したい!」など、新しい目標を設定しようと思った時には、このトレーニングを試してみると良い。
- ハーシュフィールド先生の研究では、20年先の自分に手紙を書いた参加者は、90日後の自分に手紙を書いた参加者よりも運動をする量が多かった。最近は、FutureMeという「未来の自分に手紙を書くサービス」も公開されており、ここには2000万通の手紙が投稿されていて参考になる。
- また、別の研究でも、COVID-19の大流行中に未来へ手紙を書いた人たちは、貯蓄が増え、パンデミックのストレスがやわらいだ。ハーシュフィールド先生は、これを「逆タイムトラベル」と呼んでいる。
ってことで、長くなったので今日はこのへんで。次回もさらに「未来の自分」と仲良くするための方法を見ていきましょうー。