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ペットロスの科学101

 


7回忌が過ぎたのでブログ再開。当然ながら、今回はペットロスにまつわる研究のお話です。

 

以前は「ペットロス?たかが犬猫の話でしょ?」みたいな風潮もあったんですが、コンパニオンアニマルを飼う人の数が増えたおかげで研究が進みまして、最近は「ペットロスは思ったよりもヤバい!」って感じになってきたんですよ。ウチの猫もたいがい高齢だったので、個人的にもペットロスに関するデータはチェックしておりました。

 

いまのところ、ペットロス研究のポイントは大方のデータで一致しているので、とりあえず以下のポイントを押さえておくと吉。ちなみに、これらの知見は全ての喪失感に当てはまることなので、いまペットを飼っていない方にも有効かと思われます。

 

 

 

ポイント1. ペットロスは人間の死への悲しみを超えることもある

  • 近年はわりとペットロスの研究が進み、そのダメージレベルが注目されるようになった。2022年に発表された17の研究レビュー(R)によると、多くの人は、ペットの死を人間の死と同じように経験するか、それ以上の心痛を報告する人も多い。その結果、ペットの死によるストレスは、親族や友人との死別と同じように、私たちの健康や幸福に悪影響を及ぼす可能性がある。

    事実、ペットとの死別は、悲しみ、睡眠不足、集中力の低下、食欲不振など、人間の死を悲しむときと同じ症状を誘発することが研究で示されている(R)(R)。

 

 

  • 2017年のケーススタディでは、ある女性が、愛犬の死後に通常の30倍にもなるストレスホルモン値の上昇が観測され、心臓発作に似た症状を示した。ペットの死に対するストレスと心臓へのダメージが報告されたのはこれが初めてではない(R)。

 

 

  • ペットロスのダメージが激しいのは、動物たちが常にそばにおり、変わらない愛情を向けてくれる存在だからである。新しい人間関係、子供の誕生、引っ越しや転居、大きな喪失感など、人生を変えるような転機を迎えるときにペットは毎日そばにいるため、人間同士との関係では再現できない、親密なコミュニケーションが生み出される。

    また、私たちが身なりを整えていなくとも、相手の期待に応える行動を取らなくとも、動物たちは私たちに愛情を示してくれる。これもまた、人間との関係とは異なるレベルの愛着を生みやすい。愛着の心理について調べたアリゾナ大学の研究(R)によれば、喪失による心的ダメージの大きさは、その対象との距離の近さによって最もよく予想される。

 

 

  • ペットロスによる悲嘆の期間は人によって異なるが、多くは1カ月から2カ月ほど維持され、丸1年ほど続くこともある(R)。その間になんらかのサポートがなければ、心的外傷後ストレス、うつ病、不安症につながることも珍しくない(R)。

    また、多くの人は、ペットの死後6ヶ月から1年の間に、寂しさとそれに伴う症状がやわらぎ始めると報告している(R)。ただし、ペットの死を経験した人のおよそ20%は、死後1年経っても大きな悲しみを経験し続けている(R)。

 

 

  • ただし、最初のレビューによれば、ペットロスの後で、回復力、自立心、勇気、個人的な強さを身につけたという人や、人生に対する感謝の念が強くなり、思い出を大切にする能力が身についたという人も、かなりの数が確認されている。これは心的外傷後成長によって、認知のコントロールスキルが発達したせいだと思われる。そのためにも、ペットロス後は、癒やしのプロセスに気を配る必要がある。

 

 

 

ポイント2. ペットロスを悪化させるものは周囲の無理解である

  • 社会的には、まだペットロスの心痛が認知されておらず、これがどれほど人間の感情と身体的な健康を損なうかは理解されていない。事実、愛猫や愛犬の死を悼むための休暇を取る人はほとんどいないが、これは「感傷的で成熟しいない弱い人間だと思われるのは嫌だ!」と考えるからである(R)。

 

 

  • ロードアイランド大学などの調査によれば、コミュニティ内でよりオープンに分かち合わねば、癒しのプロセスは促進されづらい。それと同時に、ペットロスに関するスティグマ(「ペットなんてたいしたことない!」みたいな)も、癒しのプロセスを困難にする。

    そのため、「ペットロスが悲しいのは人間として通常の経験だ!」という認識を周囲が持つ必要がある(R)。これは、ペットロスのみならず、あらゆる人間の悲嘆に共通するポイントである。

 

 

  • そのため、ペットロスについて周囲の理解がない場合は、できるだけすみやかにそのコミュニティを離脱し、同じような経験を持つ人たちとの交流を増やした方が良い。ちなみに、私の場合は、読者の皆さまが優しかったので大変はげみになりました。まことにありがとうございます。

    一方で、「ペットロスぐらいでブログを中断するんだから、やっぱメンタルが弱い人間なんだな」と指摘した方もおられましたが、ぜひとも砂漠でラクダに逃げられていただければと存じます。

 

 

 

ポイント3. ペットロスから立ち直るには?

  • 1.とりあえずソーシャルサポートが最優先:ペットロスに限らず、あらゆる種類の悲嘆から立ち直るためには、ソーシャルサポートが最も重要な要素である。ペットロスの心痛に対処するのは自分自身だが、周囲からのサポートが多ければ多いほど、私たちの心理的回復はより早くなる(R)。

    さらに、上述のとおり、自分が感じている心の傷の深刻さを恥ずかしく思い、それによって周囲に自分の感情を打ち明けるのをためらうのは絶対にNGである。このような羞恥心の感情は、回復のプロセスを必要以上に長くしてしまう。

 

 

  • 2.罪悪感は正常なプロセスである:たいていの人は、ペットを失ったことに対して罪悪感を抱き、自責の念に苦しみ続ける。しかし、基本的に、このような罪悪感は非合理なものであり、死別のプロセスの正常な一部だと言える。

    もちろん、その事実を知っただけでは罪悪感は止められないが、起こったときにそれを乗り越える一助にはなる。 このような感情を抱くことは、自分が弱いとか、なんらかの間違いがあるということにはならない。愛すべき存在が失われたのだから、そうなるのが当然である。

 

 

  • 3.悲嘆は“乗り越える”ものではない:悲しみのプロセスは直線的なものではなく、いったんおさまったと思っても、波のようにぶり返すケースが珍しくない。仕事中やシャワーを浴びているときなどに、何の前触れもなく涙があふれて来るケースは、ペットロスのあとでは普通のことだと言える。

    そのため、この悲しみを”乗り越える”と思わず、適切なソーシャルサポートのなかに身を置きながら、急に悲しい感情が押し寄せて来たとしても、「そういうものだ」と考えて受け入れた方が良い。

 

 

  • 4.日常のルーチンを守る:悲しみの感情を無視するのは良くないが、かといって悲しみで引きこもるのも良くない。できるだけ以前と同じ生活のルーチンを守ることで、悲嘆の悪化を防ぐことができる。起床の時間、モーニングルーチン、運動の習慣などは、ペットを失ってから5〜7日あたりには同じ状態にもどした方が良い。

    また、犬の散歩が運動の代わりになっていた人は、その分の歩数を稼ぐために別の方法を見つける必要がある。別のスポーツをしたりアウトドアを楽しんだりと、失われた活動の代理アクティビティを探すと良い。日常生活を維持し、運動や遊びの時間を増やすことで、気分や将来の見通しは明るくなりやすい。

 

 

  • 5.儀式は癒しの助けになる: 儀式はペットの喪失に心理的な区切りをつけ、人生の理不尽にある程度の形を与えてくれる。また、ペットの葬儀は、自分とその家族が気持ちを率直に表現するのに役立つ(R)。

    その他、ペットをしのぶオブジェを作ったり、写真集やスクラップブックを作ったりと、ペットとの思い出を共有するような儀式にも、心理的なバッファを作る働きがある。逆に、辛い思いをしたくないせいで、ペットの記憶を無視して仕事に打ち込んだりすると、癒やしのプロセスは遅くなる。

 

 

  • 6.セルフケアもマスト:先述のとおり、ペットを亡くしたストレスは、体力と精神力を激しく消耗させる。そのため、自分の身体的、精神的なニーズに気を配るのはマストとなる。自分を心配してくれる人と健康的な食事をとり、十分な睡眠をとり、定期的に運動してエンドルフィンを分泌させるのに気を配る。

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