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睡眠時間が筋トレの効果を左右する?科学的根拠と現実的アドバイス

 

 

睡眠不足が健康に大ダメージを与えるのは周知の事実ですが、新しいデータ(R)では、「睡眠が足りないと筋トレにどれぐらい悪影響があるの?」って問題を掘り下げていておもしろかったです。

 

今回の研究は、「普段から睡眠時間が7時間未満の人が筋トレをすると、筋力やボディメイクにどれだけ影響が出るのか?」を調べたものでして、具体的には以下のような方法で実験を行っています。

 

  1. 過去1年間に筋トレの経験がない、36人の健康な男性を集める。

  2. 全体を「普段から7時間未満しか眠っていないグループ」「普段から7時間は眠っているグループ」「普段から7時間以上の睡眠だが、筋トレはしないグループ」の3つに分ける。

  3. 週3回の筋トレを5~6週間行う(計16セッション)。筋トレの内容は、トレーニングバンド(セラバンド)を用いており、ショルダーアブダクション、シーテッドローイング、バイセップカール、プッシュアップを行う。各種目は2セットを限界まで行い、種目間の休憩は2分。

  4. その後、筋力、筋肉量、皮下脂肪、腕周りの太さ、睡眠の質などを調べて、「睡眠時間が短くても筋トレ効果は得られるのか?」をチェックする。

 

ってことで、睡眠時間「<7 p="" vs.="">

 

その結果は、こんな感じになりました。

 

  •  筋力の変化:トレーニングを行ったグループ(<7 li="">

 

  • 体組成の変化:筋肉量や腕の太さは、両グループともに増加し、皮下脂肪の厚さも減少した。意外なもんで、睡眠が7時間未満のグループは皮下脂肪がわずかに多く減少する傾向が見られたが、この結果には統計的な有意性がなく、偶然の可能性が高い。

 

  • 睡眠の質:睡眠が7時間未満のグループは、睡眠効率(ベッドに入っていた時間に対して、実際に寝ていた時間の割合)が他のグループよりも高かった。これは、1日7時間ぐらいの短眠な人は、体が自然と睡眠効率を高めるような適応をしているのだと思われる。

 

そんなわけで、この結果を見る限り、個人的には「睡眠が短くても意外と筋トレ効果って得られるんだなー」って印象でした。もっと激しいダメージがあるのかと思ってたもんで。

 

もちろん、この研究にはいろいろと限界がありまして、

 

  • 睡眠の必要量は人それぞれで、遺伝や環境要因に大きく影響されちゃう。なので、睡眠が7時間未満のグループには、もともと短時間睡眠でも問題がない人が含まれている可能性があり、全員に当てはまるわけではない。

 

  • この研究では、筋肉量や体脂肪を簡易的な測定で評価しているので、より精密な測定方法を用いると、違った結果が得られる可能性はかなりありそう。筋力評価にバンドを使用している点もいまいち。

 

  • この研究で採用されたトレーニングはバンドを用いた軽負荷なものなので、フリーウェイトやマシンを使った高負荷トレーニングでも同様の結果が得られるかどうかはよくわからん。

 

ってあたりは注意したいところです。ここらへんはもうちょい様子を見ないと、なんとも言えんですな。

 

この研究をふまえて、現実で役立ちそうな知見を引き出すなら、だいたい以下のようになるでしょう。

 

  • まずは自分の「最適な睡眠時間」を探すのが大事:最適な睡眠時間がわからないと、そもそも筋トレに悪影響が出ているのかもわからないんで、まずは自分にとって必要な睡眠時間を知るのが大事。そのためには、

    1)休日に目覚ましを使わずに起きた時間をチェックする
    2)日中の眠気や集中力の低下がないかどうかを確認してみる

    って手順を踏むのが手軽で良いかも。

 

  • 睡眠不足の日は筋トレの負荷を調整する:睡眠不足の日でも筋トレを行う場合、無理をしないことがポイント。疲労や集中力の低下がある日は、高重量・低回数のトレーニング(例:1~5RM)は避け、中~低重量・中回数のトレーニング(10~12RM)に切り替えるのが無難かも。あと、スピードを意識した動作(例:プライオメトリクスやスピードスクワット)は避けといたほうが良さそう。

 

  • 週末に「睡眠リカバリー」を試みる:平日忙しくて睡眠不足になった場合でも、週末に睡眠時間を増やすことで、一定の回復効果は期待できるため、週末は通常より1~2時間多めに寝て、体をリセットしてみるのもあり。ただし、大幅に寝過ぎると体内時計が乱れる可能性があるため注意が必要。

 

いろいろ書いてきましたが、今回の研究を見てると、「7時間未満の睡眠でも筋トレ効果は得られる可能性がありそうだなー」って感じではあるものの、長期的に見れば、十分な睡眠を確保することが筋力向上や体脂肪減少に有利であることは多くの研究が示すところなんで、できるだけ自分の最適な睡眠時間を割り出した上で、それをひたすら守ってみるのが良いかと思う次第です。どうぞよしなに。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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