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社会を上手く生き抜くには「うまいヨイショ」が欠かせないぞ!というメタ分析の話


社会で印象管理はどこまで役立つのか?」って問題を調べたメタ分析(R)が面白かったので、メモしておきましょう。

 

「印象管理」ってのは他人に自分をよく見せようとする行動やテクニックのことで、面接を受けるときに自分の強みを強調したり、上司に共感を示して信頼を得たり、SNSでキラキラした日常だけを投稿してみたりなど、これらはすべて印象管理の一種であります。

 

これは昔から心理学の研究対象になってまして、今回のメタ分析では、「面接と職場でのパフォーマンス評価において、印象管理はどこまで意味があるのか?」を調べております。面接官や上司に自分を印象づける作業は誰でもやることでしょうが、これは本当に評価を高める効果があるのかってことですな。

 

で、この中で研究チームは、印象管理を「自分推し」と「他人上げ」の2種類に分類しております。

 

  • 自分推し:「私はリーダーシップに自信があります!」みたいに、自分の能力や成果をアピールするパターン。

 

  • 他人上げ:「御社のビジョンにとても共感しています!」みたいに、相手を持ち上げるパターン。

 

この分類を踏まえたうえで、このメタ分析では、18本の論文から8,635人のデータをまとめて、「自分推し」と「他人上げ」の効果をそれぞれチェックしてくれたんですよ。

 

その結論がどのようなものだったかと言いますと、

 

  • 面接では、自分推しのほうが効果が大きい(相関係数 r = 0.24)

 

  • 仕事のパフォーマンス評価では、他人上げのほうが効果が大きい(相関係数 r = 0.25)

 

ってことで、簡単に言えば「初対面の面接官には自分アピール、職場の上司にはお世辞がまあまあ効くぞ!」というわけですな。

 

面接と職場で効果に違いが出ているのが不思議に思えますが、どうやら以下のような理由があるらしい。

 

  • 面接は短期決戦なので、多少自分を盛ってもバレにくい

 

  • 仕事は長期戦なので、ウソや過剰な自慢はすぐバレる

 

確かに、上司とは何年も顔を合わせて働かなきゃいけないので、ずっと「自分スゴイ!」アピールばかりしてたら逆効果ですわな。

 

また、このデータでは「ラボ実験」と「実際の面接」でも効果に差が出てまして、

 

  • ラボ(実験室)での面接では、印象管理の効果がやや強く出る(r = 0.24)

 

  • 現場(実際の採用活動)では、印象管理の効果がちょっと下がる(r = 0.18)

 

みたいな傾向も出てたりします。これはおそらく、本番の面接のほうが面接官が責任を強く感じているぶんだけ、印象操作に引っかかりにくいってことなんでしょう。実験室だと「この人を本当に採用するわけじゃないしな〜」って気持ちになるから、印象操作の効果が強めに出るんでしょうな。

 

さらにもうひとつ面白いのが、「学生」と「社会人」を比較してみると、「社会人のほうが印象管理がうまい」って結果が出てるとこですな。これは、たぶん社会人のほうが人生経験が長いぶんだけ、状況に応じた「ちょうどいい盛り方」とか「適切なお世辞」を肌で理解してるってことでしょう。印象操作は経験とともに磨かれるスキルってことですな。

 

ってことで話をまとめると、今回のメタ分析では、

 

  • 面接では自分を売り込むことが重要
  • 仕事の評価では相手を立てることが重要

 

という教訓が得られましたので、社会人の方に置かれましては、ぜひ適切なレベルのヨイショを使っていただければと思う次第です。

 

ちなみに、ヨイショの時に直に相手をほめちゃうと逆効果になることがありますんで、実践の際は以下のようなパターンをお使いください。

 

  • パターン1:相談ついでのヨイショ:「〇〇さん(上司)、このプロジェクトの進め方で少し迷ってまして……。〇〇さんって、こういう場面の判断がすごく早いなっていつも思うんですけど、もしよければアドバイスいただけないでしょうか?」みたいなやつ。質問や相談に絡めて、押しつけがましくない流れにするのがポイント。

 

  • パターン2:「成果の共有ついでに上司を立てる」:「この間、〇〇さんがアドバイスしてくださったやり方で提案資料を作ったら、クライアントにすごく好評でした!やっぱり現場をよく分かってる〇〇さんのアドバイスは違いますね。」みたいなやつ。自分の成果を報告しつつ、上司のおかげにするのがポイント。

 

  • パターン3:第三者を巻き込んで上司を立てる:(チームメンバーとの雑談中に)「うちの〇〇さん(上司)って、外部のクライアントにも信頼されてるんですよね。前に同席したときも、すごい安心感があるなーって思いました。」みたいなやつ。直接上司に言うのではなく、第三者経由で持ち上げるのがポイント。

 

  • パターン4:「さりげない尊敬表現」:(上司の話を聞きながら)「やっぱり〇〇さんのお話って、現場感覚がすごいですね。こういう視点、自分ではなかなか持てないので勉強になります。」みたいなやつ。上司がなにか話している最中に、リアクションとして自然に差し込むのがポイント。

 

これらは心理学的に“ヨイショの定番”とされてますんで、直にほめるよりも確実に相手を喜ばすことができるはずであります。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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