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高タンパク食は年を取ってからの筋肉減少を防ぎ、体のパフォーマンスも上げるぞ!という実験の話

 
 

「年を取ると筋肉が落ちる」ってのは常識で、
私も40代に突入してからというもの、ちょっと筋トレをサボると筋肉量が減る実感がありまして、加齢の影響はバカにならないなあ……とか感じております。

 

そんななか、最近出た研究(R)が興味深かったんで、内容をチェックしときましょう。まずは結論からざっくり言うと、

 

  • 高タンパク食は、年を取ってからの筋肉減少を防ぎ、体のパフォーマンスも上げるぞ!

 

って感じになります。
年を取るほどタンパク質が必要になるってのはよく言われることですが、ここでは筋肉減少(サルコペニア)の兆候がある高齢者を対象にしてまして、私がこれから体験するだろう問題を考えるのにめっちゃ役立ちました。

 

この研究は、韓国で行われた12週間のランダム化比較試験で、
流れをざっとまとめると、

 

  • 平均年齢60歳の男女26名(2型糖尿病あり+筋肉減少の兆候あり)を、「高タンパクグループ(1.2〜1.5g/kg/日)」と「 低タンパクグループ(0.8〜1.0g/kg/日)」にわける。
  • そのまま12週間ほど観察して、筋肉量(除脂肪量)、握力、歩行速度、バランステストなどを行う。

 

ざっくり言うと、一般的に推奨されるタンパク質の量を満たしている人と、推奨量を上回るレベルのタンパク質を摂取した人を比べて、「日常的な筋力や体の機能がどう変わるか?」を追ったわけです。

 

で、気になる結果は、こんな感じになりました、

 

  • 筋肉量
    •  低タンパクグループ:–1.8kgの減少
    •  高タンパクグループ:+0.5kgの増加
  • フィジカルパフォーマンス
    • 握力・歩行速度・バランス能力は、高タンパクグループが有意に改善
    • 立ち上がりテストなどは、両グループで有意差なし

 

ということで、高タンパクを意識しただけで、筋肉が減るどころか増えたうえに、体のパフォーマンスも向上したってことでして、これは非常に良い感じですね。この中だと、特に握力や歩行速度ってのは将来的に健康寿命や死亡リスクに直結する指標だと言われてるんで、これらが改善したってのはうれしいポイントですな。

 

では、なぜ高齢者はより多くのタンパク質が必要なのか?って話ですが、その答えは簡単で「アナボリックレジスタンス(同化抵抗性)」と呼ばれる現象があるからです。これは、簡単にいうと、
「年を取ると、同じ量のタンパク質を食べても筋肉合成が起こりにくくなる」
という体の変化のことです。

 

たとえば、

 

  • 若者が20gのプロテインを飲むと、筋肉合成がグイッと高まる
  • でも同じ量を高齢者が摂取しても、反応が鈍い

 

みたいなイメージですね。
このため、若者よりも多めのタンパク質摂取が必要になってくるわけです。実際のところ、過去の実験を見ても、

 

  •  若者の最大筋肉合成反応 → 0.24g/kg(体重1kgあたり)
  •  高齢者の最大筋肉合成反応 → 0.4g/kg

 

って感じで、かなりの違いが出ることが確認されてるんですよ。この差はかなり恐ろしいですねぇ。

 

ちなみに、今回の研究では、低タンパクグループも成人の推奨量(1日に体重1kgあたり0.8g)のタンパク質は摂取してるんですが、これは「栄養欠乏症を防ぐための最低ライン」にすぎず「筋肉の健康を最適化するための量」ではないのでご注意ください。
つまり、高齢者は普通の生活を送るだけでも、もっと多くのタンパク質が必要になるわけです。

 

実際に、過去の研究でも、

 

  •  高齢者が1.2〜1.5g/kg/日ぐらいのタンパク質を摂ると筋肉量が維持される
  •  さらに、1.6g/kg/日以上だと筋肉の増加が見られる

 

という結果が複数出ております。なので、もし高齢者が本気で筋肉の維持・向上を目指すなら、1日に体重1kgあたり1.6gのタンパク質を摂るのが良さげです。つまり、体重70kgの人の場合は、1日112gのタンパク質を摂ることになるので、

 

  • 朝食に:卵2個+ヨーグルト150g+プロテイン1杯
  • 昼食に:鶏むね肉 or 魚150g+ブロッコリー100g+ゆで卵1個
  • 夕食に:豆腐や納豆を含む和食+魚100g+豆腐100g

 

みたいなメニューにすればクリアできるイメージっすね。ちなみに、私が普段ローテーションしているタンパク源を挙げておくと、こんな感じになります。

 

食品目安量タンパク質量(g)
鶏むね肉(皮なし)100g約22〜24g
卵(全卵)1個約6g
鮭の切り身1切れ(100g)約20g
木綿豆腐150g約10g
納豆1パック(50g)約8g
牛赤身肉(ももなど)100g約20〜22g
ギリシャヨーグルト(無糖)100g約10g
プロテインパウダー1杯(20〜25g)約15〜20g

 

というわけで、今回は「シニア世代とタンパク質摂取」の話でした。私もいよいよシニアに片足を突っ込んできましたんで、今のうちから高タンパクな食生活をさらに心がけようと思った次第です。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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