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良いアイデアが出ない?それなら、20分だけ早歩きして1時間放置せよ!という研究の話

   

 

「運動すると頭がよくなる!」のはもはや常識。これまでの研究でも、有酸素運動をすると注意力や記憶力が上がるとか、気分が改善するとか、脳由来神経栄養因子がどうのこうのとか、いろんな報告が出ております。なので、拙著でも「とりあえず散歩しようぜ!」みたいなことを何度も言ってきたわけです。

 

というところで、新しい研究(R)では、「運動したら創造性は上がるのか?」という切り口の実験が出てまして、なかなか使えそうな内容になっておりました。

 

この研究はグラーツ大学などのチームによるもので、「日常生活のなかで、どんな運動をしたあとに創造性が高まるのか?」を調べてくれております。これまでにも「運動すると創造性が上がるかもよ」という研究はあったんですが、この研究では、

 

  • どれぐらいの強度がいいのか?
  • 何分ぐらい運動すればいいのか?
  • 運動した直後がいいのか?
  • それとも少し時間を置いたほうがいいのか?

 

みたいな細かい条件がよくわかってなかったんですよ。たとえば、「運動は創造性にいい!」と言われても、全力ダッシュなのか、ヨガなのか、散歩なのか、筋トレなのか、運動直後にアイデア出しをすればいいのか、1時間後がいいのか、ってところはさっぱりわからないわけです。

 

そこで研究チームは、実験室で「はい、今から20分走ってください!」みたいに指示するのではなく、参加者の日常生活をそのまま追跡したんですよ。対象になったのは健康な若者157人で、参加者には胸に小型センサーをつけてもらい、5日間にわたって体の動きを記録してもらったとのこと。このセンサーは加速度や高度の変化をかなり細かく測定できるもので、「その人がいつ、どれぐらい、どんな強度で動いていたのか」をリアルタイムで記録できるわけです。

 

でもって、さらに参加者にはスマホアプリを入れてもらい、1日に最大12回、ランダムなタイミングで創造性テストを受けるように指示。創造性テストには、主に2種類ありまして、

 

  1. 言語的創造性テスト:たとえば「レンガの変わった使い道をできるだけ考えてください」みたいな課題をやってもらう。ブログのネタ出しや企画出しに近い能力。

  2. 図形的創造性テスト:不完全な形を見て、それをもとにオリジナルの絵を完成させるような課題。参加者はスマホに表示された課題に対して、60秒以内にアイデアや絵を入力する。その後、提出された回答を第三者が評価し、「どれぐらい独創的か?」を採点する。

 

みたいになります。つまり、この研究では、日常生活で実際に体を動かしたあと、どのタイミングでアイデアが出やすくなるのか?をかなり細かく追いかけたわけっすね。

 

で、結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 10〜25分ぐらいの中強度運動をしたあと、約60〜70分後に言語的創造性が高まりやすくなる!

 

って結果だったそうな。この研究でいう中強度運動ってのは、

 

  • 早歩き
  • 軽めのスポーツ
  • 少し息が上がる家事
  • そこそこテンポのいい移動

 

ぐらいの活動でして、「ゼエゼエするほどではないけど、ちゃんと体を動かしている感じがある」レベルの運動だと言えましょう。

 

ここで面白いのは、運動直後じゃなくて、1時間ぐらい経ってから創造性が上がっていたところっすね。これはかなり実用的な発見でして、たとえば、

 

  • 10時から企画会議があるなら、9時前に20分歩く
  • 午後にブログを書くなら、昼食後に軽く散歩しておく
  • 原稿のアイデア出しをする1時間前に、早歩きで買い物に行く
  • 仕事前に20分だけ遠回りして歩く

 

みたいに使ってみるといいんじゃないかと。おそらく、運動直後はまだ呼吸が乱れていたり、汗をかいていたりするので、落ち着いて言葉を組み立てるには少し早いんだけど、そこから1時間ぐらい経つと、脳だけがほどよく活性化している状態になるんでしょうな。

 

研究チームも、この「遅れて効く」現象について、運動後に体が回復する時間が必要なのではないかと考えてまして、つまり、運動そのものが直接アイデアを出すというより、

 

  • 運動 → 回復 → 脳がちょうどよい状態になる

 

ってのが大きな原因なんじゃないかってことですね。

 

で、ここで注意しておきたいのが、軽すぎる運動では逆の傾向が出たところです。このデータだと、5〜25分ぐらいの軽い身体活動をしたあとだと、逆に言語的創造性が下がる傾向が見られた。特に、軽い活動から75分ぐらい経ったタイミングで、創造性が落ちやすかったそうで、これも面白いもんですな。

 

軽い身体活動ってのは、家の中をゆっくり歩くとか、ちょっとした移動をするとか、それぐらいの動きです。創造性を高めたいなら、ゆるすぎる動きだと刺激が足りないかもしれないですねぇ。アイデア出しを狙うなら、ちょっと息が弾むぐらいのテンポが必要なんでしょうな。

 

さらにこの研究では、「激しい運動は、創造性との明確な関係は見られなかった」とも報告しております。たとえば、ランニング、サイクリング、水泳のような高強度の活動は、「アイデアが増える」とも「減る」とも言えないってことですね。これも個人的には納得できる話で、強度が高すぎる運動は体にとってはけっこうなストレスなんで、脳が覚醒しすぎちゃう可能性があるんでしょう。

 

ってことで話をまとめると、

 

  • 座りっぱなし:普通すぎて変化なし
  • 軽すぎる活動:刺激不足か、むしろ創造性低下
  • 中強度運動:1時間後に言語的創造性アップ
  • 激しい運動:効果は不明瞭

 

みたいな感じになります。なので、今回の結果を見る限り、

 

  • 記事のタイトルを考える
  • 企画を出す
  • 比喩を考える
  • 商品の使い道を考える
  • 文章の切り口を探す
  • 問題解決の選択肢を増やす

 

みたいな作業が多い人は、ちょっとキツめの運動をして75分ぐらい過ごしてみるといいかもしれません。あくまで観察研究なので「中強度運動が創造性を直接高めた!」とまでは言い切れないものの、現時点では「20分の早歩きは、1時間後の言語的創造性を高めるかもしれない。少なくとも試す価値はかなりある」ぐらいに受け取っておくといいんじゃないでしょうか。

 

私がこのデータを実践してみるとするならば、

 

  1. まず、アイデアを出したい作業の60〜70分前に、10〜25分ほど中強度の運動をする(早歩きとか)。目安としては、会話はできるけど、少し息が弾む、終わったあとに疲労困憊しないぐらいのレベル。

  2. その後、すぐにアイデア出しを始めるのではなく、シャワーを浴びる、コーヒーを飲む、軽くメモを整理する、単純作業をするなどして、体が落ち着くのを待つ。

  3. 1時間が過ぎたら、アイデア出しの作業をする。

 

みたいにやってみますかねぇ。創造性アップと同時に心肺機能も鍛えられて、まことによろしいのではないでしょうか。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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