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運動前に“脳トレ”をするとパフォーマンスが上がるかもだぞ!という話

 
 

「運動前にはウォームアップをしましょう!」ってのは常識中の常識。ウォームアップをすれば、筋肉が温まって血流が良くなるし、そのおかげで関節の動きがスムーズになったり、神経の伝達が速くなったりしますんで、まあ当然のアドバイスでしょう。

 

そこで新しい研究(R)では、「筋肉だけじゃなくて、脳もウォームアップしたほうがパフォーマンスが上がるんじゃないの?」って問題を調べてくれていて、なかなか面白かったです。

 

これはバーミンガム大学などの研究で、25人の素人ランナーが対象。5kmの自己ベストは平均23分31秒ぐらいで、週に約32km走っている人たちを集めたんだそうな。つまり、完全な初心者ってわけではなく、「そこそこ走れる一般ランナー」ぐらいのイメージっすね。

 

実験では、みんなに1.6kmのタイムトライアルを3回ほどやってもらったんですが、ここでウォームアップの内容を変えております。

 

  • 通常のウォームアップグループ:1200mのジョグ、100mの流しを4本、ランジやハイニーなどのドリルをする。
  • 脳もウォームアップするグループ:上記の通常ウォームアップに加えて、スマホアプリを使った脳トレを実施。脳トレの内容は、タスク切り替え、記憶の更新、反応抑制、認知的干渉、意思決定などが採用されてまして、ざっくり言えば「頭をちょっと使うミニゲーム」みたいなもの。

 

こんな感じで、普通のウォームアップに加えて、脳のウォームアップまでやってもらったらどうなるかを調べたわけっすね。

 

すると、この結果がなかなかすごくて、

 

  • 脳のウォームアップをしたランナーは、通常ウォームアップだけをしたときと比べて、簡単な認知課題では、1.6キロ走のタイムが8秒速くなった!
  • 難しめの認知課題をやった時は、さらにタイムが改善し、11秒も速くなった
  • タイムの改善率はだいたい2.0〜2.8%で、主観的なキツさも低下し、平均心拍数も7〜8拍ほど低下した
  • ついでに「今から走れるぞ!」という準備感もアップした

 

という感じだったらしいんですな。1.6キロ走が8〜11秒の改善ってのは、ランナーからするとかなり大きい差でして、高級シューズやサプリにお金をかけても、ここまでハッキリ変わるケースはないですからね。また、私のような「ゆるランナー」にとっては、主観的なキツさと平均心拍数の低下がありがたいとこっすね。ここらへんは運動のモチベーションにつながるところなんで。

 

とはいえ、この手の「ちょっとした介入でパフォーマンスが激変!」系の研究は、偶然や期待効果がまぎれ込みやすいんで、個人的にはちょっと注意したいとこではあります。要するに、研究者がいろんな指標を測っているうちに、たまたま都合のいい結果が出ちゃったりとか、参加者が「これは効きそう!」と思っただけでパフォーマンスが上がっちゃったりとか、そういう問題が起きるってことですね。実際、今回の研究では、脳トレが「簡単」でも「難しめ」でもほぼ同じような効果が出てまして、そう考えると、結局は「自分はちゃんと準備できた!」という感覚が一番効いてるのかも?って気もしてますんで。

 

まぁ、それでも個人的には、運動の前に脳のウォームアップをするのはアリだと思ってまして、というのもウォームアップの役割ってのは「筋肉を温めること」だけではありませんで、

 

  • 「今から本番に入るぞ!」って指令を脳に与える

 

ってのも重要だからです。ウォームアップってのは、物理的な効果だけでなく、「よし、始めるぞ」というメンタルの切り替えスイッチとしても機能してるんですよね。今回の実験で使われた脳のウォームアップも、おそらくその一種として効果が出たんじゃないかなーと思ってまして、

 

  1. 脳を軽く使うことで注意が現在に向き、これからの運動に意識が集まり、「だるいなぁ」「今日は走りたくないなぁ」みたいな雑念が減った。
  2. その結果、主観的なキツさや心拍数まで下がった。

 

みたいなステップで運動のパフォーマンスが上がったんだろう、と。

 

なので、この実験を現実に落とし込むのであれば、

 

  • 運動の前に、その日のトレーニング目的を1行で確認する
  • 運動の前に、「今日はどこに注意してトレーニングするか」を決める
  • 運動の前に、呼吸とフォームを軽くチェックする

 

みたいに、運動前の簡単な儀式を作るぐらいで十分でしょう。ポイントは脳を疲れさせるほどはやらないことで、長時間の認知課題は、むしろメンタル疲労を起こして持久力を下げる可能性があるんで注意したいっすね。今回の研究でも、認知課題は短時間だからこそ「プライミング」として働いたんだと思われますんで。

 

ってことで、いったん話をまとめておくと、

 

  • 運動前には、筋肉の準備だけではなく、脳に「今から動くぞ」と教えてやるのも大事だよー

 

って感じになります。まぁ、スマホをダラダラ見た後でランニングをするよりは、軽い認知タスクで脳を運動モードに切り替えたほうが、そりゃパフォーマンスは上がりそうですからねぇ。というわけで、次に走る前は、脳にも軽く準備運動をさせてみるとよさそうであります。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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