体内のプラスチック化学物質を減らす、効果の高い対策を調べた研究の話
プラスチック製品は体に悪い!みたいな話を、ここ数年でずいぶん耳にするようになったわけです。ペットボトルは避けよう、食品はガラス容器に入れよう、ラップよりシリコンふたを使おう、化粧品の容器も気にしよう……みたいな話ですね。
確かに、プラスチック由来の化学物質が、健康に悪影響を及ぼす可能性は以前から指摘されているんですが、とはいえ「実際にどこまでやれば、体内に入る化学物質は減るのか?」となると、意外にはっきりした答えはなかったのが実情だったりします。プラスチック由来の化学物質ってのは、食品包装だけでなく、調理器具、日用品、建材、ほこりなどにも潜んでますんで、ひとつだけ対策しても意味がない可能性があるんですよね。困ったもんですねぇ。
ということで、ここで参考にしたいのが、2026年に出たPERTH Trialであります。この研究は、「プラスチックを減らすための対策は、どれがいちばん効率がいいのか?」って問題を調べたもので、平均48歳の男女60名を、以下の5グループに分けたんですよ。
- 食品がプラスチックに触れないようにする
- 食事対策に加え、プラスチック製の調理器具・台所用品も使わない
- プラスチック容器に入った歯磨き粉、シャンプー、ローションなどを避ける
- 食事・台所・パーソナルケアを全部まとめて対策する
- いつも通り生活する
で、7日後に尿を調べて、ビスフェノール類やフタル酸エステル類の量がどう変わったかを確認したわけです。
その結果、なにがわかったかと言いますと、
- 食品から体内に入り込んでくるプラスチックを減らすようにしたグループは、BPAやBPSといったビスフェノール類が減少した。
- フタル酸エステル類の代謝物であるMnBPについては、どの対策グループでも対照群より低い値になった。
って感じだったそうな。ということで、研究チームは「プラスチック対策を全部完璧にやらなくても、とくに食品まわりを変えれば、体内に入る化学物質の一部は減らせそう!」みたいに結論づけておられます。
ちなみに、ビスフェノールA(BPA)は、かつてプラスチック容器、缶詰の内側のコーティング、レシートなどに幅広く使われていた物質です。近年は「BPAフリー」商品も増えましたが、その代替として使われるBPSなども、健康への影響が完全に片づいたわけではなかったりするんですな。
実際、過去の実験では、缶詰スープを食べると尿中BPAが大きく増えたり、缶詰の肉・コーン・ツナを食べた場合に、同じ生鮮食品を食べた場合よりBPAが増えたりしてますからね。今回の試験でも、食事を変えたグループでビスフェノール類が下がったわけで、ここは「そりゃそうでしょうなー」ってとこでしょう。
なので、現実的に対策をするなら、優先順位はこんな感じでしょうか。
- 飲み物は、使い捨てペットボトルより水筒やガラス容器を増やす
- プラスチック容器のまま電子レンジで加熱しない
- 熱い料理や油っぽい料理を、長時間プラスチック容器に入れっぱなしにしない
- 缶詰・レトルト・加工食品に極端に依存しない
- 保存にはガラス、陶器、ステンレスを使える範囲で増やす
当然ながら、「家中のプラスチックを捨てろ!」みたいに極端な話ではございません。そんなことをやると逆にストレスになりますからね。
ただし、「熱」「油」「長時間の接触」だけ少し気にするぐらいなら、コストに見合う対策になるんじゃないかと。
一方で、もうちょい困ってしまうのが、フタル酸エステル類の問題であります。これらはプラスチックを柔らかくするためなどに使われる化学物質で、食品包装だけでなく、化粧品、香料、建材、床材、ほこりなど、いろんな場所から入り得るんですよ。
実際、今回の研究でも、いくつかのフタル酸エステル代謝物が減ったものの、どうもデータを見てると「たまたま差がついたんじゃないかなー」って気がするんですよね。過去の研究でも、プラスチック容器を避けたのにフタル酸エステル類が下がらなかったり、逆に上がったりした例がありますからね。なので、フタル酸エステル類は、家庭内のプラスチックだけを減らせば解決するほど単純ではないと考えておいたほうがいいでしょうな。これも難しいですなぁ。
あと、もうひとつ大事な注意点としては、今回わかったのは、あくまでプラスチック対策によって尿中の化学物質が減る可能性であって、病気が減ったとか、寿命が延びたとか、血糖値が改善したとかまで示したわけじゃないってところです。一応、現時点では、BPAやフタル酸エステル類の濃度が高い人ほど、糖尿病、肥満、高血圧、インスリン抵抗性などが多いってデータはあるんだけど、その多くは観察研究でしかないですからねぇ。ここはまだ判断がつきづらいとこなんで、そこまで体内のプラスチックを恐れすぎるのも厳禁であります。いまんところは、「完全に無害と断言できる物質ではなさそう」ぐらいに考えといてください。
とりあえず、今回の研究から得られる教訓としては、「とりあえず影響が大きそうなとこだけ対策しておけば?」ぐらいの感じでしょう。個人的には、
- 「プラスチック容器の加熱を減らす」
- 「熱いもの・油っぽいものは、できる範囲でガラスや陶器へ」
- 「加工食品や缶詰を食事の中心にしすぎない」
ぐらいで十分ではないかと思ったりしましたかねぇ。



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