人生の成功に欠かせないセルフコントロール能力は「あれ」で低下する!という意外な実験
「人生の成功にはセルフコントロール能力が必要だよー」って話を過去に何度も書いております。目の前の欲望に打ち勝つ能力が高い人ほど人生の満足感は高いし、病気にもかかりにくいし、年収も高いしで、良いことだらけらしいんですな。
ってことで、なにかに成功したけりゃセルフコントロールの向上を目指すのが最適解なんですが、新しいデータ(R)は「意外なことでヒトは欲望に弱くなるから気をつけや!」って結論になってて参考になります。
これはテキサス・クリスチャン大学の研究で、159人の学生が対象。どんな実験だったかと言いますと、
- みんなに「2日間だけ急激な炎症を起こしそうなものをやめてください!」と指示
- 特定のテスト(Delaying Gratification Inventoryとか)で全員のセルフコントロール能力を判断する
- みんなの血液を採取して、サイトカインなどで炎症レベルをチェック
- すべてのデータを比べる
みたいになってます。このデザインを見ればお気づきのとおり、研究チームは「身体の炎症ってセルフコントロール能力と結びついてるんじゃないの?」と推測したわけですね。「炎症?なにそれ?」という方は、「体内に火事を起こして、あらゆる不調を引き起こす「慢性炎症」の話」や「100歳以上の老人が世界で最も多い島 カギは「体内の炎症」にあった」などをどーぞ。
さて、これで何がわかったかと言いますと、
- 体内の炎症レベルが高い人ほど……
- 衝動的にものごとを判断する!
- いまの喜びだけに意識が向いてる!
- 喜びを遅らせるのがニガテ!
だったそうな。つまり、体内が炎症しているとセルフコントロールが効かなくなるのではないか、と。おもしろいっすねぇ。
もっとも、ここで「セルフコントロール能力がない人ほど炎症を起こすものに手を出しやすいだけでは?」と思った方もおりましょう。この実験デザインだと因果関係はよくわかりませんからねぇ。
ってことで研究チームは、被験者が日常的に行ってるダメな行動(タバコや酒)の量で、どれぐらい体内の炎症レベルが予想できるのか?って観点からも調査を行っております。すると、その結果は、
- 普段のダメな行動の量では炎症レベルを予測できない
って結果だったんですよ。つまり、炎症がセルフコントロール能力を下げる!って可能性が強くなったわけですな。
なんだか驚きの結果のようですが、いちおうこの研究では若くて健康な男女だけを集めてますし、「48時間は酒もタバコも止めてね!」と伝えておいたので、「炎症でセルフコントロール能力がなくなるのかどうか?」って問題について、ある程度までは迫れるはずなんですよね。
研究チームいわく、
今回の結果は、免疫システムの活動が意志決定を左右している事実を示唆する。(中略)身体の内側のコンディションが意志決定と行動をコントロールしているのは、先行研究でも示されている。
とのこと。もちろん、炎症とセルフコントロールの可能性はまだよくわからんところが多いのですが、いちおう進化論的には以下のような推測ができましょう。
- 原始時代において、炎症は大ピンチのサインだった(感染症とか大ケガとか)
- 炎症をほっといたら死ぬかもしれないので、長期的な判断よりも短い判断が優先される
- 目の前の誘惑に弱くなる!
こんなメカニズムが働いて、炎症がセルフコントロールの低下を引き起こすのでは?と思われる次第です。とりあえず、セルフコントロール能力を発揮したい人は、体内の炎症コントロールもしといたほうがいいですよーってことで。