脳を暴走させて肥満の原因になる「うますぎ食品」ができあがる条件とは?
ここのところ肥満研究の世界「Hyper-Palatable(ハイパー・パラタブル)」って言葉をよく耳にします。定訳があるかどうかは知らないんですが、雑に意訳すると「うますぎる食べ物」のことで、ポテチとかスナック菓子みたいについつい食べすぎちゃう食品全般を指してます。
このタイプの食品は脳への刺激が大きいんで、いまいち満腹中枢が働かず、食べ過ぎにつながっちゃうんですよ。いわば脳の報酬系を暴走させる食品ってとこですね。
ただ、このハイパー・パラタブルな食品ってのはそこまでハッキリした定義があるわけでもなくて、お菓子やジャンクフードみたいに、つい食べ過ぎてしまう食品をぼんやりと指し示すことが多め。「この成分がこれぐらい入ってるからヤバいのだ!」といった明確な基準はなかったんですよ。
が、カンザス大学などのチームが、近ごろ「脳が暴走する食品の定義を決めてみよう!」って趣旨の研究(R)をしてくれてまして、これがなかなか有用でした。
どのような調査だったのかと言いますと、
- アメリカの食品データベース(FNDDS)から7757種類の食品をピックアップ
- それぞれが持つ特徴を抜き出す(「甘い」とか「塩気がある」とか)
- 専用のソフトで各食品の栄養をチェック
- すべてひっくるめて、うますぎる食品の特徴を割り出す
みたいになってます。ハイパー・パラタブルの定義をはっきりさせようとした調査って(多分)初めてのはずなんで、実によろしいなーと思うわけです。
それで、どんなことがわかったかと言いますと、まずチームはハイパー・パラタブルな食品を3つに分類してます。
- 脂肪+ナトリウム系:脂肪のカロリーが全体の25%より多い + ナトリウムが0.30%以上(重量比)。ベーコンとかサラミとか
- 脂肪+糖質系:>脂肪のカロリーが全体の20%より多い + 糖質のカロリーが全体の20%より多い。ケーキみたいな甘いお菓子全般
- 糖質+ナトリウム系:糖質のカロリーが全体の40%より多い + ナトリウムが0.20%以上(重量比)。ポテトチップスみたいなスナック菓子系
というわけで、わりとハッキリした数字が出ましたね。過去の研究を見ても、だいたいは脂肪や糖を2種類以上組み合わせると脳が興奮しやすいって結果(R)が出てるんで、今回の結論にも納得と申しますか。昔書いた「中毒になりやすい食品」の内容にもかぶってますね。
また、その他の知見としては、
- 「ハイパー・パラタブル」と判断された食品のうち、もっとも多かったのは「脂肪+ナトリウム系」だった
- 「ハイパー・パラタブル」と判断された食品でも、5%は健康的な表記が付いていた(コレステロールフリーとか低カロリーとか)
みたいな話も出ておりました。アメリカのデータなんで日本だとまた割合が違いそうですが、健康なフリして実は脳の刺激が強い食品ってのは意外とありそうな気がしますね。
ちなみに、過去のハイパー・パラタブル系の研究は、脂肪と糖の組み合わせを調べたものがメインだったので、今回は「塩も大事だよ!」ってとこが強調されてるのもいい感じっすな。塩分っておいしいですからねぇ。
いちおう、この研究の注意点もならべておきますと、
- ここでいう「ハイパー・パラタブル」は固形食品に特化してるので、ジュースとかだとまた違うのかも
- 今回特定された基準が、どのような組み合わせをした場合に食べ過ぎにつながっていくかはわからない
- ハイパー・パラタブルの基準を作る過程では、どうしてもある程度の主観性は混ざっちゃう(これはどうしようもない)
といったあたりが調査の限界になってますんでご留意ください。まぁ今回の基準をもとに「ハイパー・パラタブルな食品」を見抜くのは難しいかもしれませんが、おおまかなガイドラインとしてお使いいただければ。