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2021年5月に読んでおもしろかった4冊の本と、その他2つのエンタメ

 

月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2021年5月版です!  今月は個人的な新刊を進めてたせいで時間がなく、趣味で読んだ本は17冊ぐらいにとどまりました。当然おもしろかった本も少なくなりまして、紹介できるのは4冊ぐらいっすね。ただ、今月はその他エンタメ系をいろいろ消化しましたので、合わせて取り上げておきます。

 

 

学習する組織

 

言わずとしれた組織論の古典で、奥付を見たら14刷でした。すげー。

 

本書はMITやハーバード大学が共同で行った組織研究をもとにしていて、「いかにチームのメンバーが自発的に学習して自ら刷新していく組織を作るにはどうすればいいか?」みたいな話をまとめてくれてます。

 

私は個人経営者なので組織運営はあんま関係ないんですけど、本書でベースになってる「システム思考」の話が滅法おもしろくてためになりました。要するに「目の前の問題にばっか対処しないで包括的に問題を見よう!」みたいな話っすね。

 

もちろん「システム思考」って実践はめちゃくちゃ難しいので、これを読んですぐにどうこうできるわけではないものの、本書では「システム思考」ができない組織にありがちな現象が手際よく列挙されていて「うわー、ある!」の連発でした。この失敗例を知るだけでも価値があるかなーと。

 

 

 

脳はこうして学ぶ──学習の神経科学と教育の未来

 

意識と脳」がとてもおもしろかったスタニスラス・ドゥアンヌさんの新刊。最先端の神経科学をベースに「脳の能力を引き出すには?」ってポイントを教えてくれていて、非常に有用でした。すごーく雑にまとめちゃうと、

 

  • アクティブに楽しく学ぼうぜ!
  • 失敗を大事にしようぜ!

 

ってのが大きなポイントで、おそらく学習法にくわしい方であれば目新しい結論ではないでしょうが、とにかく「失敗から得られるフィードバックがいかに重要なのか」ってのが腑に落ちるので、ミスや失敗への恐怖が邪魔して学習をさまたげられている人には勇気づけられるんじゃないでしょうか。

 

 

 

患者の話は医師にどう聞こえるのか

病院にいった後で「薬はもらったけど、なんか話を聞いてもらった気がしない……」みたいな気分になったことはないでしょうか。私はよくあります(笑

 

本書は、この問題を解決するにはどうすればいいの?を考えた一冊で、医者と患者のコミュニケーションに関する先行研究をどどっとまとめたものになっております。その内容は膨大で、医者と患者のコミュニケーションを調べたデータってこんなにあるんだなぁ…って気分になりました。

 

その多くには人間のバグがからんでいて、たとえば「専門家ほど『これぐらいの用語はみんな知ってるだろう』と思いがちで、そのせいで患者にわけがわからない会話になっちゃうんだよ!みたいな事例が紹介されております。これはあるよなーって感じですね。

 

ただしお医者さん側も大変で、そもそも現代の病院は診察時間が短く、次々と患者をさばいていかねばならないがゆえに脳がマルチタスク状態なり、おのずとコミュニケーションに割くリソースが無くなっちゃうんだ、と。これもあるでしょうなぁ。

 

というわけで、医者と患者の関係のみならず、日常的な会話力の改善にも使える知見が満載で、誰かとのコミュニケーションにお悩みの方もどーぞ。

 

 

 

夢みる部屋

みんな大好きデイヴィッド・リンチの自伝。4950円で704ページもある大著ですが、「イレイザーヘッド」大好きマンとしては読むしかないでしょう。

 

あんなダークな映画を作ってる癖にデイヴィッド・リンチが明るい善人だって話は聞いたことがありましたが、本書でスタッフや役者陣が語るリンチ像はそれ以上に陽気で折り目正しくてビビりますね。個人的には、リンチ先生の「よくわからなくても俺が好きだと思ったことはなんでもやったるで!」って姿勢と、「映画は生物だから偶然をガンガン取り込むで!」って考え方が非常に好ましく、元気が出る一冊でありました。私にとっては自己啓発書っすね(笑

 

 

 

ブレイキングバッド

 

こちらは本ではなくて海外ドラマです。3ヶ月ぐらいかけてネットフリックスで見終わりました。「ドラマ史上最高傑作」と呼ばれる世評のとおりのすばらしさで、全62話があっという間でしたね。

 

最初のうちは癌にかかった中年男が覚醒剤作りに手を染めるダークコメディなんですが、シーズン3あたりから人間の業を描くハードドラマにシフトして、最終的には欲望と復讐が乱れ飛ぶシェイクスピア悲劇みたいになり、しかもその展開が序盤から周到に計画されていたことに気づかされるという。作中でも出てくる「スカーフェイス」や「ゴッドファーザー」の系譜に連なる物語で、個人的には両作を超える感動がありましたね。

 

 

 

バカリズムライブ「○○( まるまる)」

 

なんだかんだでバカリズムさんのライブは毎年見に行っております。今年は直前で無観客の配信ライブに切り替わりまして、泣く泣くチケットを買い直しました。

 

舞台の内容はあいかわらず凄まじく、決まったネタのフォーマットを流用せず、笑いのパターンをゼロから発明していくストロングスタイルを貫いてて面白すぎ。あんだけテレビに出てて、その上で新発明をくり返していく作業の膨大さを思うだけで恐怖に襲われますね。

 

ちなみに、メディア業界では「俺も忙しいけどバカリズムに比べれば!」と自分を鼓舞する人が多いそうで、私も今後はそうしようと思いました(笑

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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