共感覚のトレーニングをするとIQがグンと上がるかもしれないぞーという話
共感覚ってあるじゃないですか。特定の感覚に別の感覚がくっついてくる現象で、たとえば、
- 「b」という文字を見ると、同時に青色に見える!
- 「3」という文字を見ると、なんだか優しい性格に思える!
- 「G」という文字を見ると、おいしい味わいが口の中に広がる!
- 「ド」の音を聞くと、赤い色が見える!
みたいな感じです。推定では、23人に1人の割合で共感覚を持っているとされてまして、私としては「違う世界が見えてていいなー」とか思うわけです(相応にめんどいこともあるんでしょうが)。
で、この共感覚については、「先天的なものなので、後から身につけるのは無理!」と言われてきたんですよ。たとえば、ChatGPTに「共感覚になる方法を教えて!」と尋ねたら、こんな答えが返ってきました。
共感覚者になることは、意識的な努力によって訓練したり身につけたりできるものではない。共感覚は一般的に、人が生まれつき持っている神経学的な状態と考えられているからだ。訓練や練習によって開発できる技術や能力ではないのだ。
あくまで生まれつきの脳の問題なので、私のような非共感覚者があとから能力を育てるのは無理だろう、と。
もっとも、実は近年では、「誰でも共感覚に近い状態は身につけられる!」ってデータが増えてきてまして、それどころか、
- 共感覚のトレーニングをするとIQも上がるんじゃないの?
って話(R)すら出てきているんですよ。おもしろいっすねぇ。
ここで引用するのはサセックス大学などが行った試験で、「誰でも共感覚者と同じような経験ができるようになるの?」ってのを確かめたものです。研究チームは9週間の共感覚トレーニングコースを考案し、これを14人の参加者に対して9週間ほど実践してもらったんだそうな。
すると、トレーニングを終えたグループには、明確な違いが見られまして、
- みんな共感覚が身について、たとえば「街の看板を見たら、文字が緑に見えた!」みたいな状態になった。
- ついでに、なぜかIQが平均12ポイント上昇した。
だったそうです。ちゃんと共感覚が発達しただけでなく、よくわからんけどIQまで上がったみたいっすね。うーん、不思議。
ここでおもしろいのは、トレーニングの前からすでにIQが高かった人でも、共感覚トレーニングのおかげでIQが発達したところです。通常、トレーニングによってIQが大幅に向上するのって、もとのスコアが低い人に限られるものなんですよ。
ところが、この研究では、たいていの参加者のIQはトレーニング前から高く、それでも平均IQは116から128に上昇したというんですな(100が平均)。IQ128ってなかなかのもんですよね。
では、ここで行われたトレーニングにはいくつかのパターンがあるんですが、せんじつめていえば、
- 特定の記号と色を関連づけてひたすら記憶する!
みたいになります。たとえば、「あ=赤」「い=黄」「う=青」みたいに記号と色の関係をあらかじめ決めておいたうえで、これを↓のストループテストのようなクイズ形式にして、頭の中にたたき込んでいくわけです。
「自分で決めた色でいいの?」と思う人もいそうですが、過去の実験によれば、実は共感覚者の人たちが特定の色を見るのも、幼い頃からの学習の結果だと考えられてるんですよ。
どういうことかと言うと、たとえば、欧米で調べると、たいていの共感覚者は「A=赤」「B=青」「C=黄」みたいに、見える色が共通してくるんですね。具体的には、以下の画像のようにアルファベットの色を認識することが多いんだそうな。
しかし、これは別に「すべての共感覚者は生まれつきAを赤と見る」って話ではなく、欧米では子どもの頃に「色つきアルファベット」の玩具(↓みたいなやつ)で遊ぶことが多く、これが脳にすり込まれた結果として、記号と特定の色が結びつくんですよ。
ってことなんで、私たち一般人も、「あ=赤なのだ! い=黄なのだ!」と自分で決めたうえで、それをくり返し脳にたたき込めば、共感覚に近い感覚は得られる可能性が高いわけですね。
ただし、この研究には注意点もありまして、
- IQが上がった理由が、共感覚トレーニングのおかげなのか、それとも単に脳の新しい使い方をしたせいで、ワーキングメモリが改善したからなのかはよくわからない。
- トレーニングから3ヵ月後に参加者を再テストしたところ、「文字に色が見える」という能力はほとんど失われていたため、継続的にトレーニングを続けないと、一般人が共感覚を維持するのは無理なのかもしれない。
ってあたりですね。IQが向上した理由はわからないし、共感覚のない人が本物の共感覚者に生まれ変わったわけでもないので、そのへんは覚えておいてくださいませ。
とはいえ、このような実験を見ると、「トレーニングで世界を違ったふうに見られるのだ!」って気になるので、私にとってはテンションが上がる内容でした。IQの向上とかはどうでもいいから、やってみようかしら。