筋トレは何回でやめるべき?筋肥大と筋力を伸ばす「追い込み方」の違いを調べた研究の話
筋トレクラスタでは、昔から「筋肉を増やしたいなら、限界まで追い込め!」みたいなアドバイスをよく耳にするわけです。
確かに、余裕たっぷりのところで運動をやめていたら、筋肉に十分な刺激が入らないのは当然の話。しかし、毎セット限界までくり返せば疲労も大きくなるので、次のトレーニングに悪影響が出ちゃうので、こことのバランスが大事になるんですよね。
では、筋力と筋肉量を効率よく増やすには、どのあたりでセットを終えるのがいいのか? ってとこが気になりますが、この問題について、新しい研究(R)がかなり細かい実験を行っていて参考になりました。細かいところを見る前に、まず結論をまとめておくと、
筋肉を増やすなら限界に近いところまで行い、最大筋力を伸ばすなら少し余裕を残したほうがよさそう!
みたいな感じになっております。筋トレは、目的によって「追い込み具合」を変えたほうがいいってことですな。
この実験に参加したのは、筋トレ経験がある平均24歳の男性158人。全員を12グループに分け、週2回のベンチプレスを8週間続けてもらったんだそうな。それぞれのセッションでは3セットを行い、その際に2つのパターンを組み合わせております。
まず、使用する重量は以下の3段階を使ったとのこと。
- 軽い重量:1RMの40~55%
- 中程度の重量:1RMの55~70%
- 重い重量:1RMの70~85%
1RMってのは、「正しいフォームで1回だけ持ち上げられる最大重量」のことであります。ベンチプレスの1RMが100kgなら、70~85%は70~85kgぐらいっすね。
これに加えて、研究では「速度低下率」も変えております。こいつが何かと言いますと、筋トレをやってると、セットの前半はバーベルをスムーズに持ち上げられるものの、疲れてくると少しずつ動きが遅くなるじゃないですか。この速度の低下を測り、一定の割合まで落ちたところでセットを終了したってことですな。
実験で使われたのは、次の4条件であります。
- 速度低下率0%:1セットにつき1回だけ
- 速度低下率15%:速度が15%落ちたら終了
- 速度低下率25%:速度が25%落ちたら終了
- 速度低下率50%:速度が50%落ちたら終了
たとえば、最初の反復でバーベルを毎秒0.65mの速度で持ち上げられたとしましょう。ここで速度の低下率が25%なら、持ち上げ速度が毎秒約0.49mまで落ちたところでセットを終えるわけです。
当然ながら、速度の低下率が大きいほど反復回数が増え、筋肉の限界に近づくじゃないですか。反対に、速度があまり落ちないうちにやめれば、体力を残したままセットを終えることになっちゃいますからね。
でもって、8週間後の結果を見てみると、こんな感じになりました。
- 重量については、1RMの70~85%を使ったグループが、ベンチプレスの最大筋力、大胸筋の断面積、1RMの70%で行うベンチプレスの最大反復回数のいずれでも、もっとも大きな改善を示していた。
ということで、今回の条件では、筋力だけでなく、筋肉量と筋持久力についても重い重量が優勢だったわけですな。
もっとも、個人的には、このデータを見て「筋肉を増やすには重い重量でなければならない!」と言うのは無理だと思ってまして、それというのも過去の研究では、軽い重量でも限界近くまで反復すれば、重い重量と同程度の筋肥大が起こるケースが確認されてますからね。なので、今回の実験では、軽い重量のグループが十分に限界へ近づけなかったため、重い重量が有利になった可能性があるんじゃないかなぁ、と。
でもって、より興味深いのが速度低下率の違いでして、
- 大胸筋のサイズがもっとも増えたのは、速度が50%低下するまで反復したグループだった。50%低下は、15%や0%よりも筋肥大に有利だった。
- 最大筋力については、速度低下率25%がバランスのよい成績を示した。少なくとも、速度低下率0%よりは明らかに優れていた。
って感じだったそうな。つまり、今回の結果を簡単にまとめれば、
- 筋肥大が目的なら、反復速度がかなり落ちるまで続けるのが吉
- 最大筋力が目的なら、速度が少し落ちたところでやめるのが吉
といったところになるんでしょうな。
この結果は、過去の研究ともおおむね一致してまして、
- 2024年のメタ分析(R)では、筋肥大については、限界に近いところまでトレーニングするほど効果が大きくなる傾向が報告されてる。
- しかし、速度低下率を調べた別のメタ分析(R)でも、筋力の向上には25%前後の速度低下が適していると結論づけられている。
といった感じなので、今回の結果にも納得っすね。
ちなみに、ここで「なぜ筋力アップでは追い込みすぎないほうがいいの?」ってとこが気になる人もいるでしょうが、これはおそらく、
- 最大筋力を伸ばすには、重い重量を高い出力で持ち上げる練習が必要。なのに、限界近くまで反復すると、セット後半では速度もフォームも崩れやすくなり、最大筋力に必要な動作から離れてしまう。
- 追い込みすぎるほど疲労が増え、回復にも時間がかかってしまう。その結果、次のトレーニングで重量が落ちたり、練習頻度を減らさざるを得なくなったりすれば、長期的な筋力アップには不利になる。
みたいなところが原因なんでしょう。要するに、筋力アップには、
疲れすぎない程度に余裕を残しつつ、十分な反復回数を確保する
という中間地点が重要らしいんですよね。
ってことで、この研究を実生活に落とし込むなら、
- 筋肥大が目的の場合は、「あと数回はできそうだけど、明らかに反復速度が落ちてきた」というところまで行うのがひとつの目安になる。
- 一方、最大筋力を優先するなら、バーベルの速度が大きく落ちたり、フォームが崩れたりする前にセットを終える。毎回限界まで追い込む必要はなく、ある程度の余裕を残した状態で、重い重量を質の高いフォームで反復したほうがよさそう。
って感じになるんでしょうな。まぁ、対象種目がベンチプレスだけなので、スクワットやデッドリフト、ダンベル種目でも同じ結果になるとは限らないし、各条件の人数もそれほど多くないので、あくまでご参考までにってとこですが。
また、一般のトレーニーは、バーベルの速度を測る専用機器なんて持ってないと思いますんで、現時点では以下のように理解しておくのが実用的でしょう。
- 筋肥大が目的なら、セット後半で反復速度が明らかに落ちるところまで行う
- 筋力が目的なら、重い重量を使いつつ、動作の質が下がる前に終了する
- 毎セット完全な限界まで行う必要はないが、まったく疲れない設定では、トレーニング量が不足しやすいので注意
- 軽い重量で筋肥大を狙う場合は、重い重量より限界に近づく必要がある
そんなわけで、筋肉を大きくしたいなら限界に近づき、最大筋力を伸ばしたいなら少し余裕を残す。この区別だけでも、トレーニングの効率はかなり変わるのではないでしょうかー。



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