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脳を守るために緑茶を飲むべきなんじゃないか?説を調べた研究の話

 

肥満が健康によろしくない!ってのは皆さまご存じのとおりで、体脂肪が増えすぎると、心臓や血管だけでなく、脳にも悪影響が出ることが多いんですよ。

 

とくに影響を受けやすいのが、「海馬」と呼ばれる脳の部位。ここは記憶の形成や学習に関わるエリアでして、肥満や代謝の悪化によって炎症が続くと、海馬の体積が小さくなることがあるんですな。

 

といったところで、上海中医薬大学などのチームが新たに行った研究(R)では、

 

緑茶に含まれるカテキンが、脳の萎縮や記憶力の低下を防げるかも!

 

と報告してて面白かったです。

 

で、まずはなんで肥満で脳が縮むのかってとこから申し上げておきますと、

 

  1. 体脂肪が増えすぎると、体内で弱い炎症が長引きやすくなり、あわせて「インスリン抵抗性」が起きやすくなる。

  2. インスリン抵抗性が起きたせいで、インスリン(血糖値の調整に関わる)に対して、体の細胞がうまく反応できなくなる。

  3. 脳内のインスリンは、神経細胞が生き残るのを助けたり、神経同士のつながりを保ったりする役割も持つため、こいつが上手く働かないと脳にダメージが起きる。

  4. ついでに、インスリンの働きが乱れると、「オートファジー」という仕組みにも悪影響が出現。オートファジーは、細胞のなかにたまった傷んだ部品や不要なタンパク質を分解し、再利用するシステムなので、この仕組みがうまく働かなくなると、細胞内に不要なものがたまり、神経細胞同士のつながりにもダメージが出やすくなる。

 

みたいな感じです。つまり、ざっくりまとめると、

 

  1. 肥満によって慢性的な炎症が起きる。

  2. 脳内のインスリンの働きが乱れる。

  3. オートファジーによる細胞のメンテナンスが滞る。

  4. 海馬の機能が低下し、記憶力などに影響が出る。

  5. 脳が縮む!

 

といった流れですね。

 

でもって、この問題を解決するために研究チームが注目したのが、緑茶に含まれる「エピガロカテキンガレート」、いわゆるEGCGという成分であります。ご存じのとおり、EGCGは緑茶の代表的なカテキンでして、炎症を抑えたり、細胞内の代謝に働きかけたりする可能性が示されております。なので、研究チームは、「EGCGが脳内の炎症やオートファジーに影響するなら、肥満による海馬のダメージも防げるんじゃないの?」と考えたわけですね。

 

研究にあたり、まずチームは、UKバイオバンク(イギリスの大規模データベース)を使い、成人18,325人のデータを分析したんですよ。具体的には、参加者について、

 

  • BMIにもとづく体格の違い。
  • 緑茶をどれぐらい飲んでいるか。
  • MRIで測定した海馬の体積。

 

といった情報を調べたわけですね。その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

緑茶を飲まない肥満の人は、標準体重の人に比べて海馬の体積が小さかった!

 

って感じだったんだそうな。さらに、肥満の人だけに絞って見てみると、緑茶を多く飲む人ほど海馬の体積が大きい傾向もあったそうで、研究チームの考え方が正しかったような気がするわけです。

 

まぁ、データをじっくり見ると、通常の統計解析では緑茶の摂取量と海馬の体積の関係は有意じゃないんで、そこはご注意あれ。追加の統計処理では関係が見られたんだけど、これだけで「緑茶を飲めば海馬が大きくなる!」とは言えないところであります。そもそも、緑茶をよく飲む人は食生活が整っていたり、運動習慣があったりするかもしれませんしねぇ。このデータからわかるのは、あくまでも「そういう関連があるかもしれない」ぐらいっすね。

 

そこで研究チームは、続いてマウスを使ってEGCGの作用をさらに詳しく調べております。実験の流れを、ざっくり説明しておくと、

 

  1. 一部のマウスには通常の食事を与える。
  2. 別のマウスには高脂肪の食事を8週間与え、肥満の状態にする。
  3. 肥満になったマウスを2グループに分ける。
  4. 一方には高脂肪食を続け、もう一方には高脂肪食に加えてEGCGを4週間与える。

 

みたいになります。その結果、EGCGを与えなかった肥満マウスは、体重が増え、インスリン抵抗性も悪化。さらにMRIで脳を調べたところ、海馬の体積が小さくなっていたそうな。

 

ここで興味深いのは、脳全体が同じように縮んでいたわけではなく、海馬で目立った変化が見られたとこでしょう。この結果は、記憶に関わるエリアが、肥満や代謝の悪化の影響を受けやすいってことなんでしょうね。

 

一方、EGCGを与えた肥満マウスでは、

 

  • 体重が、EGCGを与えなかった肥満マウスより少なかった。
  • インスリンの働きが改善していた。
  • 海馬の体積が、通常食のマウスと同程度に保たれていた。
  • 記憶力を調べるテストでも、通常食のマウスと同程度の成績を示した。

 

といった変化が確認されたそうで、これも面白い結果ですな。EGCGを摂取したマウスでは、記憶力の低下が見られなかったわけですね。

 

ちなみに、マウスの脳組織を調べたところ、EGCGを与えなかった肥満マウスでは、

 

  • 炎症に関わる物質が増えていた

  • 脳内のインスリンの働きが乱れていた

  • オートファジーの働きが低下していた

 

といった変化が見つかったそうで、研究チームいわく、

 

EGCGは、炎症を抑え、インスリンの働きを整え、オートファジーを再び活発にすることで、海馬を保護した可能性がある

 

と考えておられます。まぁ、EGCGを与えたマウスは体重も減ってたんで、全身の代謝が改善した結果として海馬が守られた可能性もありますが。

 

ってことで、そのまま人間に当てはめるにはまだ早い段階ながら、なかなか興味深い内容じゃないでしょうか。とりあえず、今回の知見をもとに、どんなことを実生活に取り入れればいいかと申しますと、

 

  • ふだん飲んでいる甘い飲料の一部を、無糖の緑茶に置き換えてみる

  • さらに可能性を追うなら、EGCGサプリを使う。とはいえ、まずは普通の緑茶を取り入れるだけでもOK

  • 脳を守る基本は体重と代謝の改善なので、食事と運動を優先する

 

みたいな感じでしょうね。食事や運動などの基本を整えたうえで、プラスになるかもしれない選択肢として考えれば、かなりよい習慣なんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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