このブログを検索





人は年を取るほどお金の判断がうまくなるのか?問題

  
 

年を取ると、お金の判断は慎重になるのか?」って問題を調べた研究(R)が面白かったのでメモしときます。

 

これがどういう話かと言いますと、たとえば、「今すぐ1000ドルもらうか、1年後に1500ドルもらうか?」って選択肢があったとしましょう。この時に、従来の研究では2つの考え方がありまして、

 

  1. 若者は衝動的だから「今すぐ1000ドル!」を選びやすく、年を取るほど気長に1500ドルを待てるようになるのだ!
  2. いや、高齢者は残された時間を短く感じるから、目先の利益を優先するようになり、「今すぐ1000ドル!」を選ぶのだ!

 

みたいな感じだったんですよ。これについて、過去の研究では結果がバラバラだったんですが、果たして実際はどうなのかをもうちょい細かく見てみようってのが、今回の調査のキモであります。

 

 

 

「待つ」と「賭ける」は別の能力である

で、ここでまず押さえておきたいのが、行動経済学でよく使われる「割引」って考え方です。ご存じの方も多いでしょうが、いちおう説明しておくと、

 

  1. たいていの人は、同じ金額でも受け取るまでの時間が長くなるほど、その価値を低く見積もる心理がある。たとえば、「今すぐ10万円」と「10年後に10万円」なら、たいていの人は前者を選び、これは「遅延割引」と呼ばれる。

  2. いっぽうで、「確実にもらえる4万円」と「50%の確率でもらえる10万円」のように、受け取れる確率が下がるほど価値を低く見積もる心理もある(なので、「確実にもらえる4万円」を選ぶ人が多い)。この現象は「確率割引」と呼ばれる。

 

みたいな心理のことです。つまり、私たちがお金を判断する時ってのは、

 

  • 将来の利益を待てるか?
  • 不確実な利益に賭けられるか?

 

という2つの側面があるわけですね。これは普段の生活で実感してる人も多いでしょう。

 

そこで研究チームは、20〜80歳のアメリカ人を対象に2つのオンライン実験を実施。遅延割引の実験には596人、確率割引の実験には592人が参加してもらってます。

 

参加者には、150ドル、2500ドル、3万ドルという3種類の金額を提示しまして、

 

  • 今すぐもらえる少額と、将来もらえる高額のどちらを選ぶか?
  • 確実にもらえる少額と、一定の確率でもらえる高額のどちらを選ぶか?

 

ってのを何度も判断してもらったんだそうな。待ち時間は1カ月〜10年で、賞金が当たる確率は5〜95%の範囲で設定されております。

 

 

 

年を取るほど待てるが、リスクは避けるようになる

で、分析の結果、なにがわかったのかと言いますと、

 

  • 年齢が高い人ほど、将来の大きな利益を待てる傾向があった。これは、「年を取ると残り時間を短く感じるため、目先の利益を優先するのでは?」という予想とは逆の結果で、高齢者ほど「今すぐ少額」より「あとで高額」を選びやすかったことになる。

 

  • ところが、確率がからむと話が変わり、こちらでは年齢が高い人ほど不確実な利益を低く評価し、確実な選択肢を好む傾向が確認された。

 

みたいな感じだったそうな。要するに多くの人は、年を取るほど、

 

  • 将来の利益は気長に待てる

  • 当たるかわからない賭けには慎重になる

 

という変化が起きるわけっすね。ちなみに、リスク回避の傾向は一直線に強まるわけではなく、若年期から中年期にかけて高まったあと、60歳前後からはあまり変わらなくなったらしい。

 

 

 

ただし、年齢の影響は収入によって変わる

で、ここで面白いのが、今回の研究では、上記の傾向が収入によって大きく異なってたところです。話をざっくりまとめると、

 

  • 「将来の利益を待てるか?」については、加齢による変化が見られたのは低所得層と中所得層だけだった。収入が多い人たちは、若い人も高齢者ももともと将来の利益を高く評価しており、年齢による差がほぼなかった。

 

  • リスク判断でも似たパターンが出ており、年齢とともにリスクを避けるようになる傾向は、特に低所得層で目立っていた。これに対して、高所得層のリスク許容度は、生涯を通じてわりと安定していた。

 

ってことでして、簡単に言えば、年齢によるお金の判断の変化は、低所得層ほど大きく、高所得層ほど小さいってことですね。

 

この現象を、研究チームは「バッファリング仮説」で説明してまして、こいつがどんなものかと言いますと、

 

  1. お金がない状態は大きなストレスになる。若いうちは、そのストレスによって「将来より今」「不確実な大金より確実な少額」に気持ちが引っ張られやすい。
  2. しかし、人は一般的に年齢とともに感情が安定するため、経済的な不足によるストレスにも対処しやすくなる。その結果、低所得層では年齢による判断の差が大きくなる。

 

みたいな考え方であります。いっぽう、収入がある人には、そもそも強い経済的ストレスが少ないので、若いころから落ち着いて将来を考えられ、年齢による感情の安定化が起きても、判断が大きく変わる余地が少ないわけですな。

 

まぁ、あくまで横断研究なんで、本当に加齢によって判断が変わったのか、それとも育った時代の違いが反映されただけなのかはわからないですが、年齢がお金の判断におよぼす影響は、判断の種類と経済状況によって変わるんだろうなーってとこは押さえておきたいっすね。

 


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item



search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

Popular Posts

INSTAGRAM