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音楽のトレーニングで子どもの脳がブーストするんじゃないか説──音楽が子どもの語彙力と教育格差を埋める可能性

 
 

「楽器は脳トレになる!」みたいな話は昔からありまして、このブログでも過去にいろいろ取り上げております。

 

 

まだどこまでの効果量があるかはよくわからないものの、とにかく楽器が脳に良い刺激を与えてくれてるってのは間違いなさそうなんですよ。

 

でもって、新しい研究(R)では、「音楽は子どもの脳に良いのか?」ってのを調べてくれてまして、これが実に面白い内容でした。というのも、この研究の結論ってのが、

 

  • 楽器を習っている子は語彙力が大きく伸びやすく、その効果は“貧困による教育格差”すらも埋めるかもしれない!


って感じだったんですよ。こいつはちょっとすごいですな。

 

この研究は南カリフォルニア大学のアサル・ハビビ先生が行ったもので、アメリカの9〜10歳の子どもたち5,000人以上を集めて、以下のグループにわけたんですね。

 

  • 音楽トレーニングを2年間継続した子(ミュージシャン群)

  • 運動(サッカー)をした子

  • どちらの活動もしていない子

 

そのうえで、全員に対して実行機能(ワーキングメモリ、抑制制御など)や語彙力、読解力をテストして、すべての変化を2年間にわたって追跡したところ、結果はすでに述べたとおり「語彙力・読解力・処理速度においてミュージシャン群が加速度的な成長を見せ、非ミュージシャンとの差が年々広がっていった」みたいな感じだったんですな。うーん、おもしろい違いが出たもんですね。

 

とはいえ、この研究デザインだけを見てしまうと、「音楽で成績が良くなったんじゃなくて、もともと賢い子が音楽をやってただけでは?」って疑念がわく人もいるでしょう。観察研究だと、どうしてもこの問題はつきまといますからね。

 

で、この疑念は確かにもっともでして、データを見てみると、調査をスタートした時点でミュージシャン群はすでに認知テストの成績が高いんですよね。ただし、だからといって「もともと賢い子が音楽をやってたのだ!」とは言い切れませんで、2年の経過を見ていると、やっぱ音楽をやってた子どもたちには明確な「伸び」が見られたんですよ。

 

ざっくり言うと、音楽を続けた子たちは、語彙力テスト、読解力テスト、処理速度のすべてにおいて加速度的な伸びを見せまして、「音楽をやらない子」との差が年々広がっていったみたいなんですな。中でも、特に語彙力テストの成績が上がったというから、こちらも面白いもんです。

 

しかも、さらに面白いのが、音楽のトレーニングには「社会経済的な格差を埋める効果」が見られたところであります。この研究では、子どもが住んでいる地域の経済状態をスコア化してまして、その結果がどうだったかというと、

 

  • 音楽をやっていない子の場合、貧困地域の子は語彙力の伸びが鈍化した

  • 音楽をやっている子は、地域に関係なく語彙力が大きく伸びた

 

だったんですな。つまり、音楽トレーニングってのは「教育格差のバッファ」になる可能性があるんじゃないか、と。これ、めちゃくちゃ重要な発見ですなぁ。

 

ちなみに、もうひとつ、音楽とサッカーを比較したパートも興味深いものがありまして、

 

  • 両者とも「活動的で恵まれた家庭の子が多い」という点では共通していた

  • しかし、言語系スコア(語彙・読解)に限定すると、音楽の方が明確に優れていた

 

って感じだったんだそうな。つまり、サッカーと音楽のどちらも脳に良い影響はあるんだけど、なぜか音楽は言語能力を鍛える働きが強いっぽいんだ、と。なんだか不思議な結果のようですが、これは音楽と言語がともに「複雑な音の連続を処理する」という脳の仕組みを共有しているからなんだそうな。いわゆる「OPERA仮説(音楽の精緻な処理が、言語処理能力も高める)」ってやつですな。

 

まあ、この研究は観察的データなので「練習量や楽器の種類までは正確に記録されていない」みたいな限界はあるんですけど、全体としてできる限りバイアスを除外した研究になってますし、わりと信頼できる話なんじゃないかと。なので、今回の研究を参考にする限り、音楽が言語能力を鍛えてくれる上に、経済的な格差にも立ち向かえるようにしてくれる可能性はあると申せましょう。ここでいう「音楽のトレーニング」ってのは、「2年以上にわたって楽器の練習を継続していること」が条件になってまして、

 

  • 学校の吹奏楽部や合唱団などにずっと参加してる

  • 民間の音楽教室での個人レッスン(ピアノ、バイオリン、ドラムなど)

  • 家庭内での自主的な練習(ある程度の頻度と継続性が必要)

 

みたいになってます。2年というとなかなか長い気もしますけど、最近はスマホやタブレットでも音楽のリズムトレーニングとかできますし、カラオケに行ってもいいですしで、意外と楽しく取り組めるんじゃないでしょうか。この結果は大人にもある程度まで当てはまりそうなんで、私もいろいろ楽器の練習を続けていこうかと。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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