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【質問】食べてないのに痩せません!食事にもかなり気をつけています!運動もしています!

  

 

こんなご質問をいただきました。

 

ダイエット中で食事にもかなり気をつけているつもりなんですが、思ったように体重が減りません。間食もほとんどしていないし、食べ過ぎている自覚もないんですけど、それでもなぜか体重が停滞しています。運動も軽くやっているのに結果が出ないので、自分の代謝が悪いのか、それとも体質の問題なのかと不安になっています。この場合、何が原因として考えられるんでしょうか?

 

ということで、「そんなに食べてないのに、なぜか痩せない」みたいな話でして、ダイエット界の“あるある”みたいな感じですな。

 

これは定期的にいただく質問なので、ちょっと具体的なところを見てみましょう。このテーマでよく引用されるのが、「肥満な人は自分の食事量をちゃんと把握できているか?」を調べた古典的な研究(R)であります。

 

この研究は、肥満ぎみな参加者を対象に「自己申告」と「客観測定」のズレを検証したもの。みんなに普段どおりの生活を送らせつつ、数日〜数週間にわたって食事内容を自己記録してもらい、それと同時に参加者がどれぐらいのカロリーを消費したのかを二重標識水法という有名な方法でチェックしたんだそうな。この方法は、日々の消費カロリーを精度が高めで算出できるんで、よくこの手の研究に使われるんですよ。

 

で、分析の結果がどんなもんだったかというと、

 

  • ほとんどの人は、「自分が食べている食事の量」を約47%過小評価していた!
  • ほとんどの人は、「自分が運動で消費しているカロリー量」を約51%過大評価していた!

 

だったそうな。つまり、私たちは実際よりもめっちゃ食べてないと思ってるし、実際よりもめっちゃ運動していると思ってるってことですな。このズレはすごいですなぁ。

 

特に重要なのは、このズレが「一部の人の誤差」じゃなくて、系統的に起きていたことでして、簡単に言うと、私たちは「自分が食べた量」をランダムに間違えるのではなく、「食べていない!」と思い込む一貫したバイアスを持ってるってことですな。なので、「私は食べてない!」という認識そのものが、かなり怪しい可能性があるわけです。

 

では、なんでここまでのズレが生まれるのかってことですが、これまでの研究では大きく4つの原因が指摘されております。

 

  1. “無意識カロリー”の存在:「そんなに食べていないはずなのに痩せない」という感覚の裏には、ほぼ例外なく“無意識カロリー”の存在があったりします。これは文字どおり、自分では摂取したと認識していないカロリーのことで、人間の脳ってのは、食事をすべて正確に記録するようにはできていないんですよ。

    特に問題になるのが「食事として認識されない摂取」で、たとえばキッチンでのつまみ食い、仕事中に口にするお菓子、飲み物に入れた砂糖やミルクみたいな行動は、本人の中でカウントされづらいんですよ。こうした細かい追加カロリーは、たとえ1回あたり100kcal未満だったとしても、1日の中で何度も繰り返されれば、合計で300〜500kcalに達することも珍しくないんですよね。

    さらに、これらの行動は「記憶に残りにくい」って側面も持ってまして、私たちは“ちゃんと食事したもの”は覚えていても、“つい口に入れたもの”は忘れる傾向があるんですな。その結果、「自分はあまり食べていない」という認識と、実際の摂取量との間に大きなギャップが生まれるわけです。


  2. カロリー摂取に波がある:ダイエットがうまくいかない人の中で、かなりの割合を占めるのが「週末にドカ食い」しちゃうパターンであります。平日はしっかり食事制限をしているにもかかわらず、週末に気が緩んで摂取カロリーが一気に増えてしまう現象のことっすね。これは、一見すると平日に努力している分だけ痩せそうに思えるんだけど、「トータルのカロリー収支」には問題が出ちゃうんですよね。

    たとえば、平日に1日あたり500kcalのマイナスを作って、5日で合計−2500kcalになったとしましょう。しかし、一方で、週末に外食や間食をしまくり、1日あたり1500kcalオーバーすれば2日で+3000kcalになるじゃないですか。この時点で、1週間トータルではむしろカロリー過多になるわけですね。しかも厄介なことに、本人の主観では「平日は頑張っている」という実感が強く残るため、「ちゃんとやっているのに痩せない!」みたいに思い込みがちなんです。実際の研究(R)でも、摂取カロリーの日ごとのばらつきが大きいほど、体重コントロールが難しくなることが示されてますんで、これも気をつけておきたいっすね。


  3. 「健康そうな食事」にダマされる:もうひとつ厄介なのが「ヘルシー錯覚」で、これは食品が持つ“健康的なイメージ”によって、私たちの摂取量の判断が無意識にゆるくなる現象を指しております。たとえば、サラダやグラノーラ、プロテインバーみたいな食品は、「体に良い」「太りにくい」といった印象が強いため、同じカロリーであってもピザやスナック菓子より警戒心が下がるんですよ。その結果、気づかないうちに量が増えやすくなっちゃうんですな。

    実際、行動科学の研究(R)でも、「これは健康です!」ってイメージがあるだけで、みんな摂取カロリーを過小評価しやすくなることが示されてたりしますからね。さらには、「ヘルシーなものを選んだ」という安心感のせいで、その後の食事で高カロリーなものを選びやすくなるって現象も確認されてまして、これがまた総摂取カロリーの増大につながっております。この現象は特にダイエット中に起きやすいんで、これもまた要注意でありましょう。


  4. 水分のゆらぎで話がややこしくなる:ついでに、水分による体重の短期変動も話をややこしくしております。ご存じのとおり、私たちの体重は脂肪の量だけで決まるわけではなく、体内の水分量に大きく左右されております。たとえば、塩分を多く摂った翌日は体が水を保持しやすくなって一時的に体重が増えるし、炭水化物を多く摂ればそれだけで体重が数百グラム〜1kg以上増えることもあり得ますからね。

    さらには、ストレスや睡眠不足も水分保持に影響していて、ストレスホルモンであるコルチゾールが増えると、体は水分を溜め込みやすくなるんですよね。これに加えて、女性の場合は月経周期によるホルモン変動の影響が大きく、排卵後から月経前にかけては1〜2kg程度の体重増加が起こることも珍しくなかったりします。これらの変動はあくまで「一時的なもの」なんだけど、日々の体重だけを見ていると、このノイズに振り回されちゃって「痩せていない!」と誤解しやすくなることも多いんですな。

 

ということで、これらの要因をふまえますと、「食べてないのに痩せない」って現象は謎でも例外でもなく、たんに「自分がどれだけ食べているかを正確に認識できていない」ってところに尽きるんじゃないでしょうか。もちろん、代謝がどうとかホルモンバランスの影響とか、活動量の低下による消費カロリーの変化とか、他の原因も考えられはするものの、基本的には「カロリーの見積もりが間違っている」と考えたほうがよさげであります。逆に言えば、ここさえ修正できれば、ダイエットはかなりシンプルになりますんで、「食べてないのに痩せないと思ったら、食事の記録をちゃんと取る!」と考えればいいんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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