今週の小ネタ:なぜ老人の話は長いのか?デカい人のプレゼントほどありがたい?陰謀論を信じる人のメンタリティは?

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
高齢者の昔話が長くなるのは、記憶力が落ちたせいではないかもしれない
高齢の人と話していると、話がやたらと長いなーと思うことがあるじゃないですか。たとえば、昔の旅行の話を聞いただけなのに、「あのころは、まだ新幹線が通ってなくてね……」みたいに、やたら前置きが長くなったりとか。
こういう現象を見ると、つい私たちは「年を取って記憶力が落ちたのか?」と思っちゃうわけですが、新しい研究(R)では、また別の考え方が提案されておりました。
これはイースト・アングリア大学などの研究で、若者37人(18〜33歳)と高齢者37人(60〜85歳)を対象にしたもの。研究チームは、参加者にいくつかの言葉を見せて、そこから思い浮かんだ過去の出来事を話してもらったんだそうな。
その際、思い出してもらう内容を2つに分類。
- 特定の出来事:「去年の誕生日に友人とレストランに行った」など、ある日時に一度だけ起きた出来事
- 繰り返しの出来事:「学生時代は毎週友人と映画を見ていた」など、何度も経験した出来事
これに加えて、途中からは、この2種類の思い出を交互に語ってもらう課題も行いまして、これによって若者と高齢者の成績に違いが出るかも調べております。
でもって、参加者が話した内容を細かく分類したところ、まず特定の出来事を正しく思い出せた割合は、
- 若者:80%
- 高齢者:81%
って感じで、ほとんど差がなかったとのこと。なので、高齢者だからといって、特定の出来事を思い出す能力が低いわけでもなさそう。
ところが、一方では、思い出した出来事を「どう語るか?」には、かなりの違いがありまして、
- 特定の出来事について話した際、その場の状況や感覚など、具体的な情報が占める割合は、
- 若者:79%
- 高齢者:66%
- 一般的な知識や背景説明が占める割合は、
- 若者:13%
- 高齢者:18%
- 繰り返しの出来事について語った場合は、高齢者の話に含まれる一般的な知識の割合が、若者よりも大きくなっていた。
って違いがあったんだそうな。おまけに、高齢者のほうが話す時間も長く、若者が平均27秒だったのに対し、高齢者は平均45秒も話していたとのこと。どうやら、高齢者は記憶を引き出せないというより、ひとつの思い出を語るときに、細かい情報を盛り込む傾向があるみたいなんですな。
その理由ははっきりしてないんだけど、研究チームいわく、
一般的な知識を多く使うことが、高齢者にとって意味のある記憶の使い方なのかもしれない。
とのこと。要するに、高齢者は人生経験が豊富なので、たとえば旅行の話をする時にも、「当時の社会はどうだったか」「その旅行が自分の人生でどんな意味を持っていたか」といった、より広い文脈と結びつけて語りやすくなるんじゃないか、と。それはそうかも。
なので、相手の話が長くなったときに、「この人、記憶力が落ちたのでは?」と判断する必要はなさげ。もしかすると、その人は出来事そのものだけでなく、人生で蓄積してきた知識や経験を含めて話そうとしてるだけかもなんで。
同じプレゼントでも、贈る人の「体型」によって感謝の気持ちが変わってしまうらしい
「同じプレゼントでも、贈る人の見た目によって、相手の喜び方が変わるのでは?」みたいな研究(R)が出ておりました。
こちらはグランドバレー州立大学などの研究で、まず研究チームは、203人の男女に対して、過去にもらったクリスマスプレゼントを思い出してもらうように指示。そのうえで、
- 贈り主はどれぐらいの体格だったか?
- プレゼントにどれぐらい感謝したか?
といった質問に答えてもらったところ、「体格が大きい人からプレゼントをもらった人ほど、感謝の気持ちが強かった!」って傾向が見られたんですよ。面白いっすねぇ。
続いて研究チームは、さらに294人の参加者に対して、「友人から誕生日プレゼントとしてコーヒーメーカーをもらった」と想像してもらい、贈り主の写真を見るように指示。このとき、参加者には細身の女性か、体格の大きな女性の写真をランダムに提示してみたら、プレゼント自体はまったく同じだったのに、「体格の大きな女性からもらったと想像した人のほうが、プレゼントへの感謝が大きかった!」というんですな。
なんとも不思議な現象ですけども、これについて研究チームいわく、
「温かさ」に関するステレオタイプが関係しているかもしれない。
とのこと。
ご存じの方も多いでしょうが、心理学の世界では、人間が他人を評価するときには、「有能さ」と「温かさ」という2つの側面を重視することが知られております。そして、今回の研究では、以下のような心理的な流れが確認されたんですよ。
- 体格の大きな女性を見ると、私たちは「優しくて温かそうな人だ」と感じやすくなる→
- 温かそうな人だから、「きっとプレゼントを選ぶのに、時間や手間をかけてくれたんだろう」と推測する→
- その結果、「自分のために頑張ってくれたんだ!」と感じ、プレゼントへの感謝が強くなる→
つまり、多くの人はプレゼントそのものじゃなくて、「相手が自分のためにどれだけ頑張ってくれたと思うか?」で、感謝の気持ちが上がり下がりしてたってことですね。いかにもありそうなバイアスですねぇ。
ちなみに、今回の効果には男女差があったそうで、男性の場合は、体格が大きくても細身でも感謝の程度に明確な違いはなかったとのこと。これもまた不思議なもんですね。
なので、これから誰かにプレゼントを贈るときは、「なぜこの品物を選んだのか?」を相手に伝えてみるのも一興でしょう。たとえば、「前に欲しいって言ってたから探してみたよ」とか「この前の会話を思い出して選んだよ」みたいな感じっすね。これで多少は感謝のレベルが上がるかもなんで。
陰謀論を信じる人は「みんなも信じている」と思い込んでいるらしい
みんな大好き陰謀論!ってことで、新しい研究(R)は、「陰謀論を信じる人は、なぜ自分の考えが正しいと思い込んでしまうのか?」って問題を掘り下げてくれておりました。
これはアムステルダム自由大学などの研究で、アメリカとイギリスの合計2,906人を対象に6つのオンライン研究を行ったもの。まず研究チームは、アメリカ人300人とイギリス人299人に対して、10種類の陰謀論を見るように指示。そのうえで、
- 自分は、その陰謀論をどれぐらい信じているか?
- ほかの参加者は、その陰謀論をどれぐらい信じていると思うか?
という2つの質問に、0〜100点で回答してもらったんですよ。
すると、実際の陰謀論への支持は、
| 国 | 実際の平均点 | 他人の支持に関する予想 |
|---|---|---|
| アメリカ | 33.09点 | 39.85点 |
| イギリス | 34.16点 | 42.30点 |
という感じで、どちらの国も、他人の支持を実際より高く見積もる傾向があったんだそうな。しかも、自分自身が陰謀論を強く信じている人ほど、ほかの人も同じ説を信じていると思い込む傾向が強かったとのことで、これはちょっと納得ですね。
でもって、さらに研究チームは、アメリカ人505人とイギリス人501人を対象に実験を実施。参加者をランダムに2つのグループに分けて、
- グループA:製薬会社が治療法を隠していると主張するブログを読む
- グループB:製薬会社は治療法を隠していないと主張するブログを読む
という課題に取り組んでもらったんだそうな。すると、陰謀論を支持するブログを読んだグループは、自分自身の陰謀論への支持が高まっただけでなく、「ほかの人も、この説を信じているはずだ!」という推測まで強まってたってんだから、面白いもんですな。
具体的には、たとえばアメリカの実験では、他人が陰謀論をどれぐらい信じているかという予想が、
- 陰謀論を否定するブログを読んだ人:51.00点
- 陰謀論を支持するブログを読んだ人:62.64点
という違いになっていたとのこと。つまり、私たちは、陰謀論を目にしただけで、その説が世間にどれぐらい広がっているかについての認識まで変わってしまうってことですね。
では、こうした思い込みを修正するには、どうすればいいのかってことですが、研究チームいわく、
具体的な数字を示して、実際の支持率を理解してもらうことが重要なのかもしれない。
とのこと。SNSってのは、アルゴリズムによって似た意見ばかりが表示されたりするんで、怪しい情報を見かけたら、
- その意見を支持しているのは、実際に何%ぐらいなのか?
- 目立っている投稿者が、同じ主張を繰り返しているだけではないか?
- 信頼できる世論調査や研究で、実際の支持率を確認できるか?
といった点をチェックしてみると、「よく見かける意見」と「多くの人が信じている意見」を混同せずに済むかもしれないってことですな。もちろん、多数派が信じていないからといって、その主張が間違っているとは限らないんだけど、「みんなが信じている」という感覚が、実際には大きく歪んでいる可能性があるのは、覚えておきたいところっすね。


.jpg)
