どんな専門家の意見だろうが、束になった素人の意見にはかなわない!説
専門家 VS. 素人の意見
こないだ「いったんフェイクニュースを信じちゃうとなかなか覆せない」って話を紹介しましたが、今度は「専門家の見解は素人の意見に簡単に負ける」ってデータ(1)が出てておもしろかったです。
これはロンドン大学の実験で、146人の男女を対象にしたもの。平均年齢は31才で、学校で基本的な確率や統計を学んだ人だけを選んだらしい。
専門家と素人のどちらを信じるか?
で、具体的にどんな実験をしたかというと、まずは全員に5つの社会問題について考えてもらったんですね。たとえば、「町の中に車が通っちゃいけないエリアを作るべきか?」とか「車禁止エリアを作ると町内の経済は潤うか?」とか、そんな感じ。
さらに、それぞれの社会問題には、
- 専門家の意見(過去の正解率80%)
- 専門家に反対する一般人の意見(過去の正解率51%)
がついてるのがポイント。すべての参加者には、専門家と一般人が過去に出した正解率も合わせて伝えたんだそうな。そのうえで、みんなに「専門家と一般人のどっちが正しいと思う?」と聞いたうえで、ベイズの定理から導きだした確率モデルと照らし合わせたんですな。
素人が束になれば専門家に勝てる
というと、誰もが「専門家の意見を信じるでしょ!」と思うかもですが、実際はさにあらず。ベイズ推定と参加者の回答の結果は、参加者が耳にした意見の数によって支持の比率は大きく変わる、というものだったんですよ。具体的には、
- 専門家と一般的の意見の数が1:1のときは、みんな専門家を信じる
- 専門家の正解率が80%で一般人の正解率が51%だった場合、両者の比率が1:40になったときに、みんな一般人のほうを信じるようになった
- 専門家の正解率が80%で一般人の正解率が55〜60%だった場合、両者の比率が1:10になったときに、みんな一般人のほうを信じるようになった
みたいな感じです。つまり、かなりまともな専門家の意見でも、当てずっぽうの素人が40人も集まれば負けてしまうんだ、と。さらに、ちょっと詳しい素人の場合は、10人もいれば簡単に専門家に勝ててしまうんだ、と。
ウソもくり返せば真実に?
研究者いわく、
多くの人々は、特定の問題に対して「どれだけの素人が支持している場合に、自分はその意見を支持するか?」という予測に対して敏感だった。
とのこと。たいていの人は、「みんなが言ってるんだから間違いないだろう」と反射的に自分が思ってしまう数字をかなり正確に予測できたらしい。人間には『自分が周囲にどれだけ流されやすいか』を直感でつかむセンサーみたいなものが備わってるのかもですな。
もっとも、これはあくまで確率の話なんで、現実的にこの推定と同じ数字が出るかは不明。過去のデータでは、たいていの人は大多数の意見に左右されちゃうって傾向が出てるので、おそらく正しいんだろうと思いますが。
つまり、2分の1の確率でしか当たらない占い師でも、数百人の熱心な信者を作って布教に励ませれば、そこからジワジワと支持者を増やしていける可能性はアリ。「ウソもくり返せば真実になる」って定番フレーズを地で行くような話ですが。
ちなみにこのモデルによれば、専門家の正解率が99.99%に達しない限り、大勢の素人には勝てないんだそうな。これは逆に言えば、いったん神やスピリチュアルの存在を信じた人は、いかにそこから抜け出すのが難しいかってことでもありましょうか(妄想)。