プラシーボの効果を倍にする方法が発見される
プラシーボ効果をさらに引き出すには?
ご存じのとおり、プラシーボ効果ってのはとにかく凄いわけです。
たとえば、イブプロフェンを飲むより痛みが消えたり、ブドウ糖を飲むだけで鬱症状を59%も改善したりとか。実はその仕組みは全然わかってないんですけど、なぜか劇的な効果があったりするわけです。
といっても、実験の世界では割とプラシーボ効果は嫌われがちだったりもします。プラシーボのおかげで、本当にそのクスリが効くかどうかがわからなくなるもんですから。
が、新しくスタンフォード大学から「もっとプラシーボを引き出す方法を考えようよ!」って趣旨の論文(1)が出まして、ちょっとおもしろかったです。プラシーボの理由はよくわからんけど、せっかく凄い効果が出てるんだから有効に使えばいいじゃない!って話ですね。
アレルギー反応でプラシーボ効果の違いをチェック
そのために研究チームがなにをしたかというと、164人の健康な参加者に「アレルギーのテストをします」と告げたうえで、ヒスタミンの注射をしたんですね。ヒスタミンはアレルギー反応を呼び起こす物質で、肌がふくれたり赤くなったりするんですな。
続いて、今度は「アレルギーを抑えましょう」と言いつつ、注射を打った場所に不活性のクリームを塗布。そのうえで全体を4つのグループにわけております。
- クリームを塗る医者が優しくて有能っぽい
- 医者が優しくないけど有能っぽい
- 医者が優しいけど無能っぽい
- 医者が優しくなくて無能っぽい
このような印象をどうやって与えたかというと、優しさを演出したいときは気さくにお互いの自己紹介をしたり、逆に冷淡にふるまうときは淡々と作業をすすめたりとか。同時に有能に見せたいときは、参加者とアイコンタクトを取ったり声の調子を雄弁にしてみたり、逆に無能を演出するときは病室に書類を散らかしてみたりとか。
温かみと有能さでプラシーボ効果が倍増
その後、参加者のアレルギー反応を調べたところ、こんな違いが起きました。
- 優しくて有能っぽい医師にクリームを塗られた参加者は、アレルギー反応がもっとも軽減していた!(他にくらべて半分ぐらい)
- それ以外の医師にクリームを塗られた場合、アレルギー反応のレベルはどれも同じだった
ってことで、たんに医師が有能っぽいだけじゃダメで、同時に温かみも必要らしい。なんかわかる気がしますな。
温かみと有能さはカリスマ性にも通ずる
研究者いわく、
多くの医師は、自身の患者とのラポールを築くことが大事だと気づき始めている(例:共感力を鍛えるなど)。今回の研究は、医師たちが患者の心理と社会的な側面に注意を払う理由を示している。これは患者の健康状態に良い影響をあたえるだろう。
とのこと。ちなみに、温かみと有能さってのは、多くの研究で「カリスマ性に必要な2大要素」と考えられてるんで、他人に影響をあたえたいときはこの2つをアピールするのがいいんでしょうな。
もちろん、温かみと有能さのせいでノセボ効果(ネガティブな期待が現実化するパターン)が起きるケースもありそうなんで注意が必要ですが。