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いろんなアイデアから本当に良いものを選ぶにはどうすればいいのか?問題

 

2番目に好きなアイデアこそが、周囲から見れば最高のアイデアなのだ!」というおもしろいデータ(R)が出ておりました。

これはスタンフォード大学などの実験で、まずはチームの問題意識からどうぞ。

 

創造性を評価するのは難しい。多くの研究によると、人々は自分のアイデアがどれだけ良いものなのかを判断するのが下手で、ここには多くのバイアスが障害となっている。

 

たいていの人は自分のアイデアをうまく評価できないんだよーってことで、「そうだよなー」と思われる方も多いんじゃないでしょうか。私も原稿を書いてる途中でよく「これ、なにがおもしろいんだ?」という状態に陥るので、やっぱ編集者って大事だよな……といつも感じております。

 

 

というわけで、この論文では5つの実験が行われていて、ざっくりこんな感じになってます。

 

  1. 参加者にクリエイティブなプロジェクトに取り組んでもらう
  2. 各プロジェクトごとに3つのアイデアを考える
  3. 自分のアイデアを「これは良い!」と思う順にランク付けする
  4. ランク付けしたアイデアを専門家や消費者に評価してもらい、主観的なランク付けと比べる

 

というわけで、自分で「これは良い!」と思ったアイデアが、果たして第三者の評価と合っているのかどうかをチェックしたわけですね。ここで参加者に指示されたプロジェクトは、「斬新なフィットネス器具を作れ!」とか「車内の眠気を防ぐデバイスを考えよ!」みたいな感じになっております。

 

 

すると、どんな違いが出たかと言いますと、

 

  • 短時間でアイデアを出すように指示された場合には、参加者のランク付けと第三者の評価は一致した
  • 長時間でじっくりアイデアを出すように指示された場合には、参加者が「2番目に良い」と判断したものを、第三者は1位にランク付けする傾向があった

 

だったそうな。短時間であれば人間は正しいアイデアを選べるのに、時間をかけるほど正解を選べなくなっちゃうわけっすね。これはわかるなぁ……・

 

 

では、なんでこういった現象が起きるのかと言いますと、チームはこう言っております。

 

多くの人々は、最初に思いついたアイデアにおいては具体性を重視しすぎ、抽象性を軽視しすぎてしまう。

 

このブログでも過去に「創造的なアイデアを思いつくには拡散思考が大事だよー」みたいな話を書いたとおり、良い発想を生み出すには抽象的な思考が必須。まずはものごとを抽象的にとらえて発想をドカッと広げて、そこから具体的に考えて細部を詰めていくのが大事なんですよね。

 

 

なんだけど、多くの人は具体的なアイデアを「これは良い!」と思う傾向があるんで、そのせいで細部が明確な発想ほど高く評価をしてしまうんだ、と。確かに具体的なアイデアほど取っかかりやすいんで、そのぶんだけ目が行っちゃいますもんね。

 

 

チームいわく、

 

最良のアイデアは、判断の初期にはあまり独創的には見えづらい。そのアイデアがどれぐらい独創性と有用性が高いかどうかを見極めるには、十分な判断材料がないように思えてしまうからだ。抽象性が高いアイデアは、抽象性の高さそのものが、アイデアの可能性を見抜くことを妨げてしまう。

 

とのこと。本当は抽象性が高いアイデアを選ぶのが得策なのに、抽象性が高いと「なんかボンヤリした発想だなー」みたいに思ってしまいがちなせいで、せっかくのポテンシャルを見逃しやすくなるんだ、と。これは企画選びの場面なんかでも心がけといた方が良さそうっすね。

 

 

が、幸いなことに、この研究では「抽象的なアイデアを甘く見る問題」を乗り越える方法も調べてくれていて、こんな結論を出しております。

 

  • 「このアイデアはどれぐらい良いものだろう?」ではなく、「なぜこれは良いアイデアなんだろう?」という質問を思い浮かべながら考えよう!

 

要するに、「How」じゃなくて「Why」を使って考えた方が抽象的な思考力が起動しやすくなり、ぼんやりしたアイデアのポテンシャルを見えてくるってことですね。うーん、これは本のアイデアを出すときに使えそうだから覚えておこう……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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