人間がやる気を出す「目標」は4つのパターンにわかれるぞ!みたいな研究のお話
「人間ってどんなことにモチベーションを持つの?」ってのは昔ながらの疑問で、これまでもいろんな理論が生まれてきたわけです(有名なとこだと「自己決定理論」とか」)。
ただ、この問題については、まだ「これだ!」って合意があるわけじゃなくて、みんながあーでもないこーでもないと言ってるのが現状ではあったりします。そもそも「モチベーション」ってのが幅広い概念なんで、「人間はこんなことに駆り立てられるのだ!」と言い切るのはわりと超難しいんですよね。
が、それでも人間の動機を探る研究は続いてまして、最近も「人間の行動を駆り立てる動機には大きく分けて4つのカテゴリーがある!」と主張する論文(R)が出ておりました。
これはワイオミング大学などの研究で、まずはチームの問題意識から見てみると、
心理学の世界において、「私たちは何を求めているのか?」という問いよりも重要なものはほとんどない。しかし、この問題について広く受け入れられた解釈はない。
みたいになってます。当然ながら、「モチベーション」ってのは人生のあらゆる側面に関わってくる重大事にもかかわらず、その実態はほとんどわかっていないんだ、と。それだけ簡単なようで実は難しいテーマなわけっすね。
ってことで、チームがどんな調査をしたかと言いますと、
- 14万以上の英語の名詞のリストをチェックする
- 単語リストから「目標」や「ゴール」に関するものを絞り込む
- 最終的に残った1,060語を1000人強の参加者に見せて、これが自分のモチベーションに合致しているかどうかを尋ねる
みたいな感じです。自分の目標を説明するときに多くの人が使う言葉をチェックして、そこにどんな共通項があるかを調べたってことですね。なかなか説得力のある研究じゃないでしょうか。
でもって、すべてのデータを主成分分析にかけたところ、人間の動機に共通する4つのカテゴリーが浮かび上がったらしい。
- 卓越(Prominence):以下の要素を手に入れるために働く動機 → 王座、競争、コントロール、栄光、偉大さ、金銭力、人気、権力、特権、性的魅力
- 包括(Inclusiveness):以下の要素を手に入れるために働く動機 → 同志、外交、多様性、共感、公平性、包含性、相互のつながり、博愛主義、連帯、超越、社会の変革
- 負の回避(Negativity prevention):以下の要素を避けるために働く動機 → 異常、狂気、死、戦い、運命、過敏さ、孤立、平凡、憂鬱、哀れみ、失業
- 伝統(Tradition):以下の要素を手に入れるために働く動機 → 宗教、祝福、保守性、結婚、従順、義務、親愛、純潔、歴史
というわけで、それぞれのモチベーションをざっくり説明すると、
- 卓越=社会的なステータスが欲しい!そのために何かを達成したい!
- 包括=社会を受け入れ、そして受け入れられたい!すべての価値観を認めたい!
- 負の回避=嫌なことを避けたい!
- 伝統=自分が所属する組織の文化と未来を守りたい!
みたいになりますね。いずれも「あーそうかもなー」って感じじゃないでしょうか。
ただし、個人的にはこの結果には不満もありまして、
- どのカテゴリーも外部の環境にだけ焦点が上がっていて、「内的報酬」の要素が入ってない(たとえば、「金銭」を求めるって動機にしても、奥さんから「お金を稼ぎなさい!」と言われた場合と、「心から金儲けが好きだ!」って場合ではモチベーションの上がり方が違うはず)
- アメリカ文化を背景にした英語しか調べてないので、アジア圏にどこまで当てはまるか怪しいところもある(たとえば、「宗教」みたいなワードは非キリスト教文化における伝統の指標にならない可能性がある)
といったあたりは気になるところです。その点で、このデータを使って自分のゴール達成度を高めるのに応用するのは厳しいかなーとか思っております。
が、そうはいっても今回の知見は自己分析にはかなり有用な気がしてまして、
- 自分が抱いている目標をリストアップ
- それぞれの目標を上の4タイプに照らし合わせて「自分はこんなタイプのゴールに偏りやすいんだなー」とか分析してみる
- 自分があまり手を出さないタイプの目標を取り入れることができないか?とか考えてみる
ぐらいに使ってみるといいんじゃないでしょうか。