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人助けをするほど体の痛みに強くなるぞ!という実験のお話

 

人助けで体の痛みがやわらぐ!」みたいなナイスなデータ(R)が出ておりました。なんでも他人の役に立つ行動をする人は、肉体的苦痛に強くなるというんですな。

 

 

まずは研究チームの問題意識から紹介すると、こんな感じです。

 

科学者たちは、何世紀にもわたって「なぜ人々は他人を助けるために個人的なコストを負担するのか?」という疑問に取り組み、利他的な行動が個人に与える影響について考えてきた。

 

人助けはいろいろと手間がかかるのに、なんで多くの人はわざわざ他人のために行動するの?って疑問ですね。利他的な行動にも動機の意味を求めるあたりが科学者らしくていいですねー。

 

 

これは北京大学などの研究で、4パターンの実験を行っております。ここでいう「人助け」の定義は「見返りを期待せずに人に親切にすること」のようになっていて、具体的にそれぞれの実験と結果をざっくりまとめるとこんな感じ。

 

 

実験1

献血していた人たちに「注射針が刺さったときにどれぐらい痛かったですか?」と尋ねたところ、ボランティア活動を行っていた人は、そうでない人よりも針の痛みが小さかったと報告した。

 

実験2

寒い環境にさらされている被験者に「移民の子どもたちのためのハンドブックを改訂する手伝いをしてくれませんか?」と依頼したら、ハンドブック改訂の手伝いをした被験者は、寒さによる不快感のレベルが低かった。

 

実験3

数10名のがん患者に協力を頼み、ボランティアをしているグループとしていないグループに分類。全員に対して病気の苦しみのレベルを確かめたところ、ボランティアをしている患者さんの方が痛みが少ない傾向があった。

 

実験4

被験者たちに「孤児を助けるための寄付をしてください」と依頼し、その後で全員に電気ショックを与えたところ、寄付を行った被験者は電気ショックに対する脳の反応が小さかった。

 

 

ということで、全体的に「他人のために行動した人は身体の不快感が小さい!」って傾向が確認されたんだそうな。研究チームいわく、

 

fMRIを使って被験者の脳を調べたところ、利他的な行動を行った人たちは、痛みに反応する背側前帯状皮質と両側島の脳活動が有意に低下していた。

 

利他的な行動には個人的なコストがあるが、この研究は、利他行動が本人の痛みをやわらげる効果を誘発する可能性を示唆している。

 

ってことで、他人のために行動することは、本人にも「痛みの低減」というメリットをもたらすんじゃないか?ってことですね。

 

 

じゃあなんで利他的な行動で脳の活動が減るのか?ってとこですが、研究チームはドーパミンの働きを原因のひとつに挙げております。ざっと説明すると、

 

  1. 他人のためになる行動によりポジティブな感情が起動
  2. そのおかげでドーパミンが脳にあふれる
  3. ドーパミンが痛みの感覚を鈍らせる

 

みたいな流れですね。ドーパミンのメリットについては「ドーパミンを増やすとなぜ幸せな人生を送れるのか?問題」にまとめておきましたが、とにかくいろんなメリットが認められている脳内伝達物質のひとつであります(デメリットもあるけども)。

 

 

また、利他的な行動が幸福度の増加をもたらすのも有名で、近年は「ヘルパーズハイ」なんて呼ばれ方をされてたりもしますからねぇ。ドーパミンを増やす方法はいろいろあるものの、利他的な行動による増加率はかなり高そうなんで、意識しておきたいところっすな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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