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今週末の小ネタ:相手と本当に仲が良いかを見抜く方法、子供のころのトラウマがヤバい、みんな他人にガンガン忠告しよう


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。 

 

 

 

相手と本当に気が合うかどうかは「会話の応答速度」でわかる

相手と本当に気が合ってるかどうかは会話の応答速度でわかる!」みたいな研究(R)が出ておりました。なんでも、私たちは、会話中に素早く反応する人に対して「この人とはつながってるなー」と感じやすいんだそうな。

 

 

これはダートマス大学などの研究で、研究者がなにを調べたかったのかと言いますと、

 

  • みんないろんな人とたくさん会話をするけど、相手と「気が合った」かどうかを見分ける方法はないの?

 

ってポイントです。誰でも日常で「この人とは合うなー」とか「全然合わんなー」と思うことはありますけど、果たして「この人とはピッタリだ!」ってのはどこからわかるのか?って疑問ですね。

 

 

ってことで、チームは66人の大学生を募集して、みんなに10分間の会話をするように指示。すべての生徒は1対1で好きなことを自由に話をしてもらい、それぞれの会話の後に「どれぐらいコミュニケーションを楽しめたか?」を評価してもらったそうな。でもって、最後に、その会話を録画した動画を見て、その最中に感じた相手とのつながりの度合いを評価してもらい、「気が合う相手との会話は何が違うのか?」をチェックしたらしい。

 

 

すると、合う人との会話には明確な違いがありまして、

 

  • 平均して応答時間が早い会話ほどより楽しいと評価され、より強い社会的つながりの感情を呼び起こす!
  • 応答時間が速い会話ほどつながりの感情が高まり、応答時間が速い参加者のパートナーは、会話をより楽しみ、よりつながりを感じていた。
  • 応答時間が2〜3秒速くなるだけでも、相手とのつながりの感覚には影響が出る。

 

だったそうです。ポンポン会話が進む人ほど「合う」感覚が強く、実際に会話も楽しいわけですね。

 

 

さらに、被験者の一部を追加で調査したところ、この効果は友人同士の会話にも現れることがわかったとのこと。親しい友人と会話をしている様子をチェックしてみても、やはり応答時間が速いほど、会話をより楽しみ、つながりをより強く感じる確率が高かったみたいっすね。

 

 

研究チームいわく、

 

会話の中でお互いにスピーディに反応することは、互いに心を通わせていることを示す信号であることがわかった。

 

とのこと。というと、「よっしゃ!相手に好かれてもらうために、めちゃくちゃ反応を速くするぞ!」と思う人もいるかもですが、研究チームはこんなことも言っておられます。

 

これらの応答時間はとても速く起こっているので、それらが偽造できるものだとは思わない。つまり、誰かにつながりを感じてもらうために、意図的に速く反応することは恐らくできないのだ。会話に素早く反応する唯一の方法は、相手の会話がどこから始まって、どんな方向へ向かおうとしているのかを理解し、予想することだ。

 

会話スピードの変化はかなり無意識的に起きるので、強引にスピードを速めても無意味。あくまで相手の会話内容に集中を続け、相手の考えがどこに向かっているのかを予測し、相手が話をやめようとするタイミングを見計らい、適切な返答をする作業を自然に行わないと意味がないよーってことですね。会話の応答スピードは、あくまで相手とつながりが生まれた結果であり、手段にしないほうがよさそうっすね。

 

 

 

子供のころ辛い目にあうと、大人になっても脳が辛い

子供時代の困難は、大人になっても脳へのダメージを残す!」みたいなデータ(R)が出ておりました。こちらはトロント・メトロポリタン大学などの調査で、チームはこんなことを言っておられます。

 

歳をとると認知機能の低下や認知症のリスクが高まるが、これは成人する数十年前に予防・発見できることを示す研究が増えている。特に、幼少期や青年期は脳の発達に重要な時期であり、ライフコースを通じて認知機能の衰えのベースとなるため、私は幼少期に関心を持った。

 

歳をとって脳が衰える人ってのは、実はかなり前からサインが出てることが多いため、もしかしたらかなり子供時代から兆候があるんじゃないか?って考え方ですね。確かに、慢性的なストレスが脳に悪影響を及ぼすのは間違いないため、子供のころに辛い目にあってたら、それが大人の脳にもダメージを残す可能性はありますもんね。

 

 

ってことで、チームは1541人の男女を使った健康データを使用。みんなの収入、運動量、酒の量、幼少期のトラウマ(身体的/性的/感情的虐待、身体的/感情的ネグレクトなど)を調べ、さらに免疫系の働きや記憶力、推論の能力、情報処理スピードを調べたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 幼少期につらい経験をした人ほど、中年になってから認知が下がっちゃう現象が起きやすかった

 

んー、悲しい…。子供のころに慢性的なストレスを味わっている人は、少しずつ体内の生物学的な機能が狂い出し、これが大人になってからの問題解決力などに悪影響を及ぼすらしい(いわゆるアロスタティック負荷)。

 

 

もちろん、これは白人メインの調査だし、認知機能の低下リスクは人種によって異なったりもするんで、日本人にも当てはまるかは謎。アロスタティック負荷が原因なのかについても、因果関係は主張できないのでご注意ください。とはいえ、慢性的なストレスが脳に悪いのはかなり実証されてるんで、いまからでも対策はとっておきたいっすな。

 

 

 

みんな忠告を欲しがる割に、他人に忠告しない問題

「みんな忠告してもらいたがってるけど、みんな相手への忠告をひかえがちなバイアスあるよねー」みたいな研究(R)が出ておりました。こちらはハーバード・ビジネス・スクールなどの調査で、チームはこんなことを言っておられます。

 

「鏡を見たらシャツにシミがついていた」「長いあいだ単語の読み方を間違えていた」といった状況は多いが、このような場面で、ほとんどの人『なぜ誰も教えてくれなかったのか』という疑問を抱きがちだ。

 

「あるあるー」って感じでして、私も股間のチャック全開で1日を過ごした後で「誰か言ってくれよ!」と思ったことが、何度かございます。

 

 

ということで、チームは1,984人の参加者を対象に5つの実験をおこなってますが、だいたいの内容はこんな感じです。

 

  1. 参加者に「他人に忠告をするか?しないか?」を迷ってしまうような状況をいくつか想定させる

  2. そのような状況で、相手がどれぐらいフィードバックを求めていると思うか、自分が同僚からどの程度フィードバックを求めているかを報告してもらう

 

ってことで、「自分自身が間違ったのに訂正されなかった場面」や「誰かがうっかりエラーを起こしたがこちらが訂正しなかった場面」などを思い出してもらい、その時に思ったことを想像してもらったわけですね。

 

 

で、その結果は5つの事件ともだいたい同じで、

 

  • みんな「他人はそんなにこちらの忠告を欲しがってないだろう」と思いがち
  • そのくせ、自分では「なんで誰も忠告してくれないんだ!」と思いがち
  • 特に、「電子メールで無礼な発言をした!」とか「報告書に誤りが!」みたいな重大な状況では、みんな他者からの忠告をめちゃくちゃ欲しがるが、こういう場面ほどみんな忠告を与えなくなりがち

 

って感じだったそうです。みんな「他人からフィードバックが欲しい!」と願うわりには、みんな他人にはフィードバックを与えないというギャップがあるわけですね。こういうギャップってよくありますよねぇ……。

 

 

研究チームいわく、

 

「もしあなたが"フィードバック "をすることにためらいを感じても、相手にフィードバックしてみるのがお勧めだ。相手は、あなたが思っている以上にフィードバックを望んでいる可能性が高い。

 

ってことなんで、人間関係を改善するためにも、フィードバックを意識してみるのもありかもですね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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