「生活の技術」が手軽にメンタルの改善に役立つかもしれないよなーって話
「日々の生活を振り返るとメンタルに良いぞ!」って話(R)が出てておもしろかったです。「今日楽しんだこと」「今日感謝したこと」みたいに、その日に起きたことを振り返る作業を行うと、うつ病の症状がかなり緩和するかもしれないというんですな。
研究チームは、このような自己反省や意識的なライフスタイルを、「生活の技術(art of living)」と呼んでおられます。日々を振り返る意識がポジティブな感情を高めて、最終的にはメンタルの改善につながるんだ!って話でして、私も普段の生活に取り入れてみたい感じでした。
この研究はドイツのダルムシュタット工科大学などが行ったもので、161名のうつ病患者を対象に行われたもので、参加者を以下の3つのグループに分け、4週間の治療効果を検証しております。
- 通常の心理療法グループ:週1回、50分間の心理療法を4週間受ける。内容は、行動分析や感情管理、対処法のトレーニングなどの標準的な治療がメイン。
- 心理療法+反省質問グループ:通常の心理療法グループと同じ治療に加え、「今日感謝していることは何か?」「もし今日をやり直すなら、何を変えたいか?」など、日々の振り返りの質問に答える習慣を導入する。質問の回答は日記に記録する。
- コントロールグループ:治療も振り返りの質問も受けず、自然な経過を観察。
治療効果については、うつ病スコア(Beck Depression Inventory)を中心に計測しつつ、さらには「生活満足度」「生活の技術」「心理的充実度」を測定して評価。データは治療前、4週間後、さらに3カ月後のフォローアップの3つの時点で収集して、どんな効果の違いがあったのかをチェックしております。
それでは、実験の主な結果を見てみましょうー。
- うつ病スコアの変化:治療期間中、心理療法を受けたグループ1とグループ2は、コントロールグループよりも大幅なうつ病スコアの低下が見られた。特にグループ2(反省質問付きの治療)はスコアの改善が顕著で、ポジティブな感情や自己効力感が高まった。しかし、治療終了後3カ月のフォローアップでは、グループ1とグループ2の間に差は見られなくなってるんで、「生活の技術」による効果を長期的に維持する仕組みが必要なのだろうと思われる。
- 生活満足度と生きる技術の向上:グループ2は、生活満足度や生きる技術のスコアが大幅に向上した。これらは、日々の振り返り質問に答えることで、ポジティブな視点が育ったことを意味していると考えられる。一方、グループ1ではこれらのスコアに変化は見られず、コントロールグループではむしろ軽度の悪化が見られた。
ということで、「生活の技術」を導入したグループは、治療の期間中に限ってはメンタルが大幅に改善したらしい。ただし実験を終えて3カ月後にはポジティブな効果が減ったようなので、毎日の習慣として続けなきゃいけないってことなのかもですな。
では、なぜ「生活の技術」が有効なのかってことですが、現時点では、この手法によって以下の能力が育つからだろうと推測されております。
- 自己反省能力:自分の行動や感情を振り返り、改善策を見つける力。
- 感謝力:日々の小さな喜びに気づく能力。
- 楽観力:将来に対する楽観的な見方をキープする能力。
これらのスキルが育つことによって、日々の生活の質が向上するだけでなく、長期的にメンタルが安定しやすくなると考えられるんですな。いずれも日々の幸福度を高めるためには必須のスキルなので、メンタルを健やかに保つためにも良さそうっすね。
ってことで最後に、この文献をもとに「生活の技術」を実践する方法を考えてみましょう。
- 就寝前の5〜10分ぐらいを使って、「生活の技術」日記をつけてみる。
- 日記をつける際には、以下のような質問をベースにする。
- 感謝のリスト:
- 「今日感謝していることは何ですか?」 例:親切な言葉をかけてくれた友人、晴れた天気、温かい飲み物など。
- 「今日出会った中で、特に感謝したい人は誰ですか?」 例:家族、友人、職場の人など。
- 感謝している出来事を一つ選び、その理由を具体的に書いてみる。 例:「友人が励ましの言葉をくれた。その言葉が心の支えになった。」
- 今日のハイライト:
- 「今日一番うれしかった瞬間は何でしたか?」 例:仕事で褒められた瞬間、子供と遊んだ時間など。
- 「今日、自分が笑顔になった瞬間は何ですか?」 例:友人との会話、ペットと遊んだ時間など。
- 「今日を振り返って、特に記憶に残ったことは何ですか?」 例:新しいアイデアを思いついた、趣味に没頭できたなど。
- 改善のポイント:
- 「今日やり直すとしたら、何を変えたいですか?」 例:もう少し話を聞けばよかった、運動の時間を確保すればよかったなど。
- 「今日、初めて気づいたことは何ですか?」 例:普段通らない道に美しい花が咲いていた、会議中に同僚の新しい一面を知ったなど。
- 「今日の失敗や改善点は何でしたか?」 例:準備不足でミスがあった、感情的になってしまったなど。
ってことで、日々の生活の中で「何を楽しんだか?」「何に感謝したか?」みたいな小さな問いを自分に投げかけてみるのは手軽で誰にでもできるトレーニングなんで、毎日意識してやってみると良いかもですねー。