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恋愛のケミストリーとは何か? をヨーク大学がガッツリ調べたぞ、という研究の話

   

なんだかわからないが関係性が上手くいくような相手を「ケミストリーがある」などと申します。顔がタイプとか、趣味が合うとか、そういう明確な理由があるわけじゃないのに、なんだか話していると心が落ち着くし、会話が自然に進むし——みたいな感覚ですな。

 

この感覚は、いままで科学の世界では扱われてなかったんですが、このたびヨーク大学のチームが「恋愛に関するケミストリー」を深掘りしてくれてて面白かったです(R)。

 

で、これによると、恋愛心理学の古典的な理論では、「なぜ人は人を好きになるのか?」について2つのパターンが議論されてきたんだそうな。

 

  • 類似性仮説:私たちは、自分と似た性格や価値観を持つ人に惹かれるのだ!
  • 相補性仮説:私たちは、自分とは真逆の特性を持つ人に惹かれるのだ!

 

たしかに、どちらの理論も納得するところがありまして、「趣味が一緒で話が弾むから好きになった」とか「自分にはない大胆さを持っていて惹かれた」みたいなケースはよく耳にしますな。

 

が、ここで研究チームは、この2つの理論だけでは語り尽くせない“何か”があるんじゃないの?と仮説を立てまして、「ケミストリー」を調査のテーマにしたんだそうな。

 

具体的には、21〜76歳の成人200人に対して「あなたにとって、恋愛における『ケミストリー』とは何か?」ってオープンな質問を投げかけ、集まった回答630件を分類。めっちゃ手間な作業を繰り返したところ、だいたい93%ぐらいの一致率で9つの主要カテゴリーが浮かび上がったんだそうな。それがどんなものだったかと言いますと、

 

  1.  ポジティブな相互作用(64%):「一緒にいて楽しい」「時間があっという間に過ぎる」といったポジティブな体験が最も頻出していた。たとえば、特に話題があるわけでもないのに「気づいたら3時間も話してた!」みたいな経験があるかと思いますが、このタイプのポジティブ体験こそが、ケミストリーの中心にあるっぽい。


  2. 相互性(48%):これは「お互いに興味を持ち、反応を返し合えること」で、片方だけが一方的に話すのではなく、呼吸を合わせるように会話や感情のキャッチボールができる状態を意味しております。


  3.  安心感(41%):これは「素の自分を見せられる」かどうかを意味してまして、長期的な関係においては特に重要なポイント。本音を隠したり、無理に背伸びしたりする必要がないってことですな。


  4.  適合性(40%):ここでは、価値観や人生観の「フィット感」が重視されまして、たとえば、「結婚観や子どもに対する考え方が似ていた」みたいな一致が、ケミストリーを強める要素になるって話であります。


  5.  類似性(36%):似たような趣味、好きな音楽、ライフスタイルなどが重なると、それだけで安心感が生まれるとのこと。そう考えると、似てる方が惹かれ合いやすいってのは、割と正しいんでしょうな。


  6.  説明不能な状態(31%):「なんでかわからないけど惹かれる」という、言葉では説明できない部分。おそらく、遺伝子レベルの相性や、無意識のシグナル(匂いや体の動き)などが関係しているんだろうなぁ……という感じ。


  7. 性的魅力(28%):ケミストリーには肉体的な側面も含まれまして、特に出会って間もないころは、「ルックスが良い!」といった本能的な欲求が、強烈な引力として働くとのこと。


  8.  強烈な集中(24%):まるで世界にふたりしか存在しないかのように、お互いにのめり込む感覚のこと。これは「オキシトシン」の影響とも考えられております。


  9. 生理的反応(6%):手汗が出たりとか、頬が熱くなったりとか、こうした生理的サインも、ケミストリーのサブ的な役割を果たしているそうな。

 

ってことで、これらの要素が絡み合って、ケミストリーの独特な状態が生まれてるって感じですな。このデータだと、交際期間や年齢によって、ケミストリーの中身がシフトしていくって話も出てまして、

 

  • 付き合いたて→性的魅力や生理的反応が強い
  • 長年のパートナー→安心感、相互性、適合性が中心になる

 

って感じらしい。昔から「初期の恋愛は性欲ベースで、長くなると安心感のホルモンが有意になる」みたいなことが言われてたので、ここらへんの話とも整合性がありますな。つまり、長続きする恋愛をしたきゃ「心地よさ」が勝る関係を築けるかどうかが大事ってことっすね。この点については、研究チームも「時間を重ねることで、ケミストリーのフォーカスが“刺激”から“情緒的つながり”へと自然に移行する」と指摘してますし。

 

ここまでの話を踏まえて、この知見を現実に活かすことを考えてみると、だいたいこんな感じになるでしょう。

 

  • 自分の過去のケミストリーを考えてみる:過去に本当に惹かれた相手は、上の中でどの要素が強かったか? 今のパートナーとは、どのケミストリーが支えになっているか? と考えてみると、いまの関係性を考えるヒントになって良いのではないでしょうか。

 

  • ケミストリーを意図的に育てる:ケミストリーを育てるのは難しいと思われがちですが、意図的に育てることも可能だったりします。具体的には、「お互いに小さな「ポジティブ体験」を積み重ねる量を増やす(一緒に笑う、驚くとか)」「感謝や賞賛の言葉の量を意識的に倍にする」「深いレベルの会話を定期的にぶちこむ」「共同作業にチャレンジする(例:旅行、プロジェクト)」みたいな感じ。

    中でも強力なのは「共同作業」で、たとえば一緒にDIYをしたり、ふたりで料理に挑戦したりみたいな感じの作業をしていると、ケミストリーが高まるケースが多いんだそうな。

 

というわけで、今回の研究で改めてわかるのは、恋愛におけるケミストリーは割と地道な積み重ねの中で育まれるってことですな。最初にピンとくる感覚ももちろん大切なんだけど、それを超えて安心感を育てることができると、ケミストリーにつながるわけですな。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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