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なぜ内向型は"冷たくて無能"だと誤解されるのか?の科学

「内向的な人って評価されにくいよなぁ……」みたいな感覚を持つ人は多いでしょう。内向人間はどうしても自己主張をしないので、どうしても外にガンガンに出ていく外向タイプのほうが得をしやすいのは事実でしょう。

 

そこで面白いのが最近出た研究(R)で、「なぜ内向型は損をしてしまうのか?」って問題に焦点を当てたナイスな内容になっております。私のような内向人間には、かなり役に立ちそうな内容ですな。

 

ここでは3つの実験が行われてまして、ざっくりどんな感じだったかと言いますと、

 

  • 大学の学生・職員217名に、内向型と外向型の同僚を自由に描写してもらい、どのような傾向があるのかを見る。
  • 社会人133名に、内向型・外向型それぞれの一般的イメージを評価してもらう。
  • 別サンプルの社会人299名に、内向型・外向型・白人・アジア人・貧困層・高齢者のそれぞれについて、「優しそうに見えるか?」「能力が高そうに見えるか?」を評価してもらう。

 

みたいになります。つまり、この実験ってのは、みんなが内向型の人間にどんなステレオタイプを抱いているのかをチェックしたわけっすね。

 

そこで何が明らかになったのかと言いますと、

 

  • 職場では、内向型の人は一貫して「冷たく」て「無能」だと見られやすかった!
  • コミュ力を求められる職種ほど、内向型への能力の評価が低下する傾向があった。
  • 自己認識(自分が内向型か外向型か)による評価の違いは見られなかった。つまり、自分が内向型だとわかっている場合でも、同じ内向型の人を「冷たく」て「無能」だと判断しやすい。

 

みたいになります。つまり、内向型の人間ってのは、実際に仕事ができるかどうかとは関係なく、「内向型は冷たくて無能」って偏見を持たれがちってことですな。キチー。

 

というわけで、私のような陰キャには厳しい結論が出たわけですけども、ここでは「なぜ内向型への偏見が根づいたのか?」って疑問にも一定の答えを出してくれております。

 

研究チームによれば、偏見の起源は産業革命にさかのぼるそうで、農業社会から都市型社会へと変化する中で、「自己主張できる個人」「積極的に前に出る個人」が重宝されるようになったのが大きいとのこと。都市型の生活では、常に新たな人たちとコミュニケーションを取らざるを得ないため、いつの間にか「積極性サイコー!」みたいな価値観が社会に定着したんだろうって仮説であります。これは確かにありそうっすね。

 

では、こんな偏見が定着した社会に対して、私たち内向型はどうすべきかってことで、研究チームは「外向型を無理に演じる必要はない!」と明言しておられます。内向型の人間が無理に明るくふるまったり、饒舌になろうとすると、感情が擦り切れて心が疲弊しちゃうので、もっと持続可能なアプローチを取ろうぜってのが、ここでの主張であります。実際、私自身も知らない人だらけの忘年会で無理に明るくふるまって、それから3日間寝込んだ経験がありますからねぇ。多分、この研究チームも内向型何でしょうな。

 

ということで、私のような人間が、今回の知見を実生活に活かすのであれば、以下のようなものが考えられるでしょう。

 

  1. ステレオタイプの存在を自覚する:とにかく、「内向型は偏見を持たれやすい!」ってのがまずは大事でしょう。そのうえで、「話さない=無能」という思い込みに、自分も無意識に影響されていないか? 「私は地味だからダメだ」と自己評価を下げていないか? みたいに、自分の中のバイアスも意識しておくと良いでしょう。こうした無意識のバイアスを認識するだけで、パフォーマンスに与える悪影響(ステレオタイプ脅威)はかなり抑えられますんで。


  2. 小さな自己開示を意識する:内向型が損をする最大の理由は、「冷たそう」と誤解されることなんで、これを防ぐことを考えてみるのが吉。そのためには小さな自己開示が効果的で、たとえば、「雑談でさりげなく好きな本の話をする」「困っている同僚に、ひと言『何か手伝おうか?』と声をかける」「ミーティングで、感想を一言だけでもシェアする」みたいな小さなアクションを積み重ねていくと、「親しみやすい」「温かい」という印象が出やすくなるはずであります。


  3. 内向型の強みを前面に出す:内向型には外向型にはない強みがありまして、集中力、深い洞察力、粘り強さ、リスク管理あたりは、割と得意な人が多い分野じゃないかと思うわけです。なので、「じっくりデータを分析する役割」を引き受けたり、「複雑なプロジェクトを整理整頓する」仕事にチャレンジしたりといった形で、目立たないけれど確実な貢献を積み重ねることで、周囲からの信頼を地道に得るのもおすすめ。


  4. 環境を選び直す:どうしても外向型バイアスの強い職場では、努力だけで覆せない壁もあるんで、そんなときは無理をせずに自分の特性に合った環境を選び直すのもあり。たとえば、リモートワーク中心の会社、リサーチ、分析、クリエイティブ系の仕事、成果主義で評価が決まる組織などであれば、内向型の持ち味を活かしやすいはずであります。私も会社を辞めたのは、内向型が強すぎるがゆえであります。

 

ということで、内向人間にはなかなかつらいデータでしたが、特性をふまえて立ち回れば十分に生きる道はありますんで、そこらへんを意識して暮らしていこうと改めて思った次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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