結婚によるテストステロンの低下は大丈夫なのか問題
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結婚でテストステロンが下がっちゃう問題
結婚とテストステロンに関するご質問をいただきました。40代男です。結婚をするとテストステロンが下がるという研究(1)を見つけました。これが本当なら結婚で男は元気がなくなってしまうということでしょうか?
とのこと。ご質問で引用されている研究はデンマークで行われたもので、1,113人の男性を対象にしたやつですね。10年分の血液検査の結果をまとめてチェックしてみたら、結婚した男性はその直後からガクンとテストステロンが下がる現象が確認されたんだそうな。
テストステロンについては何度も書いているとおり、私たちに活力をあたえてくれるホルモン。筋肉や骨の発達にも関わり、人間の性格にも大きな影響をあたえてたりします。こいつが、結婚と同時に低下するってのはおもしろいっすねぇ。
テストステロンが下がるのはオキシトシンのせい?
研究者いわく、私たちの暮らしはホルモンにも大きな影響をあたえる。周囲の状況に体が適応していくのだ。
とのこと。まぁこれは昔から言われてる話ではありまして、過去にも結婚でテストステロンが下がったってデータは何度かあったりします。
結婚でテストステロンが下がるメカニズムについてはよくわかってないんですけど、一説にはオキシトシンが関わってるんじゃないかと考えられています。
こちらも何度か書いてるとおり、オキシトシンは「愛情ホルモン」と呼ばれる物質で、長時間のアイコンタクトなどをすると増えがち。結婚をすると性欲より愛情が優位になってオキシトシンが増え、正反対の働きを持つテストステロンが減るのではないか、と。
今回の研究ではオキシトシンレベルを計ったわけではないため、あくまで推測にすぎない。しかし、進化論的な視点から見れば、これは納得しやすい話だ。
男にとっては、妻と子供を守ることが進化的には適応となる。もちろん、それでもテストステロンは必要だが、同時に妻子への行動を変えていかねばならない。テストステロンの減少は、家族や社会との絆を生み出すために重要なのだ。
ってことで、結婚によってテストステロンが下がるのは自然の摂理なんだ、と。いかにもありそうな話ですよね。
そこまでテストステロンが下がるわけじゃない
さて、ご質問にあった「結婚のテストステロン減少は大丈夫なの?」ってポイントですけど、データを見る限りは何の問題もないのではないかと。メンタルや健康に影響が出るほど数値が減ってるわけでもないもんですから。実際、研究チームも以下のように言っておられます。結婚をしている男性は心配する必要はない。結婚によるテストステロンの低下は、人類にとってノーマルな変化だ。テストステロンを増やすためにステロイドを使う必要などはない。
そんんわけで、結婚とテストステロンの話は、ちょっとした豆知識ぐらいに捉えておくのがよさげです。
ちなみに、結婚とテストステロンの関係で言うと、2003年にスワヒリ人の男性を調べた研究もおもしろいです(2)。スワヒリ人社会では「一夫一婦」と「一夫多妻」という2パターンの結婚システムがありまして、奥さんの数によってテストステロンがどう変わるかを確かめたんですよ。
その結果は、
- 独身者よりも、奥さんが1人いたほうがテストステロンは下がる(これは予想どおり)
- ところが、奥さんが2人になると、独身者よりもテストステロンは増える
って感じだったんですな。いやー、ヒトの反応はおもしろいもんですね。以上、完全に余談でした。