幸福になれば健康になるのか?それとも健康な人が幸せなのか?問題
「楽観的な人は長生き!」って話は昔からあるわけですが、「長生きだから幸せなのか?それとも幸せだから長生きなのか?」って問題はずっとつきまとうわけです。この手の調査は全体的に観察研究が多いので、どっちがニワトリで卵なのかを判断するのが難しいんですよね。
ってことで、新しい実験(R)は「幸福度の改善で本当に健康になれるのか?」って問題を調べてくれておりました。本当に幸福感が健康レベルを上げてくれるのかどうかをチェックしたわけっすね。
研究は25〜75歳の155人を対象にしてまして、そのうちの半分だけに12 週間の「幸福感アップトレーニング」を指示したんだそうな。このトレーニングは「ENHANCE」(エンハンス)って名前で、幸福研究の大御所であるエド・ディーナー博士が開発したもの。ディーナー博士はこんな風にコメントしておられます。
ENHANCEの目標は、社会的スキル、思考法、価値観、強みについて理解を深めることであり、人生の満足度、意味、楽しさの感覚を高め、ストレスや抑うつ状態を軽減するために行われる。
ということで、全体的にはポジティブ心理学の知見を総動員して組み立てたトレーニングなわけですね。その手法をすべてまとめるのは大半なんでポイントだけを抽出しておきますと、以下のようなステップになってます。
- 最初の3週間はコアセルフの改善に注力し、個人の強み、人生の目標、価値観の特定に取り組む
- 次の5週間は体験的セルフの改善に注力し、マインドフルネスと感情のコントロールに取り組む
- 最後の4週間は社会的セルフの改善に注力し、感謝の気持ちを養い、ポジティブなコミュニケーションを育み、コミュニティとの関わりを深めるテクニックを学ぶ
それぞれのトレーニングは1回あたり1時間で、日記に書き込んだり、ガイド付き瞑想などで構成されてたとのこと。各トレーニングは訓練を受けた臨床医が直接指導するか、オンラインプラットフォームを使ってリモートで行ったそうな。全体的に興味深い内容なので、くわしいトレーニングの手法についてはまた別のエントリにまとめるかも。
そこでどんな違いが出たかと言いますと、
- ENHANCE(エンハンス)を実践したグループは主観的な幸福度が高く、病欠日数が少なかった
- さらに、ENHANCEの参加者は、プログラムを完了してから3ヵ月後にも病気になる日数が少なかった
- 幸福度が健康レベルに与える影響は、対面とオンラインでは違いがなかった
だったそうです。やはり幸福感の上昇には人間を健康にするパワーがあるのではないか、と。
研究者いわく、
先行研究によれば、幸福度の高い人は、幸福度の低い人よりも心血管の免疫系の健康状態が良い傾向にある。私たちの研究は、健康な成人の心理的な幸福感をアップさせることで、健康レベルにメリットを与えられることを示す最初のRCTだ。
幸福感は単に気分をよくするだけでないという先行研究は多いが、今回の調査はそれに新たな証拠を追加するものだ。ENHANCEのプログラムはメンタルヘルスの問題を治療することはでないが、予防ツールとして役立つかもしれない。
とのことでして、やはりポジティブ心理学の考え方は健康レベルの改善にも使えそうな感じっすねー。