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今週半ばの小ネタ:12週間のヨガで脳が激しく改善?ストレス対策には音楽?アカデミー賞で長生き


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

12週間のヨガで脳がデカくなるんじゃないか説

ヨガは脳に良い!って説は昔からあって、個人的にも可能性は高そうだなーと思ってるんですよ。まだメカニズムはよくわからないんですが、ヨガを定期的にやっている人は脳のいくつかの領域で灰白質が増えるって報告がありまして、なかなか見込みがあるんですよね。

 

 

でもって、新しい研究(R)では、脳の働きがちょっと下がってきて、なおかつ心臓や血管の病気リスクが高い女性が、ヨガによって脳の状態が改善するかどうかをチェックしてくれてます。ありがたいですねぇ。

 

 

このランダム化比較試験は、22人の女性(平均年齢61歳)を対象にしたもので、

 

  1. 主観的な認知機能の低下とひとつ以上の心血管リスク因子を持つ人だけをチョイス

  2. 参加者を、12週間のヨガ(クンダリーニヨガとキルタンクリヤ)、または記憶の強化トレーニングのどちらかへランダムに割り付ける

  3. 参加者の脳の灰白質をMRIで調べ、さらに記憶機能質問票(MFQ)を含む認知テストを指示。脳の構造と機能にどんな変化が起きたかを調べる

 

みたいになってます。12週間のヨガで、果たしてどんなメリットが得られたのか、と。

 


すると、最終的な試験では、記憶トレーニングをしたグループは、脳のいくつかの領域で灰白質体積の有意な減少が見られたのに対し、ヨガを続けたグループには灰白質体積の増加または安定がみられたんだそうな。

 

 

また、MFQのスコアには両グループ間で有意差はなかったが、ヨガグループのほうが不安と抑うつが有意に減少していたとのこと。こうして見ると、ヨガをやると不安のストレスが減り、それによってストレスホルモンの分泌が下がり、最終的に脳の厚みが増すって感じなんですかねぇ。

 


研究チームも「ヨガのトレーニングは加齢に伴う神経変性や認知機能の低下を軽減するのに役立つかも!」と言ってまして、私ももうちょい年をとったら考えるかもしれません。

 

 

 

 

ストレス対策でやけ食いするなら音楽だ!音楽を聞くのだ!

私たちがストレスのコントロールに使う戦略はいろいろありまして、運動、娯楽、薬、音楽、食べ物など、あらゆる方法で感情の乱れを調節しているはずでありあます。当然、これらの中には、運動のように無害なものもあれば、暴飲暴食のように有害なものもあるんで、そこらへんの区別をつけるのが大事なわけっすね。

 

 

というわけで、新しい横断的研究(R)では、「どういうストレスコントロールが人間には有益なのかねえ」ってとこを調べてくれててためになりました。

 


これはポーランドの成人410人が対象で、年齢は18〜77歳でBMIは15〜47ぐらい。調査には、人口統計、気分調節における音楽の利用、感情的な過食、健康的/非健康的な食行動、うつ病、不安、ストレスなどを調べたうえで、

 

  • 感情の調整に音楽をよく使う人

  • 感情の調整に食事をよく使う人

 

っていう2つのグループにわけたうえで、それぞれの差を見てます。そこで、どんな違いが見られたかと言いますと、

 

  • 感情の調整に音楽を使う人と食事を使う人たちのあいだに、平均BMIや学歴などの差はなかった

 

  • それぞれのグループを比較したところ、音楽による感情調節をあまり使わず、食べ物による感情調節をよく使う参加者は、不健康な食事、うつ、不安、ストレスレベルが高かった

 

  • 逆に、音楽ベースの感情調節をよく使い、食べ物ベースの感情調節をあまり使わない参加者は、健康的な食事をし、不安とストレスレベルが低かった

 

だったそうです。この結果を見る限り、「食事でストレス解消するよりも音楽を聞いたほうがいいかも!」って感じがしますね。

 

 

ただ、この研究には限界がありまして、参加者が対処しているストレス要因をまったく調査していないんですよね。なので、たとえば小さなストレスには音楽で対処して、大きなストレスには食べ物で対処する人がいた場合、上記と同じような結果は出る可能性があるんですよ。

 

 

なので、どこまで音楽が良いかはまだ謎なんですけど、安価で効果的なストレス対策ツールなのは間違いないんで、ツールボックスに入れておくと良いのではないでしょうか。

 

 

 

アカデミー賞を取った俳優は敗者よりも長生き

アカデミー賞の受賞者は長生き!って研究(R)が出ておりました。似たような研究は2006年にもありまして、「アカデミー賞受賞者は、それ以外の俳優より4年長く生きる」って言われてきたんですが、今回はその説を追試であらためて調べ直した感じっすね。

 

こちらはトロント大学などの研究で、1929年から2020年までにアカデミー賞にノミネートされた俳優、またはノミネート俳優の共演者として出演した俳優2,111人を選択。これをもとみんなの寿命をチェックしたところ、

 

  • 調査対象となった2,111人の俳優のうち、1,122人が2020年7月1日までに亡くなっていた。

 

  • アカデミー賞を受賞した俳優は約81歳まで生きる可能性が高く、一方でノミネートされただけの俳優、あるいはノミネートを逃した俳優の平均寿命は約76歳だった。

 

  • たとえば、アカデミー賞の女王ことメリル・ストリープは現在72歳だが、「黄昏に萌えて」で共演した他の4人の女性キャストは67歳あたりで亡くなっている。

 

ということで、2006年の結果が再現されたどころか、オスカー受賞者と非受賞者のあいだでさらに寿命の差が大きくなってますね。研究チームいわく、「余命の増加は、近年にオスカーを受賞した人、若い年齢の人、複数回のオスカーを受賞した人ほど大きかった」とのこと。不思議なもんですなぁ。

 

 

では、なんでオスカー受賞者が共演者よりも長生きするのかってところが気になりますけど、チームはこんな仮説を唱えております。

 

  • オスカー受賞者ほどきちんと健康的な食事をし、コンスタントに運動し、規則正しく眠り、薬物の乱用を避け、社会のルール順守するなど、慎重なライフスタイルを送っていた

 

  • オスカー受賞者は、人生のトラブルに遭遇したときに、より感情をコントロールして悪化を防ぐのがうまく、そのおかげでストレスを回避することができるのかもしれない

 

  • また、オスカーの受賞により心の平穏がもたらされ、視床下部-下垂体ストレス反応を緩衝するのを助け、屈辱的な拒絶や侮辱的なレビューを和らげることができている可能性もある

 

全体的に見ればまだまだ謎が多い研究なんですけど、どうやらオスカー受賞者ほど自己管理ができている人が多いのは間違いないようで、それによって賞を取るようなパフォーマンスが可能になってるのかなーって印象は受けました。

 

 

ついでに、自己管理によってもたらされた賞がストレスのバッファになり、これがさらなる寿命の延長につながっていくわけですね。やはり結局は自己管理か……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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