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世の中って、 ヤバい男ばっかり上司になりやすいのはなぜなんですか?

 


こないだ、「ナルシストの男性が上司で困る……」みたいなご質問をいただきましたが、ロンドン大学の組織心理学者トマス・チャモロ=プリミュジック先生が、「ヤバい男ばっか上司になるのはなんで?」みたいな総説(R)を出してておもしろかったです。この先生は、「自信がない人は一流になれる」で有名な方ですね。

 

 

ここで先生が言っているのは、「実は女性のほうがリーダーやマネージャーに向いてるケースが多いのに、めちゃくちゃ過小評価されてるよねー」みたいな話です。女性のリーダーが過小評価される理由としては、一般に「ガラスの天井があるのでは?」や「女性は人の管理に興味がないのでは?」みたいなことを言われがちですが、それ以外の理由があるんじゃない?ってのが先生の主張であります。

 

 

では、なんで管理職は男性ばかりなのかと言いますと、

 

  • 大半の人は「自信」と「能力」を区別できないから!

 

ってのが大きな結論になります。要するに、人間ってのは「この人は自信がありそうだから能力があるんだろうなー」と錯覚しやすいので、一般に男性のほうが女性より上司に向いてると思っちゃうんじゃないのか、と。

 

 

ってのをふまえて、先生は以下のポイントを指摘しております。

 

  • 女性より男性の上司が多いのは、基本的に男性のほうが傲慢な性質を持つ人が多いからである。これは、アメリカや日本を対象にした観察研究(R)で確認されており、どの国でも女性より男性のほうが、実際の知能より自分は頭がよいと考えていた。この傲慢さが、女性よりも男性を「能力が高い」と思わせる理由になっている。

 

  • また、一般に男性のほうがナルシストが多い傾向がある(R)。ナルシストは自信過剰なので、この自信がまた男性リーダーの増加につながる。

 

  • しかし、実際には、傲慢さや自信過剰は上司に求められる資質とは正反対であり、リーダーが有効に機能するためには、自分のエゴを捨ててグループのために尽くさねばならない。その点で、男性のリーダーは長期的にヤバい結果を生むことが多い。

 

  • 事実、ビジネスだろうがスポーツの世界だろうが、良い結果を残すリーダーほど謙虚であるケースが多い。その点で、女性は男性よりも謙虚であることが多く、26の文化から2万3000人以上を対象にした調査では、女性は男性よりも繊細で、思いやりがあるとの結論が出ている(R)。

 

  • 2013年のメタ分析(R)では、40カ国のいろんなビジネスから数千人の上司をピックアップして調べたところ、男性はいつだって女性よりも傲慢で、他人を強引にコントロールしようと試み、やたらとリスクを取ろうとする傾向が確認された。

 

ということで、つまり男性は持ち前の傲慢さによって社会でリーダーになりやすいが、その傲慢さによってチームを崩壊に導くことが多いってことですね。なんとなくわかってたことではありますが、結構データでも確認されてるもんなんですねぇ。

 

 

プリミュジック先生いわく、

 

上司になるために役立った特徴は、リーダーとしての仕事をしっかりこなすために役立つわけではなく、それどころか逆効果になってしまう。そのため、本当に有能な人よりも、大量の無能な人間がリーダーになる。

 

とのこと。うーん、バッサリっすね。

 

 

でもって、ここらへんのポイントを押さえたうえで、博士は「男性より女性の方が上司に向いているよねー」という近年の成果も取り上げてくれてます。

 

  • 1990年のメタ分析(R)では、女性の上司ほど下の者から尊敬されるし、それで部下もやる気がでるし、問題解決の方法も柔軟だしで、良い側面が多い事実が報告されている。いっぽうで、男性の上司は部下とうまくコミュニケーションが取れないケースが多いことも、数字で確認されている。

 

  • ただし、上記の研究は、そもそも優秀な女性の上司ばかりを調べているケースがあるため、サンプルが偏っている可能性がある(そもそも世間には男性の上司が多すぎるので、正確な比較ができない)。この問題については、世の中の男女差がなくなるまで、正しい調査はできないかもしれない。

 

ってことで、おそらく女性はかなり上司に向いてるんだけど、現実問題として、いまの世の中は男性ばかりなので最終ジャッジは難しいということですね。うーん、なるほど。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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