忙しい人のための運動は「10分の高強度」が最もコスパがいい理由
「運動が大事なのはわかってるけど、時間がない……」ってのは永遠の悩み。私も日々原稿に追われる身なので、「今日はジムは無理か」と思う日がちょくちょくあります。
が、近ごろそんな「運動の時間がない勢」に希望を与えてくれる研究(R)が出てまして、まずはその結論から言ってしまうと、
運動は「量」よりも「強度」のほうが大事な可能性が高い。
みたいになります。ダラダラ長くやるより、短くキツくやったほうがリターンは大きいってことですな。
まずは研究デザインをチェックしとくと、今回の研究は、平均62歳の男女73,485名(女性56%)を対象にしたもので、
- みんなの手首に活動量計を着けてもらい、7日間、24時間ほど装着して日々の運動量を測定
- 加速度データを「高強度」「中強度」「低強度」に分類し、それから8年間追跡する
みたいになります。日々の活動量を、自己申告ではなくデバイスで客観的に測定しているのが、この研究の大きな強みっすね。運動量の自己報告ってのはだいたい上振れするんで、ここはありがたいところです。
どれくらい動けば、どれくらい死亡リスクは下がるのか?
では、結果を見てみましょう。「ほとんど動かない人」と「日々の運動量が多い人」を比べた場合の死亡リスクの変化は以下のようになります。
- 1日約10分の高強度運動 → 全死亡リスク40%減
- 1日約30分の中強度運動 → 全死亡リスク40%減
- 1日90〜210分の低強度活動 → 全死亡リスク10%減
この結果は、心血管疾患や、がんの死亡リスクでもほぼ同じような傾向が認められてまして、より簡単に言うなれば、
高強度で10分の運動でも、中強度で30分の運動でも、同じように40%ずつ死亡リスクは減る
って感じになるわけです。ここで研究チームは「1分の高強度運動は何分の運動に相当するか?」も試算してまして、だいたい以下のような結果が出ております。
全死亡リスクの場合
- 1分の高強度運動 =
- 4分の中強度運動と同じぐらいの効果
- 53分の低強度運動と同じぐらいの効果
心血管死亡の場合
- 1分の高強度運動 =
- 8分の中強度運動と同じぐらいの効果
- 72分の低強度運動と同じぐらいの効果
がん死亡の場合
- 1分の高強度運動 =
- 4分の中強度運動と同じぐらいの効果
- 156分の低強度運動と同じぐらいの効果
いやー、こうして見るとなかなかの数値が出てますな。
ちなみに、世界保健機関(WHO)の2020年ガイドラインでは、
- 週150〜300分の中強度運動
- または週75〜150分の高強度運動
を推奨してますが、これは1日換算で、
- 中強度の運動:20〜40分
- 高強度の運動:10〜20分
って感じになります。今回の研究は、この推奨とほぼ一致しているわけですが、ただし重要な違いがありまして、
高強度は「単に時間の効率がいい」だけでなく、心血管死亡リスクでは中強度を明確に上回る可能性がある。
ってところがポイントになるでしょうな。同じ運動をするなら高強度の運動のほうがいい!ってことですね。
「高強度」の運動って具体的に何?
となると、「高強度って、どのくらい運動なの?」って疑問がわきますが、これはざっくり言えば、
- 会話がほぼできない
- 心拍数が最大心拍の70〜85%以上
- 全力ダッシュ、HIIT、坂道スプリントなど
ぐらいのキツさで体を動かすことを意味しております。息がハァハァと上がって、まともに声が出ないレベルの運動ですな。
一方、他の運動レベルがどうかと言いますと、
- 中強度の運動:
- 会話はできるが歌えない
- 早歩き、軽いジョギング
- 低強度の運動:
- ゆったり歩く
- 家事、軽作業
といった感じになります。
といっても、もちろん「キツい運動だけでOK!」ってわけではなく、別の2025年メタ分析(R)によりますと、
- 高強度の運動を週180分(1日約26分)ほどやることで、全死亡25%が減る
ただし「高強度だけ」よりも、中強度と高強度を組み合わせている群のほうがリスクが低い傾向がある
と報告されております。どうも重要なのは、中強度+高強度を組み合わせることっぽいんですよね。おそらく高強度の運動が心肺機能を伸ばしてくれるのと同時に、中強度の運動は炎症抑制や代謝改善に役立ちやすいからなのかもですな(あくまで観察研究なので、ここらへんは判断が難しいですが)。
ということで、ここらへんの話をまとめて、現時点で「自分ならこんな風に運動するかなー」ってのを考えてみると、
- 1日10分だけ高強度運動をする(可能なら):エアロバイク全力とか、坂道ダッシュとか、HIIT 4〜6本とか
- 余裕がある日は中強度を追加:30分ウォーキングとか
みたいになりますね。今回の研究では触れられてませんけど、ついでにここに最低でも週2回の筋トレを加えておくと、さらに良い感じに死亡リスクが下がるのではないかと思うわけです。まぁ、多くの研究では、1〜2分の高強度活動を1日に数回やるぐらいでも死亡リスクが割と下がると報告されてるんで、それぐらいの感覚で取り組んでみてもいいとは思いますが(階段を全力で上ったり、重い荷物をサッと運んでみたりとか)。
いずれにせよ、運動の時間がないなら強度を上げてみるってのは、かなり良い考え方だと思いますので、忙しい方は頭に入れといてくださいませ。



