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今週の小ネタ:SNSの無反応でメンタルが落ちる人の特徴、HSPは本当に五感が鋭いのか、トークセラピーの効果は治療後も数年残るかもだ


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

SNSの無反応でメンタルが落ちる人の特徴

SNSで思ったほど反応がもらえないと、メンタルが落ちる人の特徴を調べたぞ!」みたいな研究(R)が面白かったので、内容をチェックしておきましょう。

 

この研究はナルシシズム傾向がある人のSNS利用を、日記形式で3週間にわたって追跡したもの。ナルシシズムというと、「自分が大好きな人」といったイメージがありますが、心理学ではもう少し広く、

 

  • 他人からの評価によって自尊心を保つ

  • 自分の価値や立場を確認し続ける

  • 注目や称賛を使って感情を調整する

 

といった傾向を指しております。単なるナルシストというより、「他人からどう見られているかを使って、自分の価値を管理する人」みたいなイメージですね。

 

でもって、さらにナルシシズムは大きく「誇大型」と「過敏型」に分けられます。これがまた割と細分化されてて、

 

  • 誇大型ナルシシズム:自信が強く、自分を特別な存在だと考えやすいタイプ。これは、さらに2つの傾向に分かれる。
    • 称賛追求:魅力や能力をアピールして、注目を集める
    • 対抗意識:他人を見下したり、競争相手を敵視したりする

 

  • 過敏型ナルシシズム:表面的には自信満々だが、自尊心が不安定で、拒絶や批判に強く反応するタイプ。「自分は評価されるべきだ」と思う一方で、「誰からも認められていない」と感じやすい。

 

みたいになります。いずれも身の回りに必ず一人はいるタイプですね。

 

で、研究チームは154人の成人を集め、最初にみんなのナルシシズム傾向を測定。その後、21日間にわたって、2日おきにSNSの投稿内容や反応を記録してもらったんだそうな。

 

その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

  • 称賛追求が強い人は、SNSで積極的に自己アピールをし、ポジティブに編集された内容を多く投稿していた。それと同時に、「投稿によって新しい人とつながれた」「既存の人間関係を維持できた」と感じる傾向も強く、SNS体験への満足度も高かった。
  • 対抗意識が強い人は、意外にも自己アピールが少なく、投稿内容もあまりポジティブではなかった。SNSを通じた人間関係についても、「新しいつながりができた」「仲が深まった」とは感じにくかった。
  • もっとも大きな問題が見られたのが過敏型ナルシシズムで、このタイプの人は、SNSで実際に得られる以上の注目や人気を期待する傾向があった。つまり、「これだけ投稿したんだから、もっと反応が来るはずだ」「誰かが自分に興味を持ってくれるはずだ」と考えるものの、現実の反応はそこまで多くないため、期待と現実のギャップが生まれやすかった。

 

といった感じだったそうです。ひとくちにナルシシストと言っても、その内実によってSNSへの反応は違っていたわけっすね。

 

そして、なかでも重要なのが、SNS上での幸福感を左右していたのは、投稿の頻度や内容そのものじゃなかったってところです。「ポジティブな内容を投稿したか?」とか「どれだけ自己アピールをしたか?」みたいな行動は、「SNSで成功した」という感覚を直接は説明しなかったというんですな。

 

それよりも影響が大きかったのは、

 

  • 投稿前に何を期待していたか

  • どんな人間関係を求めていたか

  • 実際の反応をどう解釈したか

 

という内面的な要素だったそうで、これはちょっと納得ですね。特に過敏型ナルシシズムが強い人は、「この投稿で新しい人とつながれるはずだ!」という期待が外れた日に、生活満足度や気分が明確に低下してたというんですな。やっぱ何事も期待値のコントロールは大事。

 

なので、もしあなたがSNSで反応を得られずに落ち込みやすい傾向があるなら、「投稿の内容が悪かったのか?」だけでなく、「そもそも自分は何を期待していたのか?」を確認してみたほうがいいでしょう。たとえば、投稿する前に、

 

  • 「この投稿によって、どれくらいの反応を期待しているだろう?」
  • 「反応が少なかったら、自分はそれをどう解釈するだろう?」

 

と考えてみる感じですね。どうやらSNSによるダメージってのは、期待との差によって生まれるケースが多いみたいなんで。

 

 

 

HSPは本当に五感が鋭いのか

「HSPは人より五感が鋭いの?」って問題を調べた研究(R)が出ておりました。「HSP」ってのは、

 

  • 周囲の細かな変化に気づきやすい
  • 大きな音や強い光に圧倒されやすい
  • 人混みや騒がしい場所で疲れやすい
  • 感情的な出来事に強く反応する
  • 物事を深く考えやすい

 

といった傾向がある人たちのことで、「繊細さん」などとも呼ばれますな。この研究では、こういったHSPの人たちが、「普通の人には聞こえない音まで聞こえるのでは?」とか「わずかな匂いや光の違いも感知できるのか?」といったところを調べたわけです。

 

研究チームは平均23歳ほどの女性150人を集め、まずHSPを測る質問票に回答するように指示。さらに、外向性や神経症傾向などの性格特性も測定したうえで、

 

  • 聴覚
  • 視覚
  • 嗅覚
  • 温度感覚
  • 平衡感覚
  • 痛みへの反応

 

などを細かくテストしたんだそうな。そこでどんな結果が出たのかと言いますと、

 

  • HSPの傾向がある人でも、弱い音や光、匂いを感知できるという事実は、ほとんど確認されなかった。
  • 痛みについても同様で、HSP傾向が高いからといって、客観的な痛みに弱いってわけではなかった。
  • 「ある感覚が鋭い人は、他の感覚もすべて鋭い」といった、五感全体に共通する感覚能力の存在も、ほぼ見つからなかった。

 

だったそうです。HSPだからといって、決して五感が鋭いわけじゃないんですね。

 

では、HSPな人とそうでない人は何が違ったのか? 実はここでもっとも明確だったのは、本人による評価であります。

 

どういうことかと言いますと、HSPの傾向が強い人ほど、

 

  • 「自分は音に敏感だ」
  • 「痛みを強く感じやすい」
  • 「刺激に反応しやすい」

 

と答える傾向があったというんですな。研究チームいわく、

 

HSPは「感覚の鋭さ」ではなく、「感覚入力に対する主観的な経験や評価」に関わる特性だ。

 

とのこと。つまり、HSPってのは、感覚器官の性能が高いわけではなく、入ってきた刺激を本人がどう体験し、どう評価するかってとこに違いがあるのだ、と。

 

でもって、個人的にこのデータで一番興味深かったのは、

 

  • 研究チームが神経症傾向を統計的に調整したら、HSPと主観的な敏感さとの関係は、かなり弱くなった。

 

ってとこですね。神経症傾向ってのは、

 

  • 不安を感じやすい
  • ネガティブな感情が長引きやすい
  • 心配や緊張が強い
  • 不快な出来事に反応しやすい

 

といった性格特性のことでして、要するに、従来のHSP質問票が測っている「敏感さ」ってのは、独立した感覚能力ではなく、たんに神経症傾向のことを言ってる可能性があるわけです。私も神経症傾向が高めの人間なので、これはかねてより思っていたことでありました。

 

もちろん、いろいろと限界がある研究なので即断はできませんけど、HSPとは「普通の人よりも感覚が敏感」というより、「同じ刺激を、より大きな出来事として経験しやすい傾向」と考えるのがよさそうっすね。

 

 

 

トークセラピーの効果は治療後も数年残るかもだ

うつ病への心理療法は、治療が終わったあとも数年間は効果が残るかも!」みたいなメタ分析(R)が出ていて、なかなか希望のある内容になっておりました。

 

これは「うつ病に対する心理療法の効果って、どれぐらい長く続くのか?」って問題を調べたもの。心理療法とは、いわゆる「トークセラピー」のことでして、代表的なものとしては、

 

  • 認知行動療法:ネガティブな思考パターンを見直す

  • 対人関係療法:コミュニケーションや人間関係の問題を改善する

  • 行動活性化療法:少しずつ楽しい活動や意味のある行動を増やす

 

といった方法があります。これらの治療が、短期的にうつ症状を軽くすることはほぼ実証済みで、数カ月程度の期間なら、抗うつ薬と同じぐらいの効果が出るケースも珍しくないんですよ。ただし、「治療が終わったあとも効果が続くのか?」となると、意外とよくわかってなかったんですよね。

 

そこで研究チームは、191件のランダム化比較試験をまとめて分析。参加者は合計3万3691人で、すべての研究が少なくとも6カ月以上の追跡を行っており、中には10年間にわたって経過を調べたものも含まれております。

 

では、その結果をざざっと見てみましょう。

 

  • 心理療法の効果がもっとも大きくなったのは、治療開始から約3カ月後だった。この時点では、心理療法を受けた人は、通常診療だけの人と比べて、うつ症状が大きく改善しており、症状がはっきり減少する確率も、対照群より約70%高かった。

 

  • ただし、そこから効果は少しずつ低下し、治療開始から1年ほどが経つと、心理療法を受けた人と対照群の差は、中程度まで縮小した。しかし、1年以降は効果がほぼ安定し、心理療法を受けた人は、最大で8年後まで対照群より良好な状態を保っていた

 

ということで、たった数カ月ほどの心理療法によって身につけたメンタルスキルでも、長期間にわたって効果を持ち続ける可能性があるのではないか、と。これはうれしい結果ですねぇ。

 

さらにデータを見てみると、回復率で見ても同じような傾向が確認されているのがうれしいところ。なんでも、治療から5年が経った時点でも、心理療法を受けた人は、対照群より回復状態を維持している確率が約14%高かったそうな。

 

もちろん、まだまだ不確実なところはあるんだけど、短期の治療が数年後のメンタルにまで影響するのは、なかなか大きな話でしょう。やっぱ認知行動療法ってのは、

 

  • 自分の思考のクセに気づく
  • 気分が悪いときの対処法を身につける
  • 人間関係のパターンを修正する
  • 落ち込んだときでも行動を再開する

 

といった、再利用可能なスキルを学ぶ側面がありますからね。そのおかげで、治療が終わったあとも、日常生活の中で効果が積み重なっていくんでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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