今週末の小ネタ:ストレスは「予想」だけでもヤバい、踊れる音楽で脳の機能がアップ、人間は他人のどこを見て信頼するのか
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ストレスを予想するだけでメンタルがやられる
「ストレスを予想するだけでもメンタルはヤバい!」みたいなオモシロ研究(R)が出ておりました。ストレスがメンタルを悪化させるのは間違いないものの、予想するだけでも良くないよーってことですね。
ここでどんな実験が行われたかと言いますと、
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2018年にアメリカで行われた中間選挙で研究を実施。選挙への参加者に、みんなの政治にかんする姿勢を尋ね、その後、29日間にわたって毎日アンケートに参加してもらう
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参加者には、自分がどれぐらいネガティブな気分なのかを毎日応えてもらい、動揺、敵意、恥ずかしさ、緊張、恐怖という5つの感情をどれぐらい感じているかをチェック
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ついでに、選挙の報道に対してストレスを予想するかどうかもチェック
みたいになってます。どうもアメリカでは選挙が結構なストレス源になるようで、過去には「選挙が不安やストレスの増加、睡眠の質の低下と関連する!」と報告したデータもあったんだそうな。それぐらい選挙への思いが強い人が多いわけっすね。
すると、研究チームの予想どおり、「選挙のストレスを予測するとネガティブな気分は激増した!」って結果だったそうで、選挙の前後に「自分はストレスを感じる可能性が高いだろうなー」と答えた人ほどメンタルの状態が悪化したそうな。特にストレスレベルが高いのは選挙前と選挙当日だったそうで、選挙後のほうがストレスは感じる可能性が低かったそうな。予想のストレスは現実のストレスよりも大きい!ってことで、これは「無(最高の状態)」にも書いたことっすね。
研究チームいわく、
私たちは、将来のストレスを予想するだけで、そのストレスを直に経験するのと同じくらいの影響がある。
ってことで、実際のストレスもよくないけど「予期ストレス」も同じぐらいよくないよーってポイントが強調されてました。このポイントは、普段から自覚しておくだけでも、だいぶ日常のストレスをやわらげられそうですね。
踊れる音楽で脳の機能がアップする説
グルーヴィーな音楽で脳が活性化するぞ!というオモロ研究(R)が筑波大学などから出ておりました。グルーヴィーな音楽ってのは、簡単に言えば「踊りたくなるような音楽」のことで、EDMでもファンクでもトランスでもヒップホップでも、ジャンルを問わずに体が動くような曲を意味してるらしい。
実験では、51人の男女に「グルーヴィな曲」か「ホワイトノイズ」を聴くように指示。その前後にストループ課題を行いつつ、さらに脳の血流を調べて前頭前野の働きをチェックしたそうな。ちなみに、ここで使われたグルーヴィな曲は、研究チームがガレージバンドで作ったものだそうで、既存曲を使ったわけじゃないらしい。
その結果について、筑波大学の宗谷先生は次のように説明しておられます。
結果は驚くべきもので、グルーヴ感のあるリズムは、脳の実行機能を高め、l-DLPFCの活動を高めることがわかりました。
ということで、グルーヴィな曲によって、グルーヴ感のある音楽に反応する人ほど実行機能のテストの成績が良く、前頭前野の重要な領域が活性したらしい。実行機能ってのは、人間が決断をするときなどに使う脳の働きでして、つまりグルーヴィな曲を聞くことで、
- 記憶力
- 注意力
- 感情のコントロール
- モチベーション
- 計画性
- 問題解決
などが高まる可能性があるわけですね。うーん、すごい。
このような現象が起きる理由はまだはっきりしないとこもありますが、いまのところの考え方としては、
- グルーヴィーな音楽を聞くと、ビートに乗ることでポジティブな感情が生まれ、運動と報酬システムに関連する神経ネットワークを活性化
- それによって感情だけでなく認知に関わる脳機能も活性化するのかも?
みたいになります。これは音楽好きには良い話っすね。
ちなみに、実行機能に効きやすそうな音楽の条件としては、
- 低から中程度のシンコーペーションを使っている(たまにリズムを崩して変化を与えること)
- ドラムやベースサウンドといった低音が効いてる曲ほど良さそう
といったあたりが大事っぽいですね。そう考えると、チェンスモの「セルフィー」とかエリントンの「A列車で行こう」みたいな曲なんかは良さそうな感じがしますな。
人間は他人のどこを見て信頼するのか?
現代において「信頼」ほど重要な要素はないのは言わずもがなですが、「それじゃあみんなどんなところで信頼性を判断しているの?」って話(R)が出てて参考になりました。
この研究は、「みんな人間のどこを見て信頼しているの?」ってのを調べたもので、参加者にお金のやり取りをするゲームを行うように指示。実際にゲームを行う前に、「これからあなたがゲームを行う相手は、協調性が低くて外向的が高い人です」みたいな説明を行い、そのうえで相手をどこまで信頼するかを調べたんだそうな。協調性と外向性の意味がわからない方は「ビッグファイブ検査」などをご利用ください。
で、その結果がどうだったかと言いますと、
- ほとんどの参加者は、協調性が高い相手を信頼し、協調性が低い相手よりもお金をわたす可能性が4倍もあった
- 外向性が高いかどうかは、信頼の高さとは有意に関連していなかった
って感じだったそうです。結局のところ、人間の信頼性を決めるのは協調性であり、外向性の有無はそこまで影響しないのではないか、と。
また、ここでは別の実験も行われていて
- まずは参加者に自分の性格を評価してもらい、その1~2週間後に3~6人のグループに分ける(そのほとんどが初対面)
- グループでみんなに信頼性を測るゲームに参加してもらう
って感じで、自己申告による性格の違いと、周囲から集まる信頼性の差を調べたんだそうな。その結果はやはり上記と同じで、
- 自分を「協調性が高い」と評価した人ほど、グループの他のメンバーから信頼される傾向があった
- 外向性を含む他のビッグファイブ特性は、信頼と関連していなかった
ってことでして、やはり信頼度と協調性にのみ強い相関が見られたらしい。つまり、この実験をざっくりまとめると、
- 私たちは外向性が高い人を信用するわけではない
- 協調性は、他者からの信頼を有む唯一の特性である
みたいになりますね。協調性ってのは、強すぎると人生の足を引っ張りますが、ほどよいレベルで維持できれば信頼の源泉になるようなんで、ぜひ適切にコントロールしときたいとこですなー。