睡眠をガッツリ改善するための「運動メニュー」の考え方
運動が睡眠によいのは間違いなく、このブログでも過去に、
といったエントリをアップしております。いまのところ、不眠には認知行動療法が第一に推奨されることが多いんですが、すべての人に有効ってわけでもないので、その場合は運動を取り入れてみるのも良いでしょう。
ただ、ここで「睡眠を改善するにはどんな運動が良いの?」ってのはイマイチよくわかっておらず、上に挙げたエントリでも「ヨガがいいのでは?」「有酸素運動がベストでは?」みたいにいろんな結論が出てまして、なかなかこれといった結論を出すのが難しいんですよね。
ということで、新しいメタ分析(R)は、この問題について参考になる答えを出してくれてますんで、内容をチェックしてみましょう。
これは、不眠症に悩む男女に行われた研究19件をまとめたメタ分析で、1,233人(年齢は26~69歳)のデータを対象にしております。実験で使われた運動の種類は様々で、
- 最大心拍数の40%~85%でのランニング、サイクリング、ウォーキングなどの有酸素運動(14研究)
- 筋力トレーニングとmin組み合わせた有酸素運動(3研究)
- アクアフィットネス(1研究)
が含まれております。 参加者は週に1~7回運動し、1回の運動時間は10~75分。 実験の期間は4週間から12ヵ月となっております。
でもって、これらの運動をした後で客観的な睡眠の指標と、主観的な睡眠の指標とくらべて見たら、結果はこんな感じになりました。
- 全体として、運動は客観的な睡眠を以下のように改善した。
- 睡眠効率のアップ(効果量は中程度)
- 夜間に目が覚めちゃう問題の改善(効果量は中程度)
- さらに、運動は主観的な睡眠を以下のように改善した。
- 自己報告による睡眠の質の改善(効果量は大程度)
- 自己申告による睡眠時間の改善(効果量は中程度)
- 自己報告による睡眠潜時の改善(効果量は中程度)
ということで、「運動は睡眠に良い!」って事実が、あらためて確認された感じであります。ただし、データを見ていると、かなり研究間で結果にのばらつきがありまして、「運動で効果が出ない人もいるんだろうなぁ……」って印象であります。運動で睡眠が改善しない人がいる理由は謎なんで、これは試してみるしかないですね。
で、さらに、この文献から最も大事な教訓を得るならば、
- 運動強度が高いほど睡眠は改善しやすい!
って傾向が確認されたところでしょう。辛いトレーニングほど睡眠を改善してくれる理由としては、
- 高強度の運動は、睡眠に関わる身体の生理学的・生化学的プロセスをより効果的に刺激し、覚醒や不安レベルをより低下させ、エンドルフィンやセロトニンといったホルモンのレベルをより顕著に上昇させる。
- 強度の高い運動をすると体温が激しく上がるので、運動後の冷却効果が大きくなり、寝床に入ってすぐに眠りに入りやすくなる。
- 高強度の運動ほど体内時計に与える影響が大きいので、夜になると眠気がガッツリと強くなる。
- 高強度の運動ほど肥満になりにくくなるので、睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害が起きにくくなる。
といったものが考えられております。いずれもハッキリしない仮説ではありますが、どれもありそうな話じゃないかと。
ちなみに、「強度の高い運動ほど睡眠の質が改善する!」と言っても、「強度の高い運動」の基準は人によって違うので、そこらへんはご注意ください。自分のフィットネスレベルに合わせて運動強度を調整し、少しずつ強度を上げていくのが、睡眠に関するベストな運動法である可能性が高いんで。
そう考えると、ざっくり以下のようにエクササイズを組み立てて、自分が「ぐっすり眠れたかどうか?」ってところをチェックしてみると良いかもしれません。
1. 初心者向けプログラム
週に4回、各回30分間の早足ウォーキングを行う。徐々に心拍数を上げ、運動後は軽いストレッチを行う。
または、10〜15秒間のスプリントを行い、1分間歩いて休憩するのを5〜10回繰り返す。
2. 中級者向けプログラム
週に3回、各回45分間のランニングを行い、その後15分間の筋力トレーニングを追加。腹筋や腕立て伏せ、スクワットなどの自重トレーニングを中心に行う。
または、200メートルのスプリントを行い、次に200メートルを軽くジョギングまたは歩いて回復。これを6〜10回繰り返す。
3. 上級者向けプログラム
週に3〜4回、30分間のHIITセッションを行う。短時間で高強度の運動を行い、短い休憩を挟んで繰り返す。また、 週に1〜2回、1時間のサイクリングを、特に強度を意識して行う。
または、100メートルスプリントを行い、その後10回のバーピーと20回のジャンピングスクワットを実行。これを5〜10セット繰り返す。さらには、高低差のある地形でのランニングやハイキングで、心肺機能と筋力を強化する。
まぁ、これはあくまでサンプルなので、あとはご自分でカスタマイズしていただければ幸いです。基本的には、自分の体感で「これはちょっとしんどいな……」と思えるぐらいのエクササイズをするように心がければ、睡眠にも良い影響が出るだろうと思う次第です。どうぞよしなに。