好かれる人の秘密はこれだ!第一印象は“素の自分”の使い方に左右されるぞ!みたいな研究の話
拙著「最強のコミュ力の作りかた」にて、わたくし「他人にはできるだけ自分の素を見せたほうがいいよー。その方が好かれるよー」みたいなポイントを強調しております。これは、心理学の世界における割と古典的な知見でして、他人に合わせようとして自分を偽ったり、何か恥ずかしいことを押し隠したり、ネガティブな感情を抑圧し続けたりすると、相手には「なんだかこの人うさん臭いな……」って印象を与えてしまい、嫌われやすくなってしまうんですよね。これは直感的にも理解しやすい考え方じゃないかと思います。
が、何事にも例外はあるものでして、素の自分さえ出してしまえば絶対的に第一印象が良くなるって話でもなかったりします。新しい研究(R)は、その辺を掘り下げてくれていて“使える”内容になっているので、要点をチェックしておくと、今後のコミュニケーションに役立つでしょう。
この研究は、カナダのブリティッシュコロンビア大学が行ったもので、自己肯定感の高低が第一印象にどのような影響を与えるのかを調べております。具体的には、以下の2つのグループを対象に、自己肯定感が第一印象に与える影響を調べたんですな。
- スピードデートに参加した378人(恋愛的な出会いの場)
- 友人作りの交流会に参加した約300人(プラトニックな関係)
参加者には事前に自己肯定感を測るテストを受けてもらい、それぞれのイベントに参加した後には「相手をどのくらい好ましく思ったか」「相手の性格をどう評価したか」などを教えてもらったんだそうな。
それでは、実験の結果、何がわかったかを見てみましょうー。
- 恋愛の場(スピードデート)での結果
- 自己肯定感が高い人は、素を出したほうが性格が相手に正しく理解されやすかった。ただし、それが「どれだけ好かれるか」には影響しなかった
- 自己肯定感が低い人は、素を出したほうが性格を正確に理解されるが、むしろ好かれにくくなった
- 友情の場(友人作りの交流会)での結果
- 自己肯定感が高い人は、素を出したほうがより正確に理解され、かつ好かれやすかった
- 自己肯定感が低い人は、素を出したほうが正しく理解されるが、やはり好感度が下がった
うーん、なんだか複雑。ざっくりまとめると、自己肯定感が低い人は「自分の本当の姿を見せる」ことが逆効果になる可能性があることもある感じっすね。あまり自信がない人は、最初の印象で「ありのままの自分」が相手に伝わっちゃうと、むしろ距離を置かれてしまうかもしれないわけっすね。
また、この研究では「自分らしく振る舞う」ように指示された人々が、ビデオインタビューでどのように評価されるかも調査してまして、その結果、
- 「自分らしくいる」と意識した人は、他人からより正確に理解されたが、好かれやすくなるわけではなかった(嫌われるわけでもなかった)
- 自己肯定感の低い人でも、「自分らしさ」を意識すれば、正確に理解されるようになった
みたいな結果が出たんだそうな。つまり「ありのままの自分を見せること」ことで自分をちゃんと伝えることができるが、それが必ずしも「第一印象の改善」にはつながらないってことですな。
というと、「やはり序盤は素の自分を隠して印象が良くなるように振る舞ったほうが良いのでは?」と思ってしまうかもですが、それもまた早計だったりします。というのも、この研究が示唆しているのは、第一印象にとって最も重要なのは「あらゆる素を出すこと」ではなくて、「ポジティブな自分の素を意識する」ってことなんだよーってポイントだからです。
当たり前だけど、誰でもポジティブな側面とネガティブな側面を持っているもので、その時の気分や状況によって表に出てくるパーソナリティーが変わってくるわけです。なので、「素の自分さえだせばいいんだ!」と思って、自分のネガティブな側面ばかり強調したところで好かれにくいのは当然なわけです。特に自己肯定感が低い人は、自分のネガティブな側面に意識が向きやすいので、ついつい自分のポジティブな側面を表に出すことを忘れがちになるんですな。
ということで、研究チームは、「自分を見せるなら、あなたが気分がいいときに自然に表に現れる『素の自分』を見せたほうが良いよ」とアドバイスしてくれてます。ネガティブな感情に囚われているときは、誰でもネガティブなパーソナリティーが「素の自分」になりやすいので、気分が良くてリラックスしている時の「素の自分」を意識したい方がいいよーってことですな。
つまり、「素の自分」を出して第一印象を良くするポイントとしては、
- 自己肯定感が低い人は、まずは根本的な自己肯定感の改善が望まれる。
- 自己肯定感がうまく育たないうちは、「気分が良いときの自分」を思い返し、その状態に意識をフォーカスさせる。
- ただし、自己肯定感が低い人は「気分が良いときの自分」をうまく思い出せないことも多いので、事前に友人や家族などに「自分がリラックスしてコミュニケーションができている時ってどんな感じ?」と聞いてみるとよし
といった感じになるでしょうね。繰り返しになりますが、コミュニケーションにおいて「素の自分を見せる」ことの重要性は変わりません。ただし、これは自己肯定感が低い人にはバックファイアを起こすこともありますんで、このケースにおいては慎重に考えてくださいませ。
また、このデータは、決して「ポジティブな自分を見せるようにがんばれ!」って話でもないので、そこも注意してください。あくまで、自分が持つ二面性の中から、「自分の中にあるポジティブな素の要素」を出した方が第一印象が良くなるってことですんで。また、これが長期の関係性になってくると、ネガティブな側面も少しずつ出していかないと、さらに親密な関係には至らなかったりしますので、そこも頭に入れておきたいところです。長期的な人間関係については「最強のコミュ力の作りかた」に詳しく書いたので、こちらも併せてご参照ください。