RPEで筋トレの筋力アップ効果を最大化しようぜーというメタ分析の話
皆さま、トレーニングで「RPE(主観的運動強度)」をどのくらい意識していらっしゃいますでしょうか。
以前にも書いたとおり、RPEってのは「どのくらいの強度でトレーニングを行ったか」を評価する指標のこと。パワーリフティングを中心に広まった概念で、簡単に言うと「どれくらい限界に近いか」を数値化したものです。たとえば、
- RPE 10 → もう1回もできない(完全限界)
- RPE 9 → もう1回ならギリギリできる
- RPE 8 → まだ2回できる
- RPE 7 → まだ3回できる
- RPE 6以下 → 余裕あり
といった具合になりまして、簡単に言えば「RPEが高い=限界に近い」「RPEが低い=余裕がある」ってことですね。
この判断法がかなり使えるってのは過去にも書いた話で、「追い込むほど強くなる」と考えて毎回RPE9〜10で限界までやっている人もいれば、「無理せず適度にやるのが大事」とRPE5〜6くらいで調整する人もいるでしょう。私も筋トレをするときはRPEで7〜8ぐらいを目指しながらやっております。
で、新しいメタ分析(R)は、「筋力を最大化するにはどのRPEがベストなの?」って疑問を掘り下げてくれていて勉強になりました。
このメタ分析は、RPEと筋力の関係を調べた55の研究データを統合したもので、類似研究の中でも割と大規模な感じでよろしいですね。細かい分析は置いておいて、まず最大のポイントを一言でまとめると、
- RPEの違いは筋力向上にほぼ影響しない
って結論が出ております。多くの人は「限界まで追い込むほど強くなる」と考えがちですが、データ的には「それほど変わらない」という結果が出たわけで、これはちょっと面白い結論ですね。
ただし、ここにはちょっとした注意点があったりもします。というのも、今回のメタ分析は負荷(%1RM)を統一した場合の話なんですよ。
どういうことかと言いますと、「RPE10で5回やる場合」と「RPE5で5回やる場合」を比べたら、当然RPE10の方が高重量を扱えるので、筋力アップにはプラスに働くはずであります。しかし、このメタ分析では負荷の違いを調整しているので、当然ながら、RPEが筋力向上に与える影響が統計的にほぼ消えちゃうんですよね。
もうひとつ、RPEと筋力向上を考える上では「疲労の影響」も重要であります。基本的に、RPEが高くなるほど疲労も増すので、限界まで追い込むほど回復に時間がかかり、結果的にトレーニング頻度が下がる可能性もあるんですよ。こうなると、シンプルに「RPEの違いは筋力向上にほぼ影響しない」とも言いづらいですからね。
ということで、この点については、同じ研究チームが追試をしてくれてますんで、こちらも参照しておきましょう。研究チームは、トレーニングを以下の4グループに分け、筋力向上と疲労の関係を調査しました。
- グループ1:RPE 4〜6(4〜6回の余裕あり)
- グループ2:RPE 7〜9(1〜3回の余裕あり)
- グループ3:RPE 7〜9(最後のセットだけ限界まで)
- グループ4:RPE 10(毎セット限界まで)
この状態で一定期間トレーニングを行い、筋力がどれぐらいアップしたのかを測定してみたら、結果は以下のようになりました。
- 最も筋力が伸びたのは「RPE 4〜6」と「RPE 7〜9」のグループだった
- RPE 10のグループは疲労が大きすぎて、筋力の伸びがイマイチだった
これはかなり納得度が高い結果で、簡単に言えば「毎回限界まで追い込めばいい」って考えは間違いで、適度なRPEでトレーニングを行う方が効率的に筋力を伸ばせる、ということになるわけですね。まぁ当然と言えば当然な気もしますが。
では、「結局どのくらいのRPEでやればいいの?」って話ですが、今回の研究からすると、RPE 5〜8の範囲が最適っぽいと言えるんじゃないでしょうか。ざっくりまとめると、
- RPE 5〜6 → 軽めのトレーニング日や、技術練習に向いている
- RPE 7〜8 → 最も効率的に筋力を伸ばせるゾーン
- RPE 9〜10 → 大会前や短期的な刺激としてはアリ
ぐらいの感じになるんじゃないでしょうか。オフシーズンに「筋肉量を増やしたい」場合は、少しRPEを上げるのもアリですが、いつも限界まで追い込むよりも、適度な強度を保って継続する方が成果が出るのは明らかですからね。
ってことで、今回の研究結果をまとめてみると、以下のようになります。
- 筋力向上のために最適なRPEは「5〜8」
- RPE10(毎回限界)は疲労が大きく、効率が悪い
- オフシーズンならRPEを少し上げてもOK
- 大会前なら高RPEの練習を入れるのもアリかも
そんなわけで、「筋トレはとにかく限界まで!」と思っていた人は、ちょっと力を抜いて適度なRPEでやる方が、長期的には強くなれるかもしれません。どうぞよしなにー。