筋トレの研究って「初心者」ばっか調べてない?じゃあ、上級者には参考にならなくない?問題をどう考えるべきか
マニアックな話で恐縮ですけど、昔から筋トレクラスタのあいだでは、「筋トレの研究なんて、初心者ばかりを対象にしてるから参考にならない!」みたいな話があるんですよ。確かに、従来の筋トレ研究ってのは、
- 実験期間が6〜12週間と短い
- トレーニング頻度が少ない
- 全身ではなく、一部の筋肉しか鍛えない
- 普段のスポーツや仕事による疲労を考慮していない
といった問題があるんですよ。なので、実際のトレーニング環境とは、かなりかけ離れてるんじゃないかと考えられるわけですな。
なかでも大きいのが、「参加者のトレーニング歴が短すぎるんじゃないの?」という疑問であります。筋トレを始めたばかりの人は、わりと何をやっても筋肉が増えるのに対して、何年も鍛えている上級者は、トレーニングの内容を少し変えたぐらいじゃ、ほとんど体が変わらないですからね。だとすれば、初心者を対象にした実験の結果を、そのまま上級者にも当てはめていいのか?という話になるわけです。
では、「実際のところ、筋トレ研究の参加者は、どれぐらい初心者ばかりなのか?」ってことで、この問題を調べた新しいレビュー(R)が出ておりました。
こいつがどんな研究だったかと言いますと、研究チームは、2010〜2024年に発表された筋トレ分野の系統的レビューとメタ分析から、代表的な26本を選択。そこで扱われた参加者、延べ18,574人のトレーニングレベルを調べたんですよ。
対象となったレビューが検討してたのは、
- 種目の選び方
- 種目の順番
- トレーニング量
- 使用重量
- セット間の休憩
- トレーニング頻度
- 動作のテンポ
みたいに、筋トレのプログラムを組む際におなじみの要素であります。さらに、選ばれた26本のレビューは、合計で7,000回以上も引用されてるのがナイスなポイント。つまり、現在の筋トレ指導に大きな影響を与えてきた研究をまとめてチェックしてるってことで、現在の筋トレ研究を代表する内容になってるわけです。
で、その結果は、なかなかインパクトのあるものでして、参加者のトレーニングレベルを分類してみたところ、
- 運動習慣がない、または筋トレ未経験:70.5%
- レクリエーションレベルから発展途上のトレーニー:27.2%
- 高度に訓練された選手や国内レベルの競技者:1.8%
- 国際大会やプロレベルの選手:0.45%
- 世界トップレベルの選手:5人(全体の0.03%)
みたいになってたそうな。要するに、参加者の97.7%は初級トレーニーで、高度に鍛えたアスリートは、全体のわずか2.3%しかいなかったってことですな。この偏りは研究テーマにかかわらず同じで、種目やボリューム、重量など、どの項目を調べたレビューでも、参加者の90〜100%は上級者じゃなかったらしい。なので、一般に言われる「筋トレ研究は初心者ばかり」という批判は、かなり正しいんだと言っていいっすね。
となると、次の問題は「初心者を対象にした研究は、上級者の役に立たないのか?」ってところになりますが、個人的には、そこまで極端に考える必要はないんじゃないかと思っております。
と言いますのも、初心者と上級者のあいだに、根本的な生理機能の違いがあるわけではないからであります。トレーニングによって筋肉に負荷がかかり、そこから回復して適応するって基本原理は、初心者でも上級者でも変わらないですからね。
では、なにが大きく違うのかと言いますと、主に「変化の大きさ」であります。筋トレを始めたばかりの人は、少ない刺激でも大きく成長するんだけど、トレーニングを続けるほど筋肉の成長は遅くなり、同じ刺激から得られる効果も小さくなっちゃうんですよね。
実際のところ、別の大規模なメタ分析(R)では、筋トレで筋肉が増える現象ってのは最初の数カ月で大きく進み、その後は時間とともに伸びが鈍くなることが報告されてたりしますからね。平均的な筋肉量の増加率は、
- 6週間:約5.6%
- 12週間:約7.5%
- 24週間:約9.4%
- 36週間:約10.5%
- 78週間:約12.6%
というカーブを描いてまして、最初の12週間で約7.5%増える一方、その後は1年以上かけても追加で5%ほどしか増えてない計算になります。
もちろん、これは多数の研究を統合して推定した値なので、その点には注意が必要であります。それでも「トレーニングを続けるほど、追加で得られる筋肉は少なくなる」という傾向はよくわかるんじゃないでしょうか。
つまり、私の考え方としては、「初心者に効いた方法は、上級者には効かなくなるのでは?」ってことではなくて、筋トレの上級者になるほど、
- 必要なトレーニング量が増える
- 筋肉が増えるまでに時間がかかる
- 得られる変化が小さくなる
- 個人差や測定誤差の影響が大きくなる
と考えたほうが正確なんだと思うわけです。
たとえば、初心者なら12週間で筋肉が目に見えて増えるんで、20〜30人程度の実験でも効果を検出しやすいじゃないですか。一方で、上級者の筋肉が12週間で0.5%しか増えなかったら、超音波やMRIを使っても、その変化が本物なのか、ただの測定誤差なのかを判断するのが難しくなりますからねぇ。あと、上級者ほどこだわりのトレーニング法を持ってるんで、「研究のために、普段とは違うメニューを3カ月やってください」と頼んでも、なかなか参加してくれないっていう問題もありますが(笑。
では、一般のトレーニーは、筋トレ研究をどう読めばいいのか? ってことですけども、いまの私の解釈としては、ひとまず以下のように考えておくといいんじゃないかと。
- 初心者を対象にした研究でも無視しなくてもよい:ある方法が複数の研究で一貫して筋力や筋肉量を増やしているなら、上級者にも方向性として当てはまる可能性は高め。ただし、「初心者が10%伸びたから、自分も10%伸びる」とは考えないほうがよくて、上級者では効果が小さくなり、同じ結果を得るために、より多くの時間や刺激が必要になると想定するのが無難。
- 研究で使われたメニューを、そのままコピーしないこと:多くの研究は、「条件Aと条件Bのどちらが優れているか」を調べるために行われる。なので、そこで使われたプログラムが、個人にとって最適だとは限らない。特にスポーツをしている人は、筋トレ以外の練習量、疲労、試合日程なども含めて調整する必要がある。
- 上級者ほど短期的な結果に振り回されないこと:トレーニング歴が長くなるほど進歩は小さくなるため、6〜12週間で目立った変化がなくても、その方法が無効とは限らず。体重、周径、トレーニング記録、写真などを使い、数カ月から年単位で変化を見る必要がある。
ということで、話をまとめると、
- 筋トレ研究の参加者は、約98%が上級者ではないため、研究で得られた効果の大きさを、上級者にそのまま当てはめることはできない
- ただし、初心者と上級者で筋肉が発達する基本原理が変わるわけではないので、初心者研究も「どちらの方向に効果がありそうか」を判断する材料にはなる
- 上級者やアスリートは、競技練習、疲労、移動、試合日程なども考慮する必要がある
といったところでしょう。当然ながら、筋トレ研究は誰にでもそのまま使えるわけじゃないものの、少なくとも正しい方向は教えてくれるんで、いくばくかの参考にはなるでしょう。特に上級者ほど、研究から基本的な方向性を借りつつ、自分の疲労や回復、生活スケジュール、長期的な記録を使って微調整していく必要がありましょうな。



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