禁煙の成功率を3倍に高めるペンシルバニア大学式の心理テク
言うまでもなく、禁煙ってのは超難しいわけです。たとえば2016年のメタ分析(1)によれば、もっとも成功率が高いバレニクリンでも成功率は33.2%ぐらい。それぐらいニコチンの依存性は大きいわけっすな。
とはいえ、 禁煙は長寿と繁栄の一番ピンなんで、どうにかしてストップをかけたいところです。そこで、近ごろ「禁煙の成功率を3倍に高める方法があったよ!」って論文(2)が出まして、なかなか熱いことになっておりました。
これはペンシルバニア大学の研究で、6131人の喫煙者を対象にしたもの。実験では全体を4つのグループにわけております。
- 「禁煙すると健康にいいよ!」と主張するテキストを読む
- ニコチンガムやパッチを無料で使い放題
- 電子たばこを無料で使い放題
- ニコチンガムやパッチの無料提供+禁煙に成功したら600ドルのボーナス
- ニコチンガムやパッチの無料提供+禁煙に成功しないと600ドルを取られる
そのうえで6カ月の経過をチェックしたところ、こんな結果が出たんですな。
- ニコチンガムとかパッチは高価なわりにメリットが少ない。というか、たんに「禁煙は体にいいよ!」ってテキストを読んだときとほぼ効果は変わらない。
- ところが、金がからむと禁煙の成功率は一気にはね上がる。その効果はなんと3倍
ってことで、禁煙を成功させるコツは結局カネなんだ、と。研究者いわく、
お金を使ったインセンティブプログラムがすばらしいのは、喫煙者が禁煙に成功したときにだけコストが発生する点だ。逆に定番の禁煙グッズなどは、禁煙に成功しようがしまいが延々とコストがかかってしまう。
とのこと。わかりやすいですね(笑)
さらに、同じインセンティブでも効果が違ってまして、
- 禁煙成功でボーナスをもらうパターンよりも、禁煙失敗でお金を失うパターンのほうが効果は大きい
って傾向もあったみたい。つまり、イアン・エアーズ先生がやってる「stickK」みたいな方式のほうが禁煙には向いてるわけですな。
これは経済的には同じコインの両面のはずだが、私たちは得よりも損の方を嫌がる。喫煙者に「成功しないと損するリスクがある」と思わせることで、より行動へのモチベーションが得られるだろう。
ここらへんは禁煙のみならずダイエットにも言えることですわな。
もっとも、これらのテクニックを使っても、やっぱり禁煙が難しいのも確かではあります。この実験のデータを見ますと、
- 結局、禁煙に成功したのは平均で2.9%!
- もっとも熱心に取り組んだ参加者だけに絞っても成功率は12.7%!
って厳しい結果になってたりしますからねぇ。やっぱ認知行動療法なんかもふくめつつ、やれることはすべてやってくしかないんでしょうなぁ。