音楽を聴くと良いアイデアが出なくなる?じゃあBGMはどう使うのが正しいの?みたいな話
その昔、BGMは作業から気を散らすだけでメリットがない!なんて話を書いたことがありました。音楽を聴いてると、どうしても人間の脳はそっちに引っ張られちゃって、最終的に作業効率が下がるみたいなんですな。
BGM好きにはなんとも辛い結論ながら、なにせ人間の脳はマルチタスクが大の苦手なんで、音楽を聴きつつ作業効率を上げるのは無理っぽいんですよね(まぁまだ確定的な話でもないですが)。
でもって新しいデータ(R)では、「音楽で創造性が下がるぞ!」って結論になっててまたもBGM好きは涙目な感じ。
これはランカスター大学などの実験で、30人の男女に「遠隔性連想検査」をやってもらったんですよ。これは以前にも「自分の頭の良さは『あるなしクイズ』でわかる」でも軽く説明したとおり、日本でいう「あるなしクイズ」に近いワードゲームであります。
「遠隔性連想検査」は、昔から「ワーキングメモリの性能がどれだけ高いか?」や「良いアイデアを思いつくことができるか?」を測るために使われていて、信頼性もかなり認められてるんですな。心理学系では超定番っすね。
で、被験者には19問のクイズに挑んでもらいまして、その際に全体を4グループにわけてます。
- 歌詞がよくわからん曲をBGMに流す(King of Wishful Thinkingのスペインバージョンを使ったらしい)
- みんなが知ってる大ヒット曲をBGMに流す(ファレル・ウィリアムスのHappyを使ったみたい)
- 歌詞がない曲をBGMに流す(King of Wishful Thinkingのインストバージョンを使ったらしい)
- 無音の状態でクイズを解く
そのうえで結果を見たところ、
- どんなタイプのBGMだろうがテストの成績はガッツリ下がった!
って結論だったんですな。創造性が下がらないのは無音のときだけで、BGMはとにかく創造性を下げる可能性があるのではないか、と。
この結果について研究チームは、「遠隔性連想検査を解くには脳内で単語をつぶやく必要があるからでは?」と考えておられます。ワードクイズを考えるときは、誰でも心のなかで「えーと、この3つに共通するのは……」みたいに言葉で考えますけど、この作業と音楽がバッティングしちゃうんじゃないか?って話ですな。
そのため被験者は、音楽の変化に影響を受けやすくなってしまう。これに対し、図書館の環境音などは変化が激しくないため、創造性に悪影響を与えにくい。
つまり、音楽は情報量が多すぎるせいで、どうしても言語を使う作業とは食い合わせが悪いってことですね。
そのため、ころころとピッチや音色が変わるような音楽は、変化が少ない音楽よりもダメージが少ないはずだ。現代のポップソングよりは、クラシック音楽のほうが悪影響はないかもしれない。
というわけで、この実験を読む限りは、ポップソングよりもアンビエントのほうがよさげっすね(もちろん無音がベストなのかもですが)。
ただし、過去には今回の研究とは食い違う結果も出てまして、2017年の実験では「ビバルディの『四季』みたいに楽しい曲を聴くと、思考が拡散して創造性が上がるよ!」って傾向も確認されてるんですよねぇ。こちらの研究では、
- 楽しい曲で良い気分になる
- リラックスして思考が拡散する
- 良いアイデアが出る!
みたいなメカニズムが推測されております。ここらへんの判断は難しいんだけど、シンプルに「創造性の測り方」の違いかな?という気もしますね。
なので個人的には真ん中をとって、
- アイデア出しの前に楽しい曲でリラックスしておく
- 思考が拡散したところで無音にしてアイデアを練る
みたいな使い方がよろしいのではないかと愚考しております。どうぞよしなに。